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コロナ戦記 医療現場と政治の700日(山岡 淳一郎)2021年12月05日 21時27分37秒

コロナ戦記 医療現場と政治の700日
コロナの始まりから、(ほぼ)現在までの記録です。
パンデミックはまだ終わっていませんから、こういう本を書くのは難しいですね。
最近の話ですから、知っている情報も多々ありました。もちろん筆者の取材によって初めて知った話も多いのですが、意外な話というのはあまり無かったように思います。

このコロナ禍に対して、東京は小池都知事、大阪は吉村府知事、政府は安倍さんと菅さんが対応したわけですが、全員が落第点だったと言えます。
もっともひどかったのは大阪の府知事だとぼくは思っていますが、ここでは詳述しません。
いずれにしても、政治家は政(まつりごと)をする人たちなので、科学的な視点は持ち合わせていません。

常に楽観視に基づき、経済を回すことばかり考え、その結果、コロナの流行がますます大きくなり、経済はさらに疲弊します。
この政治家たちは、タイムマシーンがあれば、第一波のときにゼロコロナを達成して、その後に水際対策の強化で鎖国のようにすればよかったと思っているのではないでしょうか?
ま、覆水盆に返らずですね。

これだけの死者を出し、経済をメチャクチャにしたのにも関わらず、小池さんも知事選で圧勝し、維新の会は総選挙で躍進し、自民党もまったく負けなかった。日本人というのは本当に権力に従順ですね。
さて、この本の悪い点を書きます。
まず、字が小さい。老眼鏡をかけても読みにくい。
224ページで1800円は高い。岩波の本は総じて高いです。
そしてこれは重大なことですが、これだけ「数字」の多い本なのに、「アラビア数字」を使わないで「漢数字」を使うのはやめて欲しい。これは筆者のせいでもあり、編集者のせいでもあります。
こういう表現が本当に読みやすいと思っているのでしょうか?

出版と権力 講談社と野間家の一一〇年(魚住 昭)2021年12月01日 23時26分45秒

出版と権力 講談社と野間家の一一〇年
講談社の歴史を書いた講談社の本です。
ただ、歴史と言っても創業前から創業、そして戦時中の軍部との癒着、さらに敗戦後の再生を主に書いています。
全部で699ページ。圧倒的な迫力です。

この本の一番悪いところは、印刷のしかたです。
本を開きますね? 谷ができるでしょ? その谷の奥まで文字が印刷されているので、本を斜めにしないと文字を読み取れないのですよ。
どうにかならなかったのでしょうか? 読むのに大変苦労しました。

膨大な資料を紐解いて魚住さんは社史を語っていきますが、「資料からのそのままの引用」がちょっと多すぎたかな。
資料をもとに、著者がもっと「物語って」もよかったと思うし、その方がさらに面白かったと思います。

もっと印象的だったのはラストのシーン。アメリカ人のタレントが講談社から嫌韓・嫌中本を出版して、それを著者が強く批判する場面です。でも、これって社史とあまり関係ない気もします。
それから後書きもよかった。「月刊現代」時代の仲間が集まって魚住さんに本を書かせようとする。それが本作なんですね。
そういう編集者と作家の結びつきは、ちょっと感動的でした。

これぞノンフィクションという1冊でした。オススメします。

彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠(樋田 毅)2021年12月01日 17時33分17秒

彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠
筆者は元朝日新聞の記者。だから文章は非常にしっかりしています。隙がないという感じです。
早稲田大学の川口大三郎君リンチ殺人事件を知っている人は、まずいないでしょう。
ぼくは知っていました。
立花隆の『中核VS.革マル』に出てくるからです。

筆者は川口さんの1年後輩。
革マルの暴力に対して「寛容」「非暴力」で闘った学生運動を指揮しました。
その闘争の過程の回顧録なのですが、あまりにも細かすぎて、また内容が絶望的すぎて途中で読むのが辛くなりました。
ぼくだったらさっさと退学したなとか思いました。
しかし終盤になって、筆者が闘いから「降りる」ところで、なんとも言えない共感・親しみ・同情みたいなものが湧きました。

そして彼は闘いから離れて社会に目を向け、新聞記者になります。そこらへんの挫折から再生の道のりが良かったです。
最後には、当時、革マルだった人間と「対談」をします。ここはやや冗長な印象もありますが、当事者の心理がとてもよく分かって有益でした。

本の結論として、「寛容」が「不寛容」を超えることについて、香港やミャンマーの民主化運動にまで話を広げます。
それが本の完成度を高めたのかどうか、ぼくには判断がつきませんでしたが、川口さんの事件から約50年を経て、筆者が事件に落とし前をつけたのはよく分かりました。

