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カレルの心臓からiPS細胞まで(3)2015年07月20日 15時13分52秒

「不死化」と対をなすのは、「老化」であり「細胞増殖の停止」だ。後者の二つは必ずしも同じものではない。そして「細胞の増殖停止」には「分化」という現象が密接にかかわる。
つまり「不死化」の抑制は「分化」につながる。

小児がん・神経芽腫は極めて予後が悪い一方、分化することがある。治療が終了した患者にレチノイン酸(ビタミンAの誘導体)を内服させることがある。
シャーレの中で神経芽腫は、レチノイン酸によって増殖が停止し、神経突起を伸ばすという分化を示す。
この時に、「サイクリン依存性キナーゼ・阻害」タンパクの発現は減少する。
また逆に、「サイクリン依存性キナーゼ・阻害」遺伝子を神経芽腫の細胞内に導入すると、神経分化が起きる。

「不死」ということは「未分化」な状態である。
とりわけ「がん幹細胞」は未分化な細胞そのものである。

すると、iPS細胞は、がん細胞に、特に「がん幹細胞」に似ていないだろうか?

一つの受精卵が細胞分裂をくり返し、およそ200種類の細胞を37兆個までに増加させるという過程が分化である。なぜある細胞は腸になり、ある細胞は筋肉になるのであろうか。
一つの可能性は、分化の過程で遺伝子が失われていき、腸の細胞には腸の遺伝子しか残っていないという説である。もう一つの可能性は、30億塩基対の遺伝子はすべての細胞で残っており、「腸」に必要でない遺伝子は働きが止まるという説だ。
ジョン・ガードンは、オタマジャクシの腸の細胞から核を取り出した。それを、核を失ったカエルの卵に移植した。するとその卵から、核を提供した種類のカエルが誕生した。つまり遺伝子は失われていなかった。条件さえ整えれば、分化した細胞を「初期化」して、幹細胞が作れるはずである。
山中博士は、Oct3/4, Sox2, Kif4, c-mycの4つの遺伝子(山中因子)を細胞に導入してiPS細胞を作成することに成功した。

iPS細胞は自己複製し無限に増殖する。そしてある条件の下に様々な細胞に分化する。では、テロメアはどうなっているのか? ちゃんと0歳の状態にリセットされている。
テロメラーゼが働いている細胞は、生殖細胞とガンと幹細胞だけである。
c-mycを導入したiPS細胞には当然癌化にリスクがある。従ってc-mycを用いないiPS細胞の作成方法の報告が続いている。

正常細胞が癌細胞に変化するためには、多数の遺伝子変異は必要であり、長い年月がかかる。ヒトは「老化」と「クライシス」を使って癌化を避けているように見える。若い人が癌になると病気の進行が速いことが知られている。老人の癌はゆっくりと進む、あるいは人間と共存する。生き物に寿命があるのは、致死性の癌から逃れ穏やかな人生の終末を迎える方便かもしれない。

カレルの心臓からiPS細胞まで(2)2015年07月19日 17時25分01秒

試験管の中の世界におけるガンには3つの条件がある。
1 ヌードマウスに移植すると腫瘍を造ること。
2 接触阻害が起きない。シャーレの中で盛り上がって増殖する。
3 足場に依存しない。培養液中で浮遊しながら増殖する。

HeLaはこの3つをすべて満たす。一方で、Veroはこれらのすべてを満たさない。
つまりVeroは「不死化」しているが「ガン」ではない。
では「不死化」とはなんだろうか?

ヘイフリックの限界を精密に見ていくともう少し細かい生命の限界が見て取れる。
普通の細胞は50回前後の細胞分裂を経て、増殖が止まる。しかし死ぬ訳ではない。これを「老化」と呼ぶ。
根気よく培養を続けると、細胞はあと10から20回分裂できることがある。これを「寿命の延長」と呼ぶ。しかしそれ以上は無理だ。細胞は増殖できない状態に陥る。これを「クライシス」と呼ぶ。クライシスの後には破局が待っている。

老化の段階において細胞は強いストレスを受ける。この時に誘導されるのが、二つのがん抑制遺伝子である。
家族性(遺伝性)網膜芽腫からクローニングされたRbと、SV40で形質転換したガン細胞から分離されたp53である。

1つの細胞が2つに分裂する時、細胞周期が進行する。
これを制御するのがRbである。

「サイクリン依存性キナーゼ・阻害酵素」は、「サイクリン」と「サイクリン依存性キナーゼ」の結合体を抑制する。「サイクリン」と「サイクリン依存性キナーゼ」の結合体は、Rbを活性化する。活性化したRbは、E2Fを放出し、E2Fは細胞周期を回す。

