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謹賀新年2024年01月01日 09時47分31秒

新春を寿ぎ謹んで新年のお慶びを申し上げます。
今年の夢。
全世界から戦争がなく、飢えがないこと。

2024年の目標。
1. 善き医療を目指し、成し遂げる。
2. 本を4冊以上書く。
3. 友人と呑みに出かける。

みなさんにとりましても素晴らしい1年であることを心から祈っています。

夜明けを待つ(佐々 涼子)2024年01月03日 20時00分46秒

夜明けを待つ
エッセイと短編ルポルタージュからなる作品集です。
筆者はノンフィクションライターだけあって、やはり後半の短編ルポルタージュが大変よかったです。

作家になる前は、日本語教師をしていましたから、外国人が日本語を学ぶということに関しても大変くわしくご存じでした。
その中で出てきた言葉が、ダブルリミテッド。
知っていますか、この言葉。
バイリンガルの逆ですね。

海外から日本にやってきた子が、母語も不十分で日本語もうまく話せないことを言うそうです。
ぼくはこの言葉を知りませんでしたが、そういう子がいることは、日々の診療の中で知っていました。
日本は今後ますます、外国人に来ていただく国になる必要がありますから、日本語教育はさらに重要性を増すでしょう。

佐々さんは「死」を描く作家と言われますが、それはすなわち、それまでの生を描く作家です。つまり人間を描くことが非常にうまいと言えます。
「駆け込み寺の玄さん」のお弟子さんを描いたルポは引き込まれるように読みました。
最終的に、そのお弟子さんに詳しい話が聞けず、言ってみれば未完に終わっているのですが、作品として完成しているところがすごいと思いました。

筆者は脳腫瘍(グリオーマ)で闘病中。毎日新聞で知ったときは非常にショックでした。
大変予後の悪い病気ですが、ぼくはこの病気が治ると信じて祈りたいと思います。

貧乏ピッツァ(ヤマザキマリ)2024年01月08日 15時57分54秒

貧乏ピッツァ(ヤマザキマリ)
イタリアを中心に広く世界の食べ物に関して綴っていくエッセイです。
料理に関して最低限の知識はあった方が、楽しく読めると思います。ぼくは食通でもないし、料理も作らないので、イメージが湧かない部分も少しだけありました。

しかしまあ、食をテーマにこれだけ豊富に語ることができるのは、すごいとしか言いようがありません。
漫画(イラスト)も描けるし、文章もうまくて、一体どれだけ才能に溢れているんだ、という感じです。

世界の食を語り尽くすことで、美味いとはどういうことだとか、食から得る幸福とは何かということが見えてきます。

ヤマザキさんのファンの方も、そうでない方も、ぜひ、読んでみてください。おススメです。

映画『学校』2024年01月16日 22時58分40秒

映画『学校』
前からずっと観たいと思っていました。
明日は休診日でちょっと時間に余裕があったので、Amazonで視聴しました。

この映画には山田洋次監督のヒューマニズムの素晴らしさが、とてもシンプルな形でよく表現されていました。
テーマは学校。
この世の中には、学びたくても学べない人がいること、そして学びたいと思えば、学ぶ場があることを描いています。

ぼく自身は経済的に恵まれた環境で育ったのではなく、親戚の人たちもみんな学歴がありませんでしたので、身近に会社勤めの人はいませんでした。
ですから、子どもの頃から、この世の中にはいろいろな職業があり、人から羨ましいと思われない仕事だって存在し、それでも人は働いて生きていかなくてはいけないということをよく分かっていました。

教育がいかに大切なのかは両親に学んだと言えます。
うちの両親は大変苦労して育ち(特に父親)、そのため中学を卒業して10代の頃から働いていました。
うちの父親がぼくに残したものは、教育です。
いえ、私立の中高一貫校へ行かせてくれたとか、進学塾に行かせてくれたとか、そういうことは一切ありませんでしたが、学ぶことの大切さは教えてもらったと思います。

教師ってなんでしょうか。生徒に教えること。それはすなわち自分が学ぶことです。
そしてこの映画のように、夜間中学で教えるということは、「働き口」としての教師ではなく、社会に役立つ、社会に貢献する仕事をしている教師だということです。

ぼくは人生後半戦に入って、何か社会に役立ちたいと最近強く感じるようになりました。
今のクリニックは完全に軌道に乗っていますので、誰かに譲っても患者家族は困らないと思います。
すると、少し違った仕事、儲けはほとんどなくていいから、人の役に立てる仕事を見つけたいという気持ちがあります。

自分に何ができるのか、少し真剣に考えたいと思っています。
大変いい映画でした。おススメします。

映画『学校 II 』2024年01月20日 22時29分05秒

映画『学校 II 』
第2作は、特別支援学校高等部が舞台です。
この映画も山田洋次監督の良さが十分に出ていました。
最高によかった俳優さんは、吉岡秀隆です。軽度知的障害を大変うまく演じていました。
「自分は、自分が馬鹿であることが分かってしまうからつらい」という台詞がこの作品の真髄と言えるかもしれません。
涙無くして観ることはできません。

内容とはちょっと別なんですが、いしだあゆみさん。本当に綺麗ですね。
ぼくは「ブルーライト・ヨコハマ」の時からずっと知っていますが、年齢を重ねてからの方が綺麗なんじゃないでしょうか。
すごくよかったです。
おススメします。

怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ(森合正範)2024年01月21日 14時42分40秒

怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ(森合正範)
ボクサー井上尚弥に敗れた選手にインタビューすることで、井上の強さを描くノンフィクションです。
インタビューした選手の数がちょっと少ないことが残念でしたが、大変クオリティーの高い内容になっていました。
ただ単に、井上の怪物ぶりを表現するだけでなく、敗れたボクサーの人生がしっかり描けていました。
一級品の作品です。

ぼくは井上尚弥の試合を生放送で観たことは一度もありません。興味がないのではなく、テレビを観る習慣がないからです。
でもさすがにその強さは知っていました。
でもこの本を読んで、井上はアマチュア時代からモンスターであってこと、そして現在は、スピード・パワー・ディフェンス・頭脳と完璧な選手と知りました。

だから敗れたボクサーたちは、井上との試合を語ろうとするんですよね。
敗けてプライドを失うのではなく、井上と闘ったことでプライドを得たのだと思います。

この本の出だしには、筆者のボクシングに対する思い入れが書かれていますが、そこもまたよかったです。
それからのこの方は文章が非常にいいですね。新聞記者だから当たり前か。

傑作に仕上がっています。ぜひ、おススメします。

ピンヒールで車椅子を押す(畠山織恵)2024年01月21日 23時07分44秒

ピンヒールで車椅子を押す(畠山織恵)
重い脳性麻痺の子と共に生きたおよそ20年の記録です。
タイトルから、母親が「ケアの人生から社会進出へ」移行するストーリーかと思い込みましたが、全然そんな内容ではありませんでした。
脳性麻痺のお子さんがいかに成長していくか、どう自立していくかの貴重な記録になっていました。
とても良質なノンフィクションでした。

終盤は、お子さんの話は出てこず、母親の人生が語られます。
ちょっと自己啓発本みたいな雰囲気になりますが、読んでいて大変読み応えがあり、母親の成長の軌跡もとてもよく分かりました。

ぼくはいつも講演で、「自分が生きる世界を変えようと思ったら、自分が変わらなくてはいけない」と言っています。
筆者も「自分が行動することで、変わる」と言っていましたので、考え方として共通な部分が多いなと感じました。

重い障害の子をどう育てるか。ぜひ、読んでみてください。

遺伝子が語る免疫学夜話 自己を攻撃する体はなぜ生まれたか?(橋本求)2024年01月23日 22時29分23秒

遺伝子が語る免疫学夜話 自己を攻撃する体はなぜ生まれたか?(橋本求)
めちゃめちゃ面白くて一気読みでした(正確には二晩)。
筆者は自己免疫疾患の専門家。つまり、関節リウマチとか、ちょっと専門的な病名を出すと SLE とかの、自分の免疫が自分を攻撃してしまう病気です。
なぜこういうことが起きるのでしょうか?
それを普通に解説したところで、本として成立しません。

そこで、
1 自然選択としての免疫現象
2 衛生仮説という考え方
3 進化の観点からの免疫
を述べていきます。

こう書くとちょっと抽象的で分かりにくいかもしれませんね。かと言って本書を一言ではまとめられません。
あえて表現すれば、人類の歴史は感染症との戦いでした。
ウイルス・細菌・寄生虫と人間は戦ってきました。
その結果、免疫系を発達させてきて、これを上手のコントロールしてきました。
ところがそうした遺伝子が、戦う相手がいなくなったときに、自己や周囲環境に向かい、自己免疫疾患やアレルギーになっていったのです。

ぼくもさすがに医者なので、そうした全体的な流れは知っていました。
しかし、ここまで最新の知見を提示して、最先端の医学・科学を駆使して説明されると、あっと驚き感嘆するしかありません。
ああ、なるほど、そうなっているのか!

いやあ、こういう本ってどうやったら書けるんでしょうか?
先端サイエンスを知っていることはもちろんですが、そうした知識を結びつけて、ストーリーとして完成させるには、並外れた洞察力が必要なんじゃないでしょうか。
悔しいけれど、ぼくには絶対に書けないなと思いました。
最高におもしろい知的興奮の一冊でした。

最後におまけを。
筆者は制御性T細胞を発見した坂口志文先生のお弟子さんなんですね。
そして、多田富雄先生のサプレッサーT細胞。千葉大医学部が誇る「世界の多田先生」ですが、この細胞は「眉唾ものとして歴史の彼方に葬りさられていきました」とばっさり切り捨てられていました。しかたないですよね。

大変いい本でした。
最後のメッセージもよかった。子どもは大いに「非」衛生的な環境で大いに遊びなさいというアドバイスは本当にその通りだと思います。
また、開業医が不要な抗生剤を処方するのも、強く戒められています。まったく同じ意見です。

みなさん、ぜひ読んでみてください。おススメします!

『開業医の正体』(中公ラクレ)、書影完成!2024年01月24日 13時10分20秒

『開業医の正体』(中公ラクレ)、書影完成!
2月9日発売、『開業医の正体』(中公ラクレ)。
書影が完成しました。
ネット書店で予約も可能になっています。
ぜひ、どうぞ。

ここをクリック。
  ↓
https://www.chuko.co.jp/laclef/2024/02/150809.html

成瀬は信じた道をいく(宮島未奈)2024年01月24日 18時50分23秒

成瀬は信じた道をいく(宮島未奈)
成瀬シリーズ第二弾です。
いや、今回も最高におもしろかった!
成瀬あかりという強烈なキャラを通して、それぞれの登場人物の人間性とか心の内が、大変よく描かれているんですよね。
もちろんストーリーのおもしろさも申し分ありません。
小説家って何でこういうおもしろい話を書けるのかな?
不思議で仕方ありません。
読んでみてください。おススメします。