いい本です。オススメします。

ゼロエフ(古川 日出男)2021年11月28日 17時54分02秒

ゼロエフ
ちょっと難しい本でしたね。
著者は小説家。小説家が書いたノンフィクションです。

逆の場合もあって、ノンフィクション作家が小説を書くこともあります。
だけどぼくの知る限り、やっぱり本業の中から傑作は生まれるような気がします。
この本も書き方がノンフィクションではなくて、文体に独特の個性があり、読点の打ち方などはまったく賛同できませんでした。
著者のファンの方にオススメします。

開業医をやりながら作家もやってみた162021年11月28日 17時40分36秒

m3.com 連載『開業医をやりながら作家もやってみた』、連載第16回が掲載されました。

https://www.m3.com/news/iryoishin/986395

開業医になってから、月に1回大学病院に通って、がんの子どもたちのフォローアップ外来をやっていた頃の話です。この間、2冊の本を講談社から出しましたがヒットせず、書くことに行き詰まりました。その頃の思い出です。

雲上の巨人 ジャイアント馬場(門馬忠雄)2021年11月25日 23時21分47秒

雲上の巨人 ジャイアント馬場
ジャイアント馬場さんのことが大好きだった、プロレスの番記者だった門馬さんによる回顧録です。
ま、ノンフィクション文学の域にまで到達していたかは置くとして、馬場さんへの思い入れがたっぷりと詰まっていて、いい作品になったのではないでしょうか?
筆者は脳梗塞に倒れ、リハビリを経て、左手で鉛筆を握ってこの本を書いたと言います。5年かかったそうです。
そういった本を文春から出せるのは、とても幸せなことではないかな。
ただ、プロレスファンでないと、ちょっとしんどい本かもしれません。
馬場さんのファンにオススメします。

筑紫哲也『NEWS23』とその時代(金平 茂紀)2021年11月17日 16時56分31秒

筑紫哲也『NEWS23』とその時代
NEWS23 を軸にした筑紫哲也さんの回想録です。
評伝ではないので、はっきりした物語の軸があるわけではなく、メモやエピソードを集めて整理したような構成になっています。
やや内省的な作品と言えるでしょう。
はっきり言って、業界内部の話も多く、一般的にはまったく知られていない人も多数出てくるので、少しとっつきにくい面もありました。
また、途中まで述べて「これ以上は書かない」とやめてしまう文章が多々あり、消化不良が残りました。
それでも興味深い記述は多数あって、引き込まれるように読みました。

実はぼくはあまりNEWS23を見たことがありません。
22時から久米宏さんのニュースステーションを見ていました。久米さんはこの仕事を引き受けるときに、死ぬ(殺される)かもしれないと思ったそうですが、久米さんの政権批判は実に鋭いものがありました。
自民党の梶山静六さんがスタジオに来た(生放送)とき、久米さんが「スポンサーのトヨタに圧力をかけたって本当ですか?」と暴露話を持ち出し、梶山さんがフリーズしたのをよく覚えています。
そういう面からすると、筑紫さんはそこまで政権に厳しくなかったし、あまり毒舌というのもなかった。
リベラルの心情はしっかりと思っていたのは間違いありませんが、その一方で多様性を大事にする人だったので、自分と異なる意見も大切にしていたようです。
いつか筑紫さんの書いた本(「旅の途中」だったかな)を読んだ時、歴代の自民党の総理候補と親しく付き合っていたという記述を読んで、ああ、政治記者ってこういう感じなんだなと思ったものです。
(ただし、森喜朗だけは総理になるとは思わず、交際がなかったらしい)
22時から久米さんの毒舌を聞いてしまうと、NEWS23 ってちょっと「ヌルい」かな・・・と思ってしまうんですよね。それであまり見なかったのだと思います。

筑紫哲也さんには朝日新聞の同期として本多勝一さんがいます。
以前、筑紫さんは、この世で絶対に論争したくない人として2人の名前をあげました。もちろん負けるからです。
それが立花隆さんと本多勝一さん。
立花さんはこの世を去ってしまいました。ぼくは先日、週刊読書人に書評を書きました。
筑紫さんも肺がんでこの世を去りました。
本多さんも最近は本を刊行していません。大好きな3人ですが、時代は移ろい、時は流れるとしみじみ感じます。
筑紫さんのファンには必読の1冊だと思います。オススメです。

