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狂伝 佐藤泰志-無垢と修羅(中澤 雄大)2022年05月16日 23時22分00秒

狂伝 佐藤泰志-無垢と修羅(中澤 雄大)
大変重い1冊でした。
佐藤泰志さんという作家をぼくは知りませんでしたが、芥川賞や三島賞に何度もノミネートされながら無冠のまま文学に取り憑かれ、やがて書けなくなり死を選ぶ人生を歩みます。

筆者の中澤さんは、おそらくこの作家に身も心も預けたのでしょう。そして書いたのがこの作品です。膨大な資料と取材に基づき、佐藤泰志さんの人生を辿っていきます。
ここまで書き込んだ評伝というのは、あまり例がないのではないでしょうか。

本を書くには、その対象物(人)に対する思い入れがないと書ききれないと、ぼくはある編集者から教えてもらったことがあります。そう言う意味では、本当に強い思い入れを中澤さんは持っていたのでしょう。
600ページを超える大著で、簡単には読みきれませんが、読後に胸の中にどっしりと、文学に対する無垢と修羅の凄みが残ります。

みなさんも読んでみてはいかがでしょうか。おススメします。

さよなら、野口健 (小林 元喜)2022年05月07日 21時21分16秒

さよなら、野口健
これは強烈に面白かったです。
筆者はアルピニストの野口健の元マネージャー。
野口さんの実像を赤裸々に描きます。
文章もたいへんうまいし、取材も十分にできていて、読みだすと止まらないという感じです。

では、この本は野口健の評伝かというと、そうではない。
野口さんと抜き差しならない人間関係になってしまい、二人して苦悶の渦に巻き込まれる自分語りでもあるのです。

この本は、開高健賞の候補作だったそうです。書籍化にあたってそれなりに筆を入れたと思いますが、どういう構成に仕上げるのかはそうとう迷ったのではないでしょうか。
そういう苦闘の過程が本の流れににじみ出ています。
ただ、それが悪いという意味ではありません。
でも、出版社はこの本の帯の宣伝文句をどうするかはけっこう迷ったのではと思います。

最終的に大賞は受賞できなかったようですが、ぼくには十分大賞に値する一級品の作品だと感じます。
とてもいい作品ですので、みなさんにおススメします。

砂まみれの名将 野村克也の1140日(加藤弘士)2022年05月04日 22時30分42秒

砂まみれの名将 野村克也の1140日
現在、ベストセラーです。
でも、めっちゃ面白い本・・・というわけではありません。
いえ、これはけなしているんじゃなくて、褒めているんです。
多くの人は忘れてしまったと思いますが、野村さんは阪神タイガースの監督を辞めて、楽天の監督に就任するまで3年間の空白があります。
その時期に社会人野球シダックスの監督を務めていたんです。
本書はその3年間を追った作品です。

筆者は番記者だったのでこの本が書けたとも言えますが、ノンフィクションとして実直にこの本を書いています。
ものすごいドラマがあるわけではありませんが、アマチュア野球の監督を務めるということに、野村さんの人間性とか野球人のあり様が現れているのかなと感じます。
だって長嶋茂雄さんは絶対に社会人野球の監督にならないですよね?

「砂まみれ」とは、練習場の砂塵でユニフォームが砂まみれになるからです。
これはなかなかいいタイトルですね。
いい本でした。おススメします。

妻はサバイバー(永田 豊隆)2022年05月03日 19時58分42秒

妻はサバイバー
これは強烈な本でした。
奥さんは摂食障害。食べ吐きを繰り返し、大量に食べ物を買うので、貯金がゼロになります。
新聞記者であるご主人は激務の中、懸命に奥さんを支えます。
しかし経済的に行き詰まり、サラ金に手を出すことも考えます。

摂食障害はアルコール依存症に移行します。
本人には飲んでいるという自覚がありませんので、依存症から脱することができません。
大量に飲酒し、リストカットをし、睡眠薬を大量服用します。ベランダから飛び降りようとしたことも何度もあります。