従って、Rbが壊れてしまうと細胞周期のコントロールが無くなる。つまり、「不死」になる。
「サイクリン依存性キナーゼ・阻害酵素」が無くなると、Rbをコントロールできなくなり、「不死」になる。

p53も細胞周期に関係する。正常なp53は、「サイクリン依存性キナーゼ・阻害酵素」を作る。また、DNAを修復したり、修復できない場合は、アポトーシスを起こして細胞を殺す。
つまり、p53が壊れてしまうとサイクリン依存性キナーゼ・阻害酵素」を作れなくなり、「不死」になる。

「老化」というのは、Rbとp53がきちんと働いている状態である。「寿命の延長」というのは、Rbとp53の働きが低下している状態である。

「クライシス」とは何だろうか?
それは染色体末端の反復配列テロメアが削れてしまった状態である。テロメアとは靴紐がほどけないようにするAglets・アグレットのようなものだ。TTTAGGという6塩基の配列が、生まれた時には数千個連なっている。これは細胞分裂のたびに、50〜100個くらいずつ失われていく。
テロメアが無くなれば、染色体の断端は剥き出しになる。そうなると染色体同士が接着し、細胞分裂の時に染色体は引きちぎられる。染色体のカタストロフィー(破局)である。

この「クライシス」を乗り越える方法は一つしかない。それはテロメラーゼという酵素を活性化して、短くなったテロメアを再度伸ばすことだ。
もしテロメアが再延長すれば、細胞は「不死化」する。

Vero細胞の全塩基配列が2014年になって解読された。29億7000万塩基対の中に、25877個の遺伝子が同定された。その結果、12番染色体に900万塩基対の遺伝子欠失が見つかった。この遺伝子領域にはインターフェロンが含まれている。Veroにはインターフェロン産生能がないため、ウイルスの増殖を抑制できない。だからいろいろなウイルスに感染するのだ。
そしてこの染色体領域には、「サイクリン依存性キナーゼ・阻害酵素」も含まれている。だからVeroには、「サイクリン依存性キナーゼ・阻害酵素」が欠失している。それゆえ、Veroは不死化しているのだ。

この900万塩基対を含む5900万塩基対には、一塩基多様が見られない。つまりヘテロ接合を失っている。片方の染色体に欠失が発生し、相同染色体にも同じ変化が起きたということである。
そして Veroではテロメラーゼが活性化していることも知られている。
これが、Veroが不死化した理由だ。

では、HeLaはどうだろうか?
HeLaにはヒトパピローマウイルス18型(HPV18)が、宿主染色体8番に組み込まれている。HPVの初期遺伝子は7つ(E1〜E7)、後期遺伝子は2つ(L1, L2)あるが、癌化に必要なのは、E6, E7である。実際、HeLaにはE6とE7が何コピーもオニオン・スキン型に増幅して挿入されている。
E6の働きはp53を崩壊させることである。
E7の働きはRbを不活化することである。
また、E6はテロメラーゼを活性化する。
これが、HeLaが不死化した理由だ。

つまり「不死化」への道には2つのステップがある。
1段階目は、「老化」であり「ヘイフリックの限界」であり、「Mortality Stage 1(死の第1段階)」である。
2段階目は、「クライシス」であり、「Mortality Stage 2(死の第2段階)」である。

HeLaは不死化しているだけでなく、癌化もしている。その最大の理由は、HPVが染色体8番、つまり、がん遺伝子c-mycのすぐ上流に組み込まれ、c-mycを活性化しているからである。

VeroもHeLaも不死化しているが、ガンであるか否かの違いは、がん遺伝子が働いているかどうかの違いである。

カレルの心臓からiPS細胞まで(1)2015年07月19日 16時05分18秒

1912年(大正元年)、外科医カレルは臓器移植を夢見ていた。
人の体から取り出した臓器を、人工的に生かすことができれば移植に役立つと考えたのであった。
そこでカレルは予備実験として、ニワトリの心臓から取り出した細胞をシャーレの中で培養することを開始した。
細胞は増殖し生き続けた。細胞がシャーレを埋め尽くすと、カレルは細胞をシャーレから剥がし、1/2の濃度にして別のシャーレに植え継いだ。こうしているうちにカレルは亡くなり、細胞は生き残った。
カレルの弟子たちは、なおも細胞を生かし続けた。しかし1946年(昭和21年)、細菌感染が起こり、「カレルの心臓」はついに永遠の命を手放した。
細菌の感染さえなければ細胞は生き続けたであろうと世界中の科学者たちは考えた。だからこの当時、生き物に寿命はあっても、シャーレの中の細胞に寿命はないと考えられていた。
ところが、誰も「永遠に生きる細胞」の追試に成功しなかった。

