無機的な恋人たち(濱野ちひろ)2026年07月14日 22時32分13秒

無機的な恋人たち(濱野ちひろ)
この作品は、ひとことで言うととても難しい本でしたね。
性愛の対象が、人形という人たちを描いています。
ケーススタディーのような形で綴られていくので、こうした性愛の形にある種の普遍性があるのか、正直なところわかりませんでした。
ただ、個から一般へと真理を展開することは常に可能ですので、この本を読み取るためには、読者の力も試されるのではないかと思います。
このテーマに関心のある方は、ぜひ、読んでみてください。

さようなら、Sさん。また会いましょう2026年07月12日 22時17分45秒

2013年に『運命の子 トリソミー』という本を書き、小学館ノンフィクション大賞をいただきました。
この本を書いたことでぼくの人生は変わりました。
なにしろ大賞は、その年の日本一ということですから、こんなに名誉なことはありません。
実は賞に応募したのは偶然なんです。

当時ぼくは講談社の編集者と付き合っていました。トリソミーのこと書こうと思ったきっかけもその編集者の言葉があったからです。
小児外科医にとっては当たり前のワードでも、一般の人からするとトリソミーなんて言葉は聞いたことがないわけです。
それも予後が大変に不良で、医療の対象になっていないというのは、信じられないというのです。

そうか、では書いてみよう。こうして「取材」が始まりました。
1年半くらいかかりました。
そうして出来上がった原稿。
しかし2013年頃、講談社はノンフィクションから完全に撤退していました。
その編集者は「うちからは出せない。賞に応募してはどうか」と言います。
そこで調べてみると、小学館NF大賞の締切まで、あとちょうど2ヶ月くらいあります。
受賞する自信なんてなかったけど、原稿を磨いて応募しました。

結果は、大賞。
運がよかったと思います。あのとき、講談社から本になっていたら、違う人生になっていたと思います。
やはり賞という冠は大変重みがあり、これによってぼくは次々に執筆のチャンスに恵まれました。
1作書くと、次の1作への機会が広がるのですね。
多くの出版社の編集者と出会いましたが、やはりみなさん、ぼくのことを知ってくれているのです。

その『運命の子 トリソミー』の編集をしてくれた小学館のSさん。
ぼくの原稿をとても大切にしてくれて、ほとんど応募した原稿のまま出版してくれました。
本はベストセラーになりませんでしたが、10年間で4刷になりました。ロングセラーです。
ぼくにはこちらの方がうれしいです。
そして、文庫化もしてもらいました。ありがたいことです。

Sさんは、『女性セブン』の編集者でもあり、ぼくが本を出版するたびに、セブンで特集を組んでくれました。
そのおかげで、一体どれほど本が売れたかわかりません。

そのSさんが60歳になり、定年退職を迎えました。
昨日は、神保町のフレンチレストランで送別会を行いました。
思い出たくさんなので、話は尽きません。
これからはセカンドキャリアになるそうです。
いったん、さようなら。
健康がとにかく大事。お身体お大事に、次の仕事も楽しんでください。

これまでの13年間のお付き合い。感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました。
またお会いしましょう。

地面師連絡役カトウ: 積水ハウス55億円詐欺事件、ある実行犯の告白 (河合桃子)2026年07月06日 20時10分24秒

地面師連絡役カトウ: 積水ハウス55億円詐欺事件、ある実行犯の告白 (河合桃子)
第32回小学館ノンフィクション大賞受賞作です。
地面師というワードが人口に膾炙するようになってかなり経つと思いますが、本作のテーマはその地面師のようです。
ぼくはかなり昔に森功さんの『地面師』を読んでいますので、どういう形態の詐欺なのかはまあまあ知っていました。
犯罪という行為は人間性が出ますので、人間を描いている本であれば読みたいと思いました。
もちろん、小学館NF賞を取っていますので、最高レベルのノンフィクションに仕上がっているはず。
で、読んでみました。