精神科病院に医療保護入院になったことも数えきれないほどで、保護室に入れられたり、身体拘束も行われます。
本人の同意のない入院も拘束もしかたないと思わざるを得ませんでした。

この生活が20年。アルコールは奥さんの体を壊し、認知症にまで追い込みます。認知症になったことで、ようやく精神疾患の暴風は止みます。
なぜ奥さんはここまで荒れてしまったのでしょうか? それは幼年期のトラウマに遡ります。心の傷がジクジクと膿を出して、それを治すために自分で治療した手段が食べ吐きとアルコールだったのです。

ご主人はここまでの道のりを奥さんに伴走してきました。途中で、離婚も考えるし、このまま死んでくれたらと考えることもありました。でも一緒にいた。
それを共依存という言葉でまとめる書評も読みましたが、それはちょっと違うと思います。

夫婦とはこういうものだと思います。相手が重い病気になったとき、最後まで面倒を見ることができるのは親でも子でもなくて、夫婦だとぼくは思うのです。
そういう夫婦の姿をこの本で読むことができて、本当に良かったと思います。

大変優れた1冊ですので、ぜひお読みになることをおススメします。

生涯弁護人 事件ファイル1 村木厚子 小澤一郎 鈴木宗男 三浦和義(弘中 惇一郎)2022年05月01日 14時32分18秒

生涯弁護人 事件ファイル1 村木厚子 小澤一郎 鈴木宗男 三浦和義
これは面白かったですね。思わぬ掘り出し物という感じです。
弘中さんが実際に書いたのかは知りませんが、大変読み応えがありました。
厚労省の村木厚子さんは、誰がどう見ても無実の罪をなすりつけられたと思いますが、三浦和義さんの事件は意外な話の連続でした。
日本の検察は大変レベルが高いとも聞きますが、ときどき政権と距離が近く国策捜査をするという噂も聞いたことがあります。
ここでいう政権とは、ときの権力者ではなく自民党という意味です。
そういう意味では、小沢一郎さんなんかは完全に国策捜査の被害にあったといえるかもしれないし、民主党はこれによって政権の座を失ったのかもしれません。

ないものねだりかもしれませんが、弘中さんは正義の側にたって弁護活動をしているようですが、世の中には悪人の弁護をしている人もいます。
弁護士の仕事は多岐に渡ると思います。悪人の弁護をする論理みたいなものも聞いてみたかったなと思いました。

いい本です。おススメします。

日本がウクライナになる日(河東 哲夫)2022年04月22日 23時35分54秒

日本がウクライナになる日
評論みたいな本と思って読み始めましたが、何かエッセイを読んでいるような感じでした。
緊急出版とのことで一気に仕上げたそうです。
筆者の「僕」とは何者で、ソ連とどう関わってきたのか、最初に説明があるともっとよかったと思います。

タイムリーな企画なので、この本は相当売れると思います。そのことはとても素晴らしいのですが、(何年後になるか不明ですが)戦争が終結した後で、同じ著者による徹底的な分析とか論評を読んでみたい気もします。

戦争はどれも悲惨ですが、21世紀におきたこのロシアの侵略は、他の戦争とどう違うのか、あるいは同種のものなのか、精緻な検証が必要だと考えます。

ルポ・収容所列島: ニッポンの精神医療を問う(風間 直樹, 井艸 恵美, 辻 麻梨子)2022年04月20日 23時11分42秒

ルポ・収容所列島: ニッポンの精神医療を問う
いきなり医療保護入院という強制入院の事例が出てきて、今の時代にこんなことが本当にあるのかと驚きました。
同時にルポとしてちゃんと裏取りができているのか疑問が湧きましたが、読み進めていくうちに、民間精神科病院の(すべてではない)閉鎖的体質が昔から変わっていないため、裏取りしてもコメントが取れないことも分かってきました。