開業医をやりながら作家もやってみた152021年11月13日 14時23分06秒

m3.com 連載、『開業医をやりながら作家もやってみた』の第15回目が掲載されました。

https://www.m3.com/news/iryoishin/982094

デビュー作の『小児がん外科医』が大ヒットになった話です。よかったら読んでみてください。

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。(和田靜香, 小川淳也)2021年11月12日 22時00分16秒

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。
フリーライターの和田さんが、『君はなぜ総理大臣になれないのか』の小川さんに教えを乞う本です。
小川さんの政策は、ここではすべて説明することはできませんが、大きく3つにまとめると次の柱からなっています。
1 社会保障制度を立て直す
2 日本を世界に向かって開かれた国にする
3 環境・エネルギー問題の解決
その前段階として重要なことは、日本はこれから人口が減少し、高齢化がさらに進むという認識です。
日本が、世界が持続可能であるためには、これ以上の成長はむしろ悪であり、はっきり言えば、「脱成長」を見据えて、戦略的に縮むことを考える必要があります。
小川さんは実は脱原発を言っていないんですよね。脱化石燃料なんです。環境への負荷を考えてです。これはぼくも賛成なんですよね。

しかし、小川さんは立憲民主党の代表になれるでしょうか?
こうしたビジョンが賛同を得られるのか、ぼくには分かりません。
もし総理大臣になってしまったら、この通りに国の形を変えることは可能でしょうか?
小川さんは政治を変えると同時に、政治と国民の関係も変える必要があると言っています。
そうですよね。総選挙の投票率は50%ちょっとの国なんて、(いわゆる)先進国の中ではほとんどビリの方ですよね。
戦略的に縮んで、国民の支持を得られるか不明ですが、ぼくも同じような考え方を持っています。
これからの日本の方向性に関心のある方は、ぜひ読んでみてください。

グレタさんは、今、自分の家が燃えていると言っています。本当にそう思います。
そういうときに、憲法改正に血道を上げる維新の会と国民民主党は、ピントが外れているとしか思えません。たぶん、世の注目を浴びて党勢を拡大したいのでしょう。
日本をどうするのか、どうしたいのか、どうやったら100年、200年と持続できるのか、そういうことを政治家には考えて欲しいです。

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか(鈴木 忠平)2021年11月10日 20時56分43秒

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか
現在ベストセラーだから・・・という理由よりも、ぼくは昔から落合ファンなので読んでみました。
落合さんがドラゴンズの監督を務めた8年間の記録です。
最初、目次を見たときにイヤな予感がしました。それは、各章のタイトルが選手の名前だったからです。
まさか選手にインタビューしたものを集めた本ではないのか? そんなことを考えてしまいました。
ところがそういう単純な本ではありませんでした。

筆者は1977年生まれですから現在、44歳。外科医で言えば、最も脂が乗った腕前の時期と言えるでしょう。しかし落合番になったときは、末席の記者。駆け出しだったわけです。
たたでさえ、物おじして落合さんの談話を取ってくることができないのに、落合さんは寡黙な人です。そしてちょっと謎をかけるような短い言葉を発します。
だから、スタートは医者で言えば、研修医のようなものです。
そして落合邸にくり返し足を運び、次第にバンキシャとして落合さんに(少しずつですが)食い込んでいきます。
そうした筆者の姿がとてもよかったです。

落合さんを描くにどうしたらいいか、それは選手から見た落合監督との関わり合いを描いていくことで、人間・落合の実像を炙り出すという方法を取っています。
落合さんは選手のときもプロでしたが、監督になってからもプロでした。つまり自分は「契約」によって球団と結びついているのであり、自分の仕事は「勝つ」こと。
それに徹します。そしてそれを選手に要求します。
「お前を好きだから使っているんじゃない。使える選手だから使っている」という台詞が落合監督の全てを表しています。
だから、選手たちにも「使ってもらえる選手になれ」とプロであることを求めます。

勝ち続けた落合監督は、事実上、解任されます。
なぜでしょうか? それは勝ちすぎたからでしょう。勝って年棒が上がりすぎたために、コストカットの対象になったのでしょう。
中日新聞社内の派閥闘争のあおりもあったかもしれません。そこは詳しくは書かれていませんでした。
サブタイトルは「落合博満は中日をどう変えたのか」ですが、変わってないんじゃないですか?
変わったのは選手で、「中日」は変わらなかったと思います。

44歳の筆者には、若さによる筆のシャープさと、成熟期にある文章の深さがありました。やや比喩的表現が多いかなとも思いましたが、470ページを一気に読ませる筆力は見事です。
落合さんへのロングインタビューなしに、落合さんの人間を深く描いたのは見事な取材と構成力だったと思います。
おススメの1冊です。
なお、この本は、カバーデザインも秀逸だと思います。