最初から、登場人物の多さに圧倒されます。
これだけ「役者」が多いと、読む方は頭が混線します。
もっと簡略に書けないのかな・・・と思いましたが、これがあとで効いてきます。
詐欺集団って大人数で実行に及ぶし、互いのコミュニケーションが取れていなくて、ものすごく塊としてはもろいのです。
犯人はほとんどが逮捕されますが、自供の内容がバラバラなんですよね。
自分は罪を被りたくないから、それは当然かもしれませんが、誰が首謀者なのかもよくわからないのです。
魑魅魍魎の犯罪集団です。

で、主人公のカトウは連絡役というかパシリです。
著者は服役を終えたカトウから長い長い話を聞き出します。
最初は、積水ハウスから金を騙し取った詐欺の話と、報酬として得た大金を湯水のごとく使ってしまった話なのですが、やがてカトウのこれまでの人生と、これからの人生に話が移っていきます。
ぼくはその辺を大変面白く読んだのですが、ここの部分は読者によって評価が分かれるかもしれません。
要は、詐欺を描いた本ではなく、カトウという人生につまずいてしまった一人の人間を描いた本でした。

この本の一番優れている点は、筆者の物語る力です。
ストーリーテラーとしての力がとてもありました。
ぼくがカトウから話を聞いても本にできなかったように思えます。
若い書き手ですから、これからも秀作をどんどん書くのではないでしょうか。
期待しています。
いい作品でした。

ぼくは若者が好き2026年06月27日 19時21分49秒

ぼくは若者が好きです。
だってバカだから(笑)。
バカってすばらしいですよ。打算がないし、ピュアだし、柔軟だし、突拍子も無いアイデアを出すし。
ですので、大学にいたとき、若い医師と付き合うのが好きでした。
でも、バカはバカなんですよね。
常識がない。
今の時代、年賀状に自分の子どもの写真を載せるのは非常識です。
赤ちゃんが生まれて、友だちに一斉にLINEで写真を送るのも非常識です。
この世の中には、赤ちゃんを授かりたくても、授かれない人、授かろうと思わない人がいくらでもいます。
そうした写真を送ることを、無神経とか鈍感とかバカとかいいます。
もう少しだけ、常識をわきまえましょう。
その赤ちゃん、LINEを送った先の人から祝福されていませんよ。
そういうことを考えてください。

痛いところから見えるもの(頭木弘樹)2026年06月26日 19時15分42秒

痛いところから見えるもの(頭木弘樹)
『六人部屋の十三年間』(晶文社)があまりにもおもしろかったので、本作も読んでみました。
筆者は、潰瘍性大腸炎を患っていましたので、お腹が痛いのです。
検査も痛いし、術後イレウスも痛い。
とにかく痛いのです。

この「痛み」をテーマにここまで深く、そして広く語ることができるというのは、ぼくにとって驚異的でした。
そうか、本ってこうやって書くのか。ぼくもまだまだだなと痛感しました。

編集は文春の山本さん。ぼくも一緒に本を作りました。
みなさんも読んでみてください。

自分は「底辺の人間」です 京都アニメーション放火殺人事件(京都新聞取材班)2026年06月21日 16時18分26秒

自分は「底辺の人間」です 京都アニメーション放火殺人事件(京都新聞取材班)
京アニ放火殺人事件をめぐるルポルタージュです。
出だしの部分は必要だったかなと、やや疑問に思いつつ読み進めました。
やはりおもしろくなるのは、青葉死刑囚の裁判になってから。
彼は、「自分のアイデアをパクられた」とずって言っていたことはぼくも知っていました。
だから、思い込みとか、言いがかりが犯行の動機だったと思っていました。
ですが、実はそうではなく、統合失調症だったのですね。
つまりは妄想です。妄想から怒りに変わり、犯行に至ったわけです。
それを知って複雑な気持ちになってしまいました。