大熊一夫さんの『ルポ 精神病棟』を読んだのは、今から何十年前でしょうか? あの時代と現代とで「患者の人権」という観点から精神科医療を論じるなら、どれだけの進歩があったのでしょうか?
大熊さんは、日本の精神科医療を「この国に生まれたる不幸」と言っていましたが、今でも「強制入院」「身体拘束」「薬漬け」「院内暴力」「情報非公開」のままなら、とても悲しいことだと思います。
☆「この国に・・・」というセリフは元々呉秀三・樫田五郎先生の言葉。

また最終章では、現代日本が直面する大きな問題・認知症を誰がケア・サポートするかの話になっています。
これは大変重い課題で軽々しく結論を述べることはできません。
しかしながら、認知症の人でも、人権がないがしろにされることがあってはいけません。
今後社会全体の高齢化がますます進みますから、これは今から公共体も各個人も十分に備えておく必要があります。
つまり認知症を人ごとと思わず、自分に当てはめてどう対応していくか考えておくべきでしょう。

タイトルの「収容所列島」はちょっとセンセーショナルで強烈ですが、読み終えてみると、まさにその通りだなと思わされる力作でした。
いい本です。おススメします。

現代思想入門(千葉 雅也)2022年04月16日 22時20分50秒

現代思想入門 (講談社現代新書)
現在、大ベストセラー中のこの本を、無謀にも読んでみました。
フランスで発展したポスト構造主義の思想を、「秩序と逸脱」をキーワードに読み解いていきます。
筆者のざっくばらんな語り口が読者に優しく、こんなぼくでもなんとなく分かった気になります。
しかし、ぼくは所詮、外科医という技術屋さんなので、この本を正しく理解したか自分でも判断がつきません。

ぼくは、哲学や思想の本を好きでときどき読むのですが、たいていは途中で挫折します。でも、この本は、ところどころでつかえましたが、読み切れました。
なぜでしょう。それは、この本には読ませる力があり、それは単に書き方とか語り方とかによるものではありません。
筆者がポスト構想主義をどこまで自分の中で咀嚼・消化したかで伝える力が決まり、思想を自分化したパワーが強力だったからでしょう。

そういう意味では、千葉さんはまだ40歳代の若さなのにとても立派だと思います。
後書きを読むと、一種の諦めで書いたとありますが、それはなかなかできることではありません。
40歳代のぼくなんて、諦めるどころか、人生四苦八苦で悶絶していました。諦めたのはそのはるか後です。
その若さで、思想をまとめて決着させたのだから、頭が下がります。

冒頭で触れたように本書は現在、大ヒット中。こういうクオリティーの高い本が売れると嬉しくなります。
日本人の読書も捨てたもんじゃないな・・・なんてね。
いい本ですので、おススメします。

命のクルーズ(高梨 ゆき子)2022年04月13日 15時08分06秒

命のクルーズ
クルーズ船の中でものすごいことが起きている。
あのときの日本人はみんなそう思っていたでしょう。ぼくもそう思いました。
だけど、実際の姿はどうだったのか。
『大学病院の奈落』で好評を博した高梨さんが、多数の関係者に取材を重ね、ダイヤモンド・プリンセス号で何が起きていたのかを丁寧に描いていきます。

この本を読んで驚くことは多数ありますが、1番の驚きは、この大惨事に対応できる医師団がシステムとして存在していなかったことです。
DMAT と言えば耳にしたことがある人も多いかもしれませんが、これは災害医療の専門家集団で、なんとボランティア活動です。要するに国には備えがなかったのです。
100年に1度のパンデミックだからしかたなかった?
いえ、自民党の政権公約には新興感染症のパンデミックに対応すると書かれていたはずです。
ところがそれは嘘。なんの準備もなかった。つまり票にならないことは、政治家はやらないということです。

