簡単アクセスカウンター
アクセスカウンター
パジャマネットパソコンサプライキッズ洋服成犬用フードチワワの服マタニティグッズおっきくなぁれ販売PCショップベビー服販売PCアプリ

雲上の巨人 ジャイアント馬場(門馬忠雄)2021年11月25日 23時21分47秒

雲上の巨人 ジャイアント馬場
ジャイアント馬場さんのことが大好きだった、プロレスの番記者だった門馬さんによる回顧録です。
ま、ノンフィクション文学の域にまで到達していたかは置くとして、馬場さんへの思い入れがたっぷりと詰まっていて、いい作品になったのではないでしょうか?
筆者は脳梗塞に倒れ、リハビリを経て、左手で鉛筆を握ってこの本を書いたと言います。5年かかったそうです。
そういった本を文春から出せるのは、とても幸せなことではないかな。
ただ、プロレスファンでないと、ちょっとしんどい本かもしれません。
馬場さんのファンにオススメします。

筑紫哲也『NEWS23』とその時代(金平 茂紀)2021年11月17日 16時56分31秒

筑紫哲也『NEWS23』とその時代
NEWS23 を軸にした筑紫哲也さんの回想録です。
評伝ではないので、はっきりした物語の軸があるわけではなく、メモやエピソードを集めて整理したような構成になっています。
やや内省的な作品と言えるでしょう。
はっきり言って、業界内部の話も多く、一般的にはまったく知られていない人も多数出てくるので、少しとっつきにくい面もありました。
また、途中まで述べて「これ以上は書かない」とやめてしまう文章が多々あり、消化不良が残りました。
それでも興味深い記述は多数あって、引き込まれるように読みました。

実はぼくはあまりNEWS23を見たことがありません。
22時から久米宏さんのニュースステーションを見ていました。久米さんはこの仕事を引き受けるときに、死ぬ(殺される)かもしれないと思ったそうですが、久米さんの政権批判は実に鋭いものがありました。
自民党の梶山静六さんがスタジオに来た(生放送)とき、久米さんが「スポンサーのトヨタに圧力をかけたって本当ですか?」と暴露話を持ち出し、梶山さんがフリーズしたのをよく覚えています。
そういう面からすると、筑紫さんはそこまで政権に厳しくなかったし、あまり毒舌というのもなかった。
リベラルの心情はしっかりと思っていたのは間違いありませんが、その一方で多様性を大事にする人だったので、自分と異なる意見も大切にしていたようです。
いつか筑紫さんの書いた本(「旅の途中」だったかな)を読んだ時、歴代の自民党の総理候補と親しく付き合っていたという記述を読んで、ああ、政治記者ってこういう感じなんだなと思ったものです。
(ただし、森喜朗だけは総理になるとは思わず、交際がなかったらしい)
22時から久米さんの毒舌を聞いてしまうと、NEWS23 ってちょっと「ヌルい」かな・・・と思ってしまうんですよね。それであまり見なかったのだと思います。

筑紫哲也さんには朝日新聞の同期として本多勝一さんがいます。
以前、筑紫さんは、この世で絶対に論争したくない人として2人の名前をあげました。もちろん負けるからです。
それが立花隆さんと本多勝一さん。
立花さんはこの世を去ってしまいました。ぼくは先日、週刊読書人に書評を書きました。
筑紫さんも肺がんでこの世を去りました。
本多さんも最近は本を刊行していません。大好きな3人ですが、時代は移ろい、時は流れるとしみじみ感じます。
筑紫さんのファンには必読の1冊だと思います。オススメです。

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。(和田靜香, 小川淳也)2021年11月12日 22時00分16秒

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。
フリーライターの和田さんが、『君はなぜ総理大臣になれないのか』の小川さんに教えを乞う本です。
小川さんの政策は、ここではすべて説明することはできませんが、大きく3つにまとめると次の柱からなっています。
1 社会保障制度を立て直す
2 日本を世界に向かって開かれた国にする
3 環境・エネルギー問題の解決
その前段階として重要なことは、日本はこれから人口が減少し、高齢化がさらに進むという認識です。
日本が、世界が持続可能であるためには、これ以上の成長はむしろ悪であり、はっきり言えば、「脱成長」を見据えて、戦略的に縮むことを考える必要があります。
小川さんは実は脱原発を言っていないんですよね。脱化石燃料なんです。環境への負荷を考えてです。これはぼくも賛成なんですよね。