1951年(昭和26年)、メリーランド州ボルティモアの黒人女性ヘンリエッタ・ラックスは31年の生涯を終えた。彼女の命を奪ったのは子宮がんだった。科学者たちは、がん細胞をシャーレの中で培養し、細胞にHeLaという名前を付けた。HeLaは凄まじい勢いで分裂増殖した。世界中の科学者に供与され、様々な方法で科学利用された。
ポリオワクチンの開発にも利用されたし、スペースシャトルに乗って宇宙にも行った。

1961年(昭和36年)、ヘイフリックはカレルの心臓の謎を解こうと考えた。彼はヒト胎児の細胞をシャーレの中で培養した。増えた細胞を1/2に希釈し、別のシャーレに植え継ぎ、培養をくり返した。ところ何度やっても細胞は50回分裂すると、それ以上は細胞分裂が起こらないことを知った。
生物の種によって細胞分裂の回数は一定していた。そしてその回数は、その生物の寿命の長さに一致していた。
寿命とは、細胞分裂の数である。彼の考え方は「ヘイフリックの限界」と呼ばれた。

ではなぜ、カレルの心臓は34年間も生き続けたのであろうか?
それには「秘伝」があった。培養には、新鮮なニワトリ胚抽出液を足してやる必要があったのだ。そしてその継ぎ足された抽出液の中に、新しい細胞が混ざっていたのである。

ヘイフリックの限界説は科学界から好意的には受け入れられなかった。現にHeLa細胞は無限に増殖しているからだ。
ポリオワクチンを作成できるのは素晴らしいことではあるが、癌細胞から作ったワクチンを人間に注射することには問題があった。

1962年(昭和37年)。千葉大の安村は、SV40というサルに腫瘍を形成するウイルスの研究をしていた。SV40の実験をするためにはその都度アフリカミドリサルの腎臓が必要だった。つまり1回の実験ごとにサルの命が失われた。安村は考えた。シャーレの中で永遠に生きるアフリカミドリサルの腎臓細胞を手に入れられないかと。
安村はひたすら細胞を培養した。しかし何度やっても細胞は途中で増殖が止まった。しかし彼は諦めなかった。安村は無菌箱にラテン語で「雨垂れ岩をも穿つ」と書き付け、培養を続けた。
そして18回目のチャレンジである変化が起きた。植え継ぎが30回を過ぎた頃から細胞の増殖は生き生きとしてきた。瑞々しく輝いて見えた。これまでとは何もが違っていた。永遠の命を獲得した細胞を手に入れたと確信した。最初に培養を始めてから3年が経っていた。
エスペラントで、緑はVERDA、腎臓はRENOという。そこで、細胞にVERO(ヴェーロ)を名付けた。またVEROには「真理」という意味もあった。

Veroにはさまざまなウイルスが感染する。その結果、安全にワクチンを作ることができる。Veroによって毎年世界中に6000万人分のポリオワクチンが供給されている。日本ではポリオ以外にも、日本脳炎ワクチンが製造されている。
SARSウイルスもMERSウイルスも、ワクチンがVeroに感染したために分離同定が可能だったのである。

では、Veroはなぜヘイフリックの限界を超えて生き続けているのであろうか? HeLaと何が違うのであろうか?

サイエンスと倫理が問われた2014年2014年12月26日 19時56分54秒

STAP細胞、新型出生前診断、着床前診断。
2013年から2014年にかけて、サイエンスとその倫理性が問われたと思います。

ぼく自身、大学時代にサイエンスで「飯を食ってきた」身として、サイエンスの怖さがよくわかります。
STAP細胞のような世紀の大発見をしたところで、給料が上がる訳ではありません。
しかし、名誉がもたらされる。その最高峰はノーベル賞です。

人はパンのみによって生きる訳ではありません。
武士は食わねど高楊枝で、名誉こそが人生で一番重要と考える人も多いでしょう。
政治家が「勲章」を欲しがる気持ちにも通じます。

だけど、サイエンスには怖い面があって、ある分野で競争が始まると、大玉が坂を転げるように誰にも制御不能になることがあるんです。
「科学の世界は性善説」などと言いますが、要するにこれは科学をチェックする仕組みをサボっていることに対する単なる言い訳に過ぎません。

政治権力をジャーナリストが監視するように、サイエンスにも倫理的歯止めが本来は必要なんです。

新型出生前診断にしても着床前診断にしても、誰か特定の人間の欲を満たすと、同時に必ず倫理的齟齬が生まれ、優性思想が障害者差別を作ります。
ここでも医者がやっていることに対して倫理的なチェックが必要になるのですが、そこの部分が現状では脆弱ではないでしょうか?

