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『小児外科』が無くなる日2007年05月17日 20時53分58秒

小児外科とは一体何でしょうか。
このテーマについては昔から小児外科学会で盛んに論じられて来ました。
ある人は、こう言います。小児外科とは、まず、なんと言っても外科医である。そして、専門を「小児」とした外科医であり、「一般外科医」の上に立つ外科医であると。
また、ある人はこう言います。大人の医療に内科と外科があるように、小児医療にも「小児(内)科」と「小児外科」がある。小児医療は小児科医と小児外科医が柱となって支えていると。
要するに、「外科医」なのか、「小児医療医」なのか、この議論はいまだ決着を見ていません。
「子どもは大人のミニチュアではない」という決まり文句は、小児外科を説明する時によく使われる言葉です。この言葉は考えてみれば、小児科医にとっては常識でしょう。ところが、小児外科の世界では敢えてこの言葉を持ち出さなければなりません。やはり、小児外科とは「外科医」なのでしょうか。
日本小児外科学会のHPを見てみると、元・理事だった津川力先生は、「ある意味、小児は大人のミニチュアである」と述べています。成人外科の手術をたくさん、行なうことが小児外科医として上達するために大事であると書いています。津川先生は、小児外科医に小児科の研修は必要ないとも以前に述べていたように思います。小児外科医は外科医であるという意見の最右翼でしょう。
しかし、別の意見もあります。
小児外科医とは何かという議論とは少しずれるかもしれませんが、小児外科医の歩むべき将来の道を考えた場合、小児医療の開業医も一つの選択とする意見です。
大阪大学の前教授・岡田正先生は、小児外科の専門医の取得にあたり、小児科専門医の資格を何らかの形でリンクさせることを、小児科学会との間で話し合うことを提案なされていました。
この考え方の根底にあるスタンスは、小児外科医は小児医療の担い手であるとの認識です。
現実はどういう方向に向かっているのでしょうか。
外科系専門医制度が成熟して行く中で、小児外科医は一般外科医の上に立つ専門家(サブスペシャルティー)であるとのスタンスを自らとり始めました。
二階建ての二階部分に小児外科医はいる訳です。
「心臓外科医」や、「呼吸器外科医」も同様な立場です。一応、「消化器外科医」も同じ立場ですが、実はこのあたりに矛盾があって、以前は「消化器外科医」=「一般外科医」であったのです。
それが現在、「消化器外科医」は「小児外科医」と同様に専門家の扱いになりました。
その一方で、脳神経外科医はこのシステムに乗っていません。
二階建ての上とか下とかそういうところにはいないのです。別のカテゴリーとして独立しているのです。
小児外科は二階建ての上に乗ることによって、外科の中の専門分野に存在するということを自己定義したことになります。
最近、小児外科専門医の更新にあたっては、ある一定数の手術をこなさなければならないとの案が浮上しています。
この考え方は、小児外科医が外科医であることの自己同一性をますます強めた考え方です。
こういった方向に向かうのでしょうか。

昨日の朝日新聞の夕刊には驚くべき記事が載っていました。
診療科名をシンプルにするとの案が厚生労働省から提起されており、それによると現在38ある診療科名を19に削減するそうです。
「小児外科」は廃止される方向で検討されています。
「心臓外科」や「呼吸器外科」などの二階部分は、外科の一分野ですから、すべて廃止されます。
独立したカテゴリーの「脳神経外科」は存続します。
千葉大学病院から近い将来、「小児外科」という看板が消えてしまうのでしょうか。

小児外科とは何かということを、ここでもう一度、学会の首脳陣(理事会)は考えるべきです。
もしかしたら、会員全員の合意を得られないかもしれません。
小児外科学会は解散して、外科医は日本外科学会に合流し、小児医療医は日本小児科学会に合流するか、新しい学会を作って純然たる外科医と決別するのが正しい選択なのかも知れません。
僕自身の結論はまだありませんが、小児外科学会の首脳陣や名誉会員の先生たちがどのようにお考えなのか、時間無制限でお伺いしてみたいものです。

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