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『文学は地球を想像する』書評2023年12月01日 19時19分43秒

『文学は地球を想像する』書評
週刊読書人に書評を書きました。
『文学は地球を想像する』(岩波新書・結城正美)。

文学を環境との関係性の視点から批評するエコクリティシズムという学問について述べたものです。

書評の一部を掲載しますね。詳しくは書店で「週刊読書人」をお買い求めください。
文学の可能性、批評の可能性を感じさせる力作です。
おススメします。

みなさまへのお礼2023年12月03日 21時11分19秒

ふと気がつけば、このブログへのアクセス数が100万回を超えていました。

最初に書いたのは、2006年4月11日。
あれから、4068本の原稿を書きました。

ま、おそらく100万字以上は書いているでしょう。

今から17年前。開業のときは、ワクワク感もありましたが、それまでの人間関係が消えてしまい、本当に寂しい思いをしました。
孤独の中にいました。

そのときに、世界とのつながりをもう一度持つことができたのは、このブログのおかげです。
ぼくは「書く」ことによって、自分を取り戻し、また、新しい世界を切り開くことができました。

このブログはぼくにとって恩人です。そして延べ100万人の皆様には感謝しかありません。
これからもときどき覗いてみてください。

老化は治療できるか(河合 香織)2023年12月09日 15時08分47秒

老化は治療できるか
驚異的な河合さんの新作です。
何んとテーマは、不老不死。びっくりしました。
これまでに多くの作家が書いてきたテーマですので、類書はたくさんありますが、この本は、これまでの本とはまったく異なります。
ベーシック・サイエンスの最先端の話なんですね。
老化現象にフォーカスを当てて、さまざまなトップサイエンティストに話を聞いていきます。

取材というのは、まず「深さ」が大事。
本書では、サイエンスについて非常に深く掘り下げていきます。
文系(だと思います)の河合さんがここまでサイエンスの話を理解しながら筆を運ぶのは、ちょっと信じられない気持ちです。
ぼくの知らないことも多数出てきて、おまけに精密に表現されていて、まさに圧巻という感じでした。

そして「取材」には広さも必要です。こっちの方がむずかしいかも。
つまり誰に話を聞くのがいいのか、ということが問われるわけです。
誰にどういう話を聞くかで本の完成度が決まります。本書はそれに成功していると思います。
最終章の「そもそも長寿は幸せか?」という問いかけは、非常に深い話になっていました。

ぼくは、本を書き始めたときから夢を持っています。
サイエンスの話を書きたいという夢です。いつかブルーバックスに書ければ、もう死んでもいいと思っています。
思っていますが、そう簡単には書けない。
そんなサイエンスに憧れる書き手であるぼくにとって、この本はちょっと脅威的でした。

読み手にはそれなりに気合を求める作品です。イージーな本ではありません。
それを十分知った上で、ぜひ、みなさんにオススメします。

なぜ日本は原発を止められないのか? (青木 美希)2023年12月19日 21時44分29秒

大変興味深く読みました。
テーマは、なぜ日本は原発を止められないのか・・・ですが、筆者のジャーナリストとしての一番良い部分は、第1章の「復興の現状」を描いたルポにあったような気がします。

原発をやめられない理由は多岐にわたりますが、特に読んでいて驚くような話は出てきませんでした。
ただ、全体像をまとめ上げる筆者の筆力は立派なものだと思いました。

ただ1つだけ、ちょっと驚いた話。
小泉さんが総理のとき、核のゴミの最終処分場が日本にないことを知らなかったという。まじですか?
この人、ちょっとばかじゃないでしょうか。
呆れました。

この本で唯一物足りなかったのは、原発を推進する労働組合の取材をしていないことです。
野党がまとまれない最大の理由は、国民民主党の姿勢にあります。

つまり結局、みんな既得権益にがんじがらめになっているし、原発を推進してきたメディアにはメンツがあるから、いまさら自己改革できないわけですね。
世界の中で日本くらい原発の立地に向かいない国はありません。
火山大国・地震大国ですから。
それが方向転換できないというのは、日本人の民族性にも関係していると思います。
日本人は多くの人が保守的で、大胆な変革を嫌いますからね。