サイエンスとは、本来、人々が幸福になるための技術に過ぎません。
私たちはもう一度、自分たちの依って立つべき原点に回帰し、もっと単純で平明でささやかな幸福を目指した方が良いのではないでしょうか?

おかしくないか? 朝日新聞の記事2014年12月19日 20時46分25秒

ネットで朝日新聞を読んでいたら、「STAP、夢のまま終幕」とありました。
なんだか夢破れ、ロマンが消えたかのような情緒的な記事です。
しかしこれはおかしい。

本人の手をもってもSTAP細胞を再現できなかったということは、STAP細胞が「捏造」であったということの何よりの証明です。
つまり彼女が、偶然、STAP細胞を作ってしまったのではなく、「インチキ・不正・偽造」をして万能細胞を「作った」訳です。

夢のまま終幕などというロマンチックな話しではありません。
これは超弩級の詐欺です。
彼女を悲劇のヒロインみたいに論じるのは、的外れにも程があります。
これで日本の再生医学に対する世界的評価は底抜けに滑り落ちました。
彼女が「自白」しない限り真相を明らかにするのは困難でしょう。しかし科学界はそれをやるべきです。
ジャーナリストに手を借りても良いでしょう。
なぜこういうことが起きたのか、明らかにしないと、日本のサイエンスのダメージは何10年も尾を引くでしょう。

僕もノーベル賞が欲しい2014年10月10日 22時06分43秒

日本人がノーベル賞を獲るたびに憂鬱な気持ちになります。
ああ、僕も医者など辞めて研究の道を歩んでノーベル賞を目指せばよかったと。

僕が医者を辞めようかと考えたのは、医者になって4年目。
大学院に進学して2年目のことでした。

大学院での研究が(デッドロックに乗り上げた数カ月はありましたが)非常に順調だったので、このまま世界と勝負したいという気持ちが大変強くなりました。
研究をおこなっていた分子ウイルス学教室の教授からも、ポストを用意するから小児外科を辞めて研究室に残らないかと誘われました。

当時、相当迷いましたが、小児外科の上司の引き留めもあり、結局は医者を続けた訳です。
研究者になるということは、世界の頂点を目指すということですから、ある意味、研究者とは全員がノーベル賞を狙っているとも言えます。
研究には才能も努力も、そして運も必要ですから、誰がノーベル賞を獲得するかなど将来を予測できる人などいません。

ぼくが研究生活を送っていた同時代に、ツール・ハウゼンやキャリー・マリスがいますが、彼らがノーベル賞を獲るとは思わなかった。
逆にロバート・ワインバーグやバート・フォーゲルシュタインがノーベル賞を獲れなかったのは意外でした。

さて、今回、物理学賞を青色LEDの開発の業績で日本人が受賞しました。
例によって我が祖国の総理大臣は「人材こそが我が国の世界に誇る資源」などと、ナショナリズムを煽って、政治利用し、結果、自分の支持率を上げ、我欲を満たそうとしています。
しかしちょっと考えて欲しいのは、中村先生は日本という国に呆れ果てて、日本を捨ててアメリカ国籍を取り、当地の教授になっているという事実です。

利根川進先生の「免疫の多様性」を解き明かした発見はノーベル委員会から「100年に1度の発見」と賛辞を受けましたが、利根川先生だって日本に居場所がなかった。

つまり個人の努力でノーベル賞を掴んだのに、政治の権力者が自分らの手柄のように言うのは、大変「せこい」と思います。

中村先生の日亜化学との200億円訴訟を見てもわかるように、日本というのはとにかく「出る杭を打つ」文化があります。
こうした文化は、運動部の「体罰」とか「医者の父権主義」とかに深く通じているでしょう。

メディアは何をやっているのでしょうか?
今こそ、中村先生の名誉回復に、あの裁判のことをもう一度徹底的に大特集を組んで報道すべきではないでしょうか?