しかし、小川さんは立憲民主党の代表になれるでしょうか?
こうしたビジョンが賛同を得られるのか、ぼくには分かりません。
もし総理大臣になってしまったら、この通りに国の形を変えることは可能でしょうか?
小川さんは政治を変えると同時に、政治と国民の関係も変える必要があると言っています。
そうですよね。総選挙の投票率は50%ちょっとの国なんて、(いわゆる)先進国の中ではほとんどビリの方ですよね。
戦略的に縮んで、国民の支持を得られるか不明ですが、ぼくも同じような考え方を持っています。
これからの日本の方向性に関心のある方は、ぜひ読んでみてください。

グレタさんは、今、自分の家が燃えていると言っています。本当にそう思います。
そういうときに、憲法改正に血道を上げる維新の会と国民民主党は、ピントが外れているとしか思えません。たぶん、世の注目を浴びて党勢を拡大したいのでしょう。
日本をどうするのか、どうしたいのか、どうやったら100年、200年と持続できるのか、そういうことを政治家には考えて欲しいです。

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか(鈴木 忠平)2021年11月10日 20時56分43秒

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか
現在ベストセラーだから・・・という理由よりも、ぼくは昔から落合ファンなので読んでみました。
落合さんがドラゴンズの監督を務めた8年間の記録です。
最初、目次を見たときにイヤな予感がしました。それは、各章のタイトルが選手の名前だったからです。
まさか選手にインタビューしたものを集めた本ではないのか? そんなことを考えてしまいました。
ところがそういう単純な本ではありませんでした。

筆者は1977年生まれですから現在、44歳。外科医で言えば、最も脂が乗った腕前の時期と言えるでしょう。しかし落合番になったときは、末席の記者。駆け出しだったわけです。
たたでさえ、物おじして落合さんの談話を取ってくることができないのに、落合さんは寡黙な人です。そしてちょっと謎をかけるような短い言葉を発します。
だから、スタートは医者で言えば、研修医のようなものです。
そして落合邸にくり返し足を運び、次第にバンキシャとして落合さんに(少しずつですが)食い込んでいきます。
そうした筆者の姿がとてもよかったです。

落合さんを描くにどうしたらいいか、それは選手から見た落合監督との関わり合いを描いていくことで、人間・落合の実像を炙り出すという方法を取っています。
落合さんは選手のときもプロでしたが、監督になってからもプロでした。つまり自分は「契約」によって球団と結びついているのであり、自分の仕事は「勝つ」こと。
それに徹します。そしてそれを選手に要求します。
「お前を好きだから使っているんじゃない。使える選手だから使っている」という台詞が落合監督の全てを表しています。
だから、選手たちにも「使ってもらえる選手になれ」とプロであることを求めます。

勝ち続けた落合監督は、事実上、解任されます。
なぜでしょうか? それは勝ちすぎたからでしょう。勝って年棒が上がりすぎたために、コストカットの対象になったのでしょう。
中日新聞社内の派閥闘争のあおりもあったかもしれません。そこは詳しくは書かれていませんでした。
サブタイトルは「落合博満は中日をどう変えたのか」ですが、変わってないんじゃないですか?
変わったのは選手で、「中日」は変わらなかったと思います。

44歳の筆者には、若さによる筆のシャープさと、成熟期にある文章の深さがありました。やや比喩的表現が多いかなとも思いましたが、470ページを一気に読ませる筆力は見事です。
落合さんへのロングインタビューなしに、落合さんの人間を深く描いたのは見事な取材と構成力だったと思います。
おススメの1冊です。
なお、この本は、カバーデザインも秀逸だと思います。