DMAT の医師たちが船内に乗り込み最初にやったことは、乗員乗客3000人以上に対して、薬を配布することです。
これは、あり得ないくらいのハードなミッションだったと思います。
高齢者になると多数の薬を飲みますが、自分がなんという名前の薬を飲んでいるか、暗記している人ってかなり少ないんですよね。小児医療だって同じで、保護者は子どもが飲んでいる薬の名前を憶えていません。

コロナ第1波のときは、患者を収容できる病院が全然ない状態でした。そこでクルーズ船に巨大クラスターが発生し、動かせる人から順番に患者を搬送するのは困難を極めます。
特に外国人の場合、言葉の通じない異国で夫婦が引き離されるときは、パニックになります。

コロナによる死亡者が13名出たものの、こうしたタフな仕事をやり遂げた関係者は立派だったと思います。
ぼくはいつも言っていますが、医師は仕事が医師なのではなく、医師という人間なんですよね。だからできたのでしょう。

このクルーズ船の一連の報道の中で、岩田先生による「告発動画」がありました。清潔ゾーンと不潔ゾーンが全然別れていない、というアレですね。大変話題になりました。先生が言っていたこと自体は正しいと思いますが、では、船内で感染がどんどん広がったという事実はあったのでしょうか。

実はそうではないようです。検疫が始まる前に感染が起こり、その人たちの検査が進み、陽性が判明していく過程を国民が見ていた・・・どうもそれが真実のようです。
しかしメディアはそういう報道ではなかったようです。
筆者の高梨さんは新聞記者として、DMAT をはじめとする関係者の汚名をすすぎたかったのかもしれません。
読み応えのある1冊でした。
おススメします。

「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ(横田 増生)2022年04月11日 19時40分44秒

「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ
ユニクロやAmazonへの潜入記を書いた横田さんの最新作です。
今度は、アメリカ。トランプ信者への取材です。
この本を読み始めてすぐに、ぼくは金成隆一さんのトランプ三部作を思い起こしてしまいました。
あの大傑作を超えられるだろうか、ちょっと不安に思ったのです。
金成さんは、なぜトランプが勝ったのか、膨大な取材で実にクリアに説明していました。
一方、横田さんは、トランプが闘いに敗れ、選挙結果をひっくり返そうとし、連邦議会へ暴徒が突入するというアメリカの民主主義の危機を描きました。
ちょっと本の出足でスピード感に欠ける部分があったのですが、いつの間にかぐいぐい引き込まれていました。
それはなぜでしょうか?
やはり、それは潜入という取材方が面白かったからです。

ジャーナリストとして取材を行った部分もあるし、トランプ陣営の選挙ボランティアとして個別訪問をする場面もあり、やはりそこが面白い。
潜入取材のマスターですね。
明らかに通訳も使っていないし、アメリカという広い大陸を縦横無尽に駆け巡り、長期にわたって取材とボランティアを継続するのはすごいエネルギーです。
読み終えてみれば、本作はこれまで以上の傑作なのではないかと思いました。

後書きを読むと、小学館や新潮社などの支援もあったように書かれていますが、これは金銭的な援助もあったのでしょうか。
そこはちょっと知りたい。
なぜって、今のノンフィクションは出版社がライターを経済的に支えなくなっているからです。

サブタイトルは、「私の目の前で民主主義が死んだ」となっていますが、これは危機一髪で回避されたのではないでしょうか?
いま世界ではロシアの独裁政治が大問題になっていますが、アメリカだって危なかったわけです。
政治というのは、イコール権力ですから、その使い方を誤ると本当に怖い。
地球上のわずか数人の政治家が、世界を破壊しかねないのですから、民主主義というシステムがいかに重要かということが分かります。

本書を読んで、今ひとつスカッとしない理由は、2024年にトランプが復権する可能性があるからです。
アメリカって本当に不思議な国で、自由と民主主義の総本山でありながら、トランプの反民主主義のフェイクにはまり、陰謀論を信じ込む人がなぜこれだけ多いのだろうかと唖然とします。

いずれにしても本書は大変な力作でした。2022年の何かのノンフィクション賞の候補にあがるんじゃないかな。
おススメです。