中村先生が会社員だった時、彼のあだ名は「スレイブ中村」だったというのをご存じでしょうか?
「スレイブ」とは「奴隷」という意味。
アメリカ人から見れば、青色LEDを実用化した業績に対して2万円しか支払われないのは、異常であり、非常識なんです。
さすがに日本の裁判所も、中村さんの業績の価値を600億円と認定しています。

ですが、どうやら今後法律が変わり、会社員が何かを発明すると特許権は会社に所属するようになるそうです。
もちろん、経団連などがそういった要望を自民党に出しており、そして経団連が自民党に献金を再開しようとしているのは報道の通りです。

その自民党の総裁が、中村先生のノーベル賞を祖国の誇りみたいに言うのは、マンガみたいなものでしょう。

Fbx15 ノックイン・マウス2014年06月01日 11時06分25秒

Fbx15 ノックイン・マウス
iPS細胞の樹立に役立った見事な「仕掛け」。
このことを書いた「iPS解説本」はほとんど存在しない。

こういうことを分かりやすく書くことが、ライターの仕事(任務)だと思う。

カレルの心臓2014年05月27日 21時00分57秒

カレルの心臓
写真はカレルという外科医がニワトリの心臓から抽出した細胞です。
シャーレ(実験用のお皿)の中で34年間も生き続けました。
1912年のことです。日本で言えば大正元年ですね。

ニワトリは死んでも細胞は永遠に生きると当時の人達は信じた訳です。
ところが誰も追試に成功しませんでした。
まるでSTAP細胞ですね。

この細胞は捏造ではない。しかし真実でもない。
細胞分裂には限りがあり、それが「ヘイフリックの限界」です。

不老不死は叶わぬ夢なのです。

山中先生の Cell を読む2014年05月25日 15時23分08秒

山中先生の Cell を読む
え? 今頃? と言われそうですが、山中先生が iPS 細胞を最初に報告した2006年の Cell を読みました。

多々感想があります。
まず全体として泥臭い構成だなと感じました。もちろん良い意味です。
科学者として事実に対して謙虚に、思考の過程に誠実に書いている。
奇想天外のアイデアですから、説得力を持たせようと考えたのかもしれませんが、山中先生の人柄が出ていると感じました。

そして著者が二人というのがすごい。
一説によると、強い批判が巻き起こる可能性を考慮して共同研究者を守るためにオーサーを減らしたそうですが、二人の名前で書くというのことは、研究全体を高橋さんと山中さんが完全にコントロールしているということ。
これだけ膨大なデータになると、他の研究者に任せた部分で隙が出やすいものです。それを自らの覚悟で封じ込んだのだと思います。

24個のクローンを得るためにESTデータベースを使ったのは有名な話ですが、しかし、こういう時代にあってもSouthern blotting などの古典的な研究手段はきちんと使われていることに感銘を受けました。
片手にコンピューター、片手に竹槍という感じです。

そしてこの研究のキモは、Fbx15 ノックイン・マウスによる幹細胞の検定方法でしょう。
Fbx15 は、幹細胞の中では強発現しているが、細胞の維持に必須ではないというユニークな遺伝子。
その遺伝子に、ネオマイシン耐性遺伝子をノックインして破壊する。
このマウスから線維芽細胞を取ってきて、24個の遺伝子を入れる。
幹細胞化すれば、FBX15が動き、ネオマイシンが働く。その結果抗生剤(G418)で死なない訳です。
こうやって幹細胞になったかどうか選別した訳ですね。

24個から4個に絞る際、高橋さんは1個ずつ抜く(23個ずつ遺伝子導入する)というアイデアを思いつきました。
山中先生も、あと2日あれば自分も思いついたと言っていますが、それは半分ギャグでしょう。
凡人の発想ではありません。ぼくだったら一生かかっても思いつきません。

顕微鏡を覗いて丸く盛り上がったフォーカスを目にした時は、どんな気持ちだったでしょう。
指が震えるくらい興奮したのではないでしょうか。

こういう論文を読むと何か自分の人生に価値が増したような気分になります。
ノーベル賞は当たり前でしょう。

追記)もう一つ感想を加えておくと、この論文はイントロに書いているビジョンが実に明確です。
ES細胞は、胚を壊す倫理的な問題と、移植の際に拒絶という弱点があるから、体細胞からES細胞を作る必要があるときっぱり言い切っています。
Cell の論文でこういう風に明瞭に臨床応用を意識したものは少ないと思います。

「松永仮説」のシェーマ2014年05月10日 15時08分46秒

「松永仮説」のシェーマ
昨日の仮説をシェーマで表すとこんな感じになります。
なぜ、細胞融合が起きるのか、それは不明です。
しかし4Nの神経芽細胞が発生した時を、神経芽腫のオリジン形成の瞬間と仮定するのです。

4N細胞は染色体1本を失って、3N細胞に。
この3N細胞は、「がん幹細胞」として生き続けます。
やがて3N細胞は染色体1本を失って、2N細胞に。
この2N細胞も、「がん幹細胞」です。
2Nがん幹細胞から、いろいろながん細胞が分裂・増殖していく過程で、1pを失ったり、17qをgainしたり、N-mycを増幅させる訳です。