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遺伝子が語る免疫学夜話 自己を攻撃する体はなぜ生まれたか?(橋本求)2024年01月23日 22時29分23秒

遺伝子が語る免疫学夜話 自己を攻撃する体はなぜ生まれたか?(橋本求)
めちゃめちゃ面白くて一気読みでした(正確には二晩)。
筆者は自己免疫疾患の専門家。つまり、関節リウマチとか、ちょっと専門的な病名を出すと SLE とかの、自分の免疫が自分を攻撃してしまう病気です。
なぜこういうことが起きるのでしょうか?
それを普通に解説したところで、本として成立しません。

そこで、
1 自然選択としての免疫現象
2 衛生仮説という考え方
3 進化の観点からの免疫
を述べていきます。

こう書くとちょっと抽象的で分かりにくいかもしれませんね。かと言って本書を一言ではまとめられません。
あえて表現すれば、人類の歴史は感染症との戦いでした。
ウイルス・細菌・寄生虫と人間は戦ってきました。
その結果、免疫系を発達させてきて、これを上手のコントロールしてきました。
ところがそうした遺伝子が、戦う相手がいなくなったときに、自己や周囲環境に向かい、自己免疫疾患やアレルギーになっていったのです。

ぼくもさすがに医者なので、そうした全体的な流れは知っていました。
しかし、ここまで最新の知見を提示して、最先端の医学・科学を駆使して説明されると、あっと驚き感嘆するしかありません。
ああ、なるほど、そうなっているのか!

いやあ、こういう本ってどうやったら書けるんでしょうか?
先端サイエンスを知っていることはもちろんですが、そうした知識を結びつけて、ストーリーとして完成させるには、並外れた洞察力が必要なんじゃないでしょうか。
悔しいけれど、ぼくには絶対に書けないなと思いました。
最高におもしろい知的興奮の一冊でした。

最後におまけを。
筆者は制御性T細胞を発見した坂口志文先生のお弟子さんなんですね。
そして、多田富雄先生のサプレッサーT細胞。千葉大医学部が誇る「世界の多田先生」ですが、この細胞は「眉唾ものとして歴史の彼方に葬りさられていきました」とばっさり切り捨てられていました。しかたないですよね。

大変いい本でした。
最後のメッセージもよかった。子どもは大いに「非」衛生的な環境で大いに遊びなさいというアドバイスは本当にその通りだと思います。
また、開業医が不要な抗生剤を処方するのも、強く戒められています。まったく同じ意見です。

みなさん、ぜひ読んでみてください。おススメします!

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