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諫早湾干拓事業とは何だったのか?2023年03月08日 17時26分34秒

若い人は知らないと思いますが、諫早湾に巨大な堤防を建設し、干拓事業を行うという公共事業がありました。
工事が完成し、水門が閉じる場面は、巨大なコンクリートの壁がシャッターのように海に突き刺さり、ニュース映像で何度も流れました。

干拓事業には光の面と影の面があります。
まず、防災に関しては、昔から川の氾濫によって多くの死者が出ていたことは事実ですが、この堤防が防災になりうるのかは科学的に決着を見ていません。

干拓事業を行えば、農地には利益があります。これは当然です。
ところが水門を閉めた結果、漁業に大きな害が出ました。不漁になったのです。
理由は複数ありますが、要は生態系が乱れたためです。
このため、漁業者側は水門を開けるように国に対して裁判を起こしました。
ここから延々と法廷闘争が続きます。

ときはまさに民主党が政権を奪取したころです。
当時、自民党が推進する大型公共事業が強く批判されていました。公共工事批判で民主党は政権をとったようなものです。
「コンクリートから人へ」ですね。

ところがその後、自民党が政権を奪い返します。今度は、営農者が訴訟を起こし、「堤防を開ける」ことを止めます。
その結果、2010年に福岡高裁判決が「開門」を命じ、2017年に長崎地裁判決が「開門差し止め」を命じたわけです。

この2つの相反する判決。
つい先日、最高裁は、「開門」判決の強制執行を許さず「無力化」させる判断をしました。要するに、作った堤防をそのまま活用し、水門を閉じた状態とすることを決めたのです。

この間、20年。2500億円を費やした事業だったと言われています。
地域住民の分断をもたらし、コミュニティーを破壊しました。
いったん、始めたら止められないと言われる公共事業の典型と言っていいでしょう。
光があれば、影があります。なぜもっと影の影響について事前に科学的検証ができなかったのでしょうか。
工事ありきではなかったのかと疑問が湧きます。

司法判断も時の政権の意向に左右されたようにも見えます。
そうであってはいけないはずです。
諫早湾干拓事業から、政治も司法も多くのことを学ぶべきでしょう。