本当に君は総理大臣になれないのか(小川 淳也, 中原 一歩)2021年11月03日 17時53分43秒

本当に君は総理大臣になれないのか
次期、立憲民主党の代表候補に名前が上がっている小川淳也さんへのインタビューと解説からできた本です。
昨夜、以前に話題になったドキュメント映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を視聴しました。大変面白く見ましたが、小川さんの政策というのは映画ではほとんど触れられていませんでした。そこで、この本を読んだ訳です。

小川さんは、日本はこの先衰退していくと考えています。人口も減少するし、高齢化もさらに進みます。したがって国として成り立たなくなっていきます。
そこで日本を大改革して持続可能な社会にしようと綿密に政策を練っています。その緻密さとかスケールの大きさとかには正直驚きます。
ほかの政治家が政策に関してここまで深く計画を立てているのかぼくは知りませんが、ここまで考えを詰めているのは立派だと思いました。
ただ、ちょっと冷たい言い方になるかもしれませんが、小川さんの政策はキャッチーではなく、小泉純一郎さんのワンフレーズ・ポリティックスのように、分かりやすさがありません。真意を伝えるためには、短い演説では無理だなと思いました。

しかし、誠実な人だし、真剣な人です。清貧に甘んじて日本の未来のことだけを考えています。
果たして立憲民主党の代表になれるでしょうか?
問題は彼が党内で一匹狼に近い存在だということです。
20名の推薦人を集めて、ぜひ代表選を戦って欲しい。そして総理大臣になる姿を見てみたいものです。

見捨てられる〈いのち〉を考える (安藤泰至, 島薗進, 川口有美子, 大谷いづみ, 児玉真美)2021年11月02日 22時59分58秒

見捨てられる〈いのち〉を考える
まず初めにこれはいい本なので、みなさんぜひ読んでください。

以下個人的なことを書きます。
この本は、京都ALS嘱託殺人事件と、コロナ禍トリアージを主題として、見捨てられる命について、その大切さを論じています。
ぼくは、これとまったく同じコンセプトで本を書きたいと思い、朝日新書の編集長に企画を検討してもらいました。
しかし結果としてはボツ。
その最大の理由は、ぼくが医師としてALSの治療に関わったり、高齢者の「終末期」ケアをした経験がないからでした。
つまり当事者ではないということですね。
ま、当事者でなくてもいい本は書けるとぼくは思っていますが、最近の書籍は「論」じるものよりも、「現場」からの発信が好まれるそうです。
特にそういうことを中央公論の編集者が言っていました。
そういう理由でぼくの企画は消滅してしまいましたが、ぼくが書くよりもっといい本が世に出たので、これでよかったのかもしれません。

ただ、こうした倫理的なことを論じる際に、医師という職業の人間はあまり適していない可能性もある気がします。
詳しくは書きませんが、ぼくは安楽死というシステムに反対していますが、患者(家族)に心を寄せれば寄せるほど、安楽死に近いような処置を行うことがあることもまた事実です。
一般的に産科医が出生前診断に肯定的なのは、医師として患者(妊婦)の気持ちに近づこうと思うからだと、ぼくは見ています。

これも詳しく書きませんが、この本で脳死の問題についても触れられていますが、ぼくは脳死は人の死だと思っています。それはぼくが医師だから、そう考えるのかもしれません。
ちなみにぼくは、100人以上の子どもの死を看取りましたが、脳死の患者は1人も見た経験がありません。
それはなぜでしょうか? 脳死問題に詳しい方なら答えがわかると思います。

コロナ第5波が去りつつある今、トリアージの話は世間から忘れられてしまうかもしれません。
鮮度のあるうちに、みんさんもぜひお読みになって、命について考えてみてください。

障害をしゃべろう! 上: 『コトノネ』が考えた、障害と福祉のこと (上巻) (里見喜久夫)2021年10月22日 23時05分25秒

障害をしゃべろう! 上: 『コトノネ』が考えた、障害と福祉のこと (上巻)
『コトノネ』というのは、障害者の生活や労働にフォーカスを当てた雑誌です。
編集長の里見さんは、東日本大震災を契機に生き方を変えた方です。それまで障害者問題に関心があったわけではありません。3・11を契機に生き方・考え方を変化させる上で、障害者の世界を知ってみようと思ったようです。
この『コトノネ』の中に、「ぶっちゃけインタビュー」という編集長のインタビューのコーナーがあります。これまで積みあげてきた編集長と、障害や福祉に関わる人たちとのインターアクションをまとめたものが本書です。