死刑制度が永久的になくならないように、原発もなくならないと思います。
立憲民主党が単独で政権をとっても難しいんじゃないかな。

良い本です。おススメです。

文庫化へ、『運命の子 トリソミー』2023年12月23日 22時43分24秒

『運命の子 トリソミー 完全版』
全国100万人のファンの皆様へ。
10年前に出した『運命の子 トリソミー』が2024年春に文庫化されることになりました。
この本は、ベストセラーにはなりませんでしたが、ロングセラーになりました。
大学の入試問題に採用されたり、上智大学神学部の授業で使われたりしています。
今でも、新たに手に取ってくれる読者がいます。
こういう息の長い本はちょっとめずらしいと思います。

今回、ぼくの希望がかなって小学館から文庫本として出版されることが決まりました。
タイトルには『完全版』という言葉を付ける予定です。
その後の家族の姿を1万字以上加筆しました。

考えてみれば、このご家族とは12年のお付き合いです。長く付き合えるというのは、ご家族の人間性が素晴らしいからでしょう。
2024年になったら編集作業に入ります。
近くなったら、また報告しますね。
『運命の子 トリソミー 完全版』にご期待ください。

大学教授こそこそ日記(多井 学)2023年12月27日 15時45分58秒

大学教授こそこそ日記
日記シリーズ。
安定の面白さですね。
でも、文系の教授と医学部の教授って全然違うなと思いました。
医学部は「白い巨塔」の世界ですからね。
ピラミッド型の人間関係で、教授が人事権を握っていますし、外科系ならば手術を誰がやるかの決定権を持っています。

この本には、そういった上下関係にきつさは含まれていませんでした。
筆者はペンネームですが、これってちょっとググって調べれば、かんたんに身バレするんじゃないでしょうか?
ま、バレても困るようなことは書いていないとは思いますが。

大学の先生が、高校を訪問して学生に受験してもらうようにお願いするところなどは、全然知らない世界でした。
給与の安さんは特に驚きません。
医学部も同じなので。

でも、学問ができるのだから良いじゃないですか?
ぼくも生まれ変わったら、学者になりたいな。
楽しい本です。おススメです。

ただ、最終章だけは奥さんの病気の話になって、ここは大変切なかったです。

生きることの意味2023年12月31日 09時06分02秒

生きることの意味。
生きるために働いているのか、働くために生きているのか、ときどき分からなくなる。
労働はぼくの人生の大部分を占めている。
労働に喜びがあるかというと、以前はうまく答えられなかった。それは不本意な形で大学病院を辞めたからだろう。

解離性脳動脈瘤を発症したのだから、これは明らかに労災だろう。
当時は大学病院に対する怒りや不信感があった。今も少しある。
そして手術ができなくなったことに対する未練をずっと持ち続けている。
ただ、ぼくが辞めた頃、千葉大でも内視鏡手術が行われるようになってきていた。
ぼくはああいった手術は嫌いなので、考えようによっては、良いタイミングで辞めたのかもしれない。

開業医という仕事になかなか慣れず、悪戦苦闘の連続だった。
でも最近になり少しずつ意識が変化しつつある。
働くとは、別にそんな楽しいものでは本来ない。
楽しいに越したことはないが、誰かの役に立とうと歯を食いしばって頑張るのが労働だろう。
そのしんどさをくぐり抜けて、人は自己実現していくのではないか。

開業医は高いレベルの医療は行わない。
でも多くの患者を診る。
1日に100人は当たり前で、150人以上を診ることもある。そして中にはものすごく軽症の子もいる。
しかし親から見れば「心配だから」受診しているのである。
100人の受診には100の心配がある。
それを解決していくのが開業医の仕事だろう。
100の心配を解消して、地域医療に貢献できれば、それはそれで「やりがい」と言ってもいいように思えてきた。

善く生きるとは、善く働くことで、それは人間として患者に誠実であることだろう。
たとえ何人患者が来てクリニックが忙しくても、一人一人の患者に誠実に対応することが善く生きることになるのではないか。