36人が亡くなり、遺族にはいろいろな思いがあります。
犯人を死刑にしてほしいと望む人もいるし、死刑にしても何も償いにならないと考える人もいます。
裁判に遺族として出廷する人もいるし、もう関わりたくないという人もいます。

この本のある意味主人公は、青葉死刑囚に何度も面会を求める遺族です。
彼がなぜ犯行に及んだのか、殺した自分の妻をどう思っているか、彼の言葉で聞きだし、それによって遺族としての人生に区切りをつけようとするのです。

こうして読んでくると、出だしで京アニで働いていた人たちの姿を描いたことが生きてくるとわかります。

ぼくが気になったのは、事件後4年で裁判が行われたときの、青葉死刑囚の精神病理です。
この時点で、彼の統合失調症はどうなっていたのか?
寛解状態だったのか、それとも病の中にいたのか?
それが気になりました。

彼は社会の経済的な「底辺の人間」で、自暴自棄になっているわけです。
生い立ちも悲惨。
京都まで行ったときは、お金も底を突き、野宿をしています。
そういう経済状況の人が、妄想に絡め取られたら、超えてはならない一線は超えるかなとも思いました。
今の日本の法律では、死刑にして終了・・・しか道がないと思いますが、あまりにも悲惨で救いがないと強く感じました。

どうすればよかったのでしょうか?

朝日新聞、書評欄に登場しました2026年06月20日 15時13分57秒

朝日新聞、書評欄に登場しました
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今朝の朝日新聞、書評欄に『性別違和に生まれて 父と子で綴った23年』(中央公論新書)が登場しました。
非常にきれいにまとめていただきました。ありがとうございます。
妻は書評を読んで、ボロボロと泣いていました。
これまで本当にしんどい思いをしたはずですが、弱音を一切はくことなく、ひたすら、我が子の成長を支えてきました。
そうした想いが溢れたのでしょう。

書評はここから、全文を無料で読むことができます。
 ↓
https://book.asahi.com/article/16658214

ぼくはこの本を、性別違和を社会啓発するために書いたわけではありません(そういう面も少しはある)。
一番表現したいのは、子どもが生きづらさを抱えても、希望を捨てなければ、そして家族が力を合わせれば生き抜くことができるということです。

ご関心のある方は読んでみてください。
Amazon は品薄ですが購入可能です。
 ↓
https://amzn.to/4eBimmc

どうぞよろしくお願いします。

明日の朝日新聞2026年06月19日 16時12分19秒

明日の朝日新聞
明日の朝日新聞の書評欄に、拙著『性別違和に生まれて』が取り上げられると聞いています。
毎日200冊の本が出版される中で、朝日に書評で取り上げられるなんて奇跡的なことです。
朝日を購読している方は、ご覧になってみてください。

本日は、午後を休診にして千葉大病院へ行ってきました。
MRI を撮影しました。撮影中、『魔女の宅急便』が流れていました(笑)。

発症から24年になりますが、脳動脈瘤は変化なく、落ち着いています。
もう少し頑張れそうです。あと10年、働けるかな?

写真は、救命救急センター。その右奥が外来棟。
立派な建物です。クリックで拡大します。

毎日新聞に登場!2026年06月16日 08時49分19秒

毎日新聞に登場!
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毎日新聞から『性別違和に生まれて』(中央公論)をめぐって親子でインタビューを受けました。

出だしの部分だけでもご覧ください。
イラストは15歳のとき。「人間でない生命体になりたい」。

https://mainichi.jp/articles/20260615/k00/00m/040/064000c

よろしくお願いします。

週刊東洋経済から著者インタビュー2026年06月15日 12時13分22秒

週刊東洋経済から著者インタビュー
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『赤ちゃんにメスを入れる』(晶文社)

週刊東洋経済から著者インタビューを受けました。
小児外科とはどういう世界か? 
なぜこうした疾患が発生するのか? 
どうやって治すのか? 
透けるほど薄い腸を縫うとはどういう世界なのか?

ぜひ、手に取ってみてください。

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