この本を読むと2つの特徴に気づきます。
まず障害者問題に関しては、相当ハードにこの世界に切り込んでいます。
「青い芝の会」の横塚さんや横田さんの話がくり返し出て来ます。「青い芝の会」は日本の障害者運動の先駆けになった組織であり、これまでの運動の中で最も過激な団体だったと言えます。
日本の障害者運動に与えた影響の大きさについては、語りきれません。
ぼくは若い頃に朝日新聞の本多勝一の文章を読んで、「青い芝の会」の存在とその主張を知り、価値観の転換を迫られたことをよく覚えています。

そしてもう一つの特徴は、里見編集長は障害福祉に拘泥することなく、そこからウイングを伸ばして周辺領域の多様な人たちにインタビューしていることです。
そのことによって、この本は内容に厚みが出て、表現する世界が広がっています。
要するにハードコアな話も読めるし、多彩な世界に入っていくこともできるわけです。

インタビューというのは、ぼくも講談社の仕事で長期にやったことがありますが、インタビューの相手の言いたいことを引き出すだけでは不十分で、聞き手と聞かれる側の相互反応が必要といえます。
最初にインターアクションと書いたのはそういう意味です。
そういう意味で、里見編集長のインタビューは秀逸で、これまで障害者問題に接してこなかった人とは思えない出色の仕上がりとなっています。いや、そうだからこそ、いいインタビューができたのかもしれませんね。

読み応えのある、青土社さんらしい1冊です。オススメしますので、ぜひ、読んでみてください。
ちなみにぼくも登場しますが、そこはおまけ程度に考えてくださいね。下巻もあります。

安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ(尾中 香尚里)2021年10月22日 16時31分32秒

安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ
東日本大震災/福島第一原発事故のときの菅直人さん。
コロナパンデミックのときの安倍晋三さん。
非常事態における両者のリーダーシップについて書かれた作品です。
狙いはとても面白いのですが、さすがにコロナ対応については、つい先日のことなので、わざわざ文章にしなくても十分知っていることばかりです。
そしてそれ以上に興味をそがれるのは、あまりにも安倍さんに厳しく、菅さんに甘い記述になっていることです。
筆者は、野党の取材をやっていた記者のようで、どうしてもそうなってしまうのかもしれませんが、ちょっと行きすぎかなと思います。
ぼくは個人的には、菅さんも枝野さんも原発事故でよく対応したと思っています。しかし至らない点もあったはず。
そういう記述があまりにも弱かったかなと思いました。
ぼくが安倍さんを庇うなんて、どういうことでしょうか??(笑)

キツネ目 グリコ森永事件全真相(岩瀬 達哉)2021年10月18日 23時05分35秒

キツネ目 グリコ森永事件全真相
面白かったのですが、なぜ、今になってこの本が書かれる必要があるのかという執筆の動機が見えてきませんでした。
週刊現代に連載したのは、今から10年も前だそうです。
それを今になって単行本にするとなると、当時の取材の鮮度はどうなってしまうのでしょうか?
犯人グループに襲われたアベックに対して、事件から25年経ってから取材に成功していますが、その後、アベックは別れたとか、今は結婚して子どもも成人したとか、それはいくらなんでも本筋とは関係ないんじゃないですか?
ノンフィクション作家さんが、ネタに詰まってグリコ森永事件でも調べてやろう・・・とか思って取材したのかなと勝手に想像してしまいます。
やはりノンフィクションは時代と寄り添っていないと、と思います。
そのせいか、この本には「前書き・はじめに」がありません。
普通は、「前書き・はじめに」で、なぜこの本を書くのかという動機を述べるものです。
科学論文で言えば、Introduction ですね。
そこがちょっと弱かったかなと思います。

魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣(石井 妙子)2021年10月08日 20時36分24秒

魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣
『女帝 小池百合子』で大宅賞をとった石井妙子さんの最新作です。こんな短期間に次作が登場し、それがユージン・スミスとアイリーンの評伝とは意外でした。
で、読んでみて・・・しびれました。これは一級品のノンフィクションです。
一番いいところは、石井さんの文章です。実にうまい。
そして詩情に溢れている。
倒置法や体言止めが多用されているのですが、それがことごとくうまくいっています。
(普通は、こういう表現をすると文章に品格がなくなる)

本書はアイリーンの家系から話が始まります。評伝ではよくあるパターンですが、たいていの場合、この部分は退屈です。
しかし本書は違う。読ませる力があるのです。
そしてユージンの生い立ち。彼は、酒、ドラッグ、女に絡め取られたダメな人間に見えます。しかし後の章で、彼が水俣に行くと、水俣の民衆に受け入れられることが描かれます。
ユージンは、仕事で一番重要なのは Integrity (清廉潔白)と言っていますが、彼は仕事に対して、そして被写体に対してとても誠実な人だったのだと思います。

本の中盤は、水俣病と民衆を描いたページが延々と続きます。
この悲惨さ。この非情さ。そして、この不条理。
水俣病患者が会社チッソに対して株主総会や団交で徹底的に闘う場面は鳥肌が立つような迫力です。
石井さんの筆も冴えに冴えます。

しかし、では、ユージンとアイリーンの水俣を描くページは残っているのかと不安が擡げますが、それは杞憂でした。
ユージンは社会運動家ではありません(アイリーンは、運動家を志していた)。真摯にいい写真を撮ろうとする。だから、中盤と終盤では本の旋律ががらりと変わり、ある意味で、異なる本を読んでいるような感覚になります。
しかしながら、最終的にこの本が一つの作品として完成しているのは、アイリーンへの取材が深いからです。
長期間、話を聞いたと後書きに書かれていましたが、「長い」のではなく、「深い」のです。
長く聞くことは誰にもできます。
しかしここまで深く聞くことができるのは、石井さんならではでしょう。

封印された「入浴する智子と母」の写真の話も最後に出てきます。
両親がこの写真を封印した理由は、写真展でポスターやチラシに智子の写真が使われ、それが大量消費(雨に濡れ、人に踏まれた)されたからだという説があります。
第19回小学館ノンフィクション賞をとった山口由美さんの本にもそう書いてあったと記憶しています。
しかしこれは、石井さんの取材によれば都市伝説みたいなもので、事実はそうではないようです。
水俣病に冒された少女の裸体を、家族が正視するのがだんだん辛くなってきたというのが真実のようです。また、「被写体になったことで、どれだけ儲けたんだ」と心ないことを言われたことも辛かったそうです。

ではなぜアイリーンは映画『MINAMATA』で、その封印を解いたのか?
その理由に関して、アイリーンは明確な答えを持っていないようにも見えます。アイリーンは今後さらに思索を深めるのではないでしょうか。

2人が水俣に行ったとき、アイリーンはまだハタチそこそこでした。一方のユージンはすでに著名な大写真家でした。
そのアンバランス。
この本は、アイリーンの青春記、そして成長記としても読むことができます。
2人の水俣が終わり、ユージンが人生を閉じる場面では、思わず胸が熱くなります。

現在の政治は、自民党の岸田さんも立憲民主党の枝野さんも、高度成長期の総中流時代を、一種理想のように見ていますが、あの時代は、水俣病を初めてとして公害の時代だったことを忘れてはいけません。
現在の感覚ではとても信じ難いことだし、とても社会的に許されないことですが、海への工場排水によって水銀中毒で塗炭の苦しみを味わった人たちが何千人といたことを、私たちは忘れてはいけないと思います。
経済成長には必ず影がつきまとうことを、資本主義社会の根に巣食う害毒として認識する必要があります。

しかし、石井さんのノンフィクションは、見事としか言いようがありません。
ぜひ、読んでみてください。おススメです。