アクセスカウンター
アクセスカウンター

週刊読書人2024年12月13日 17時51分42秒

週刊読書人
2024年の収穫。今年も書きました。

橋本求『遺伝子が語る免疫学夜話 自己を攻撃する体はなぜ生まれたか?』(晶文社)。

青山ゆみこ『元気じゃないけど、悪くない』(ミシマ社)。

横田増生『潜入取材、全手法 調査、記録、ファクトチェック、執筆に訴訟対策まで』(角川新書)。

みなさんは、どんな本がよかったですか?

末期がん「おひとりさま」でも大丈夫 (長田 昭二)2024年12月08日 17時11分05秒

末期がん「おひとりさま」でも大丈夫 (文春新書) 新書 – 2024/11/20 長田 昭二 (著)
おひとりさま、だといろいろ不安ですよね。
筆者は前立腺がんのステージ4。
とてもしんどいと思うのですが、それをあまり暗くならないで書いているところがすごいと思いました。
今の時代、おひとりさまが多く、自分が亡くなったあとに、すべての処置を引き受けてくれる業者もたくさんあるようです。
かなりの仕事量になりますからね。
元気なうちから準備をしておくことが大事です。

前立腺がんは進行の遅いがんとして知られています。
日々を楽しく、少しでも充実した毎日になるといいですね。
痛みがこないことを祈っています。

『透析を止めた日』(堀川惠子)2024年12月04日 08時42分58秒

『透析を止めた日』(堀川惠子)
ちょっと事情があって『透析を止めた日』を2回読みました。
2回目は精読。

読み出したら止まらないという本は、年に数冊で会うが、本の終わりが近くなって「ああ、終わらないで!」と思う本は、数年に1冊。
これはそういう本。

ぼくもいつかは、こういう本を書いてみたいな。

死ぬということ-医学的に、実務的に、文学的に(黒木登志夫)2024年11月13日 09時06分06秒

死ぬということ-医学的に、実務的に、文学的に(黒木登志夫)
前半は教科書(医学書)を読んでいるようで、ぜんぜんおもしろくありませんでしたが、終盤の死にまつわる論考は実に見事でした。
この部分だけで1冊、本を作ってもよかったかもしれません。

思索も深い、表現も豊かだし、よく文献調査もしているし、大変クオリティーが高いと感じました。そしてユーモアも。
ただ、安楽死の定義に関しては、ちょっと整理が不十分で、正確性に欠けていました。
ぼくに取材してくれればよかったのに。

でも、こういう本を、ぼくに書けるかと問われれば、書けません。88歳でこういう大作を仕上げるのは、本人の才能もあると思いますが、飽くなき好奇心みたいなマインドも大きいのでしょう。
努力を惜しまない集中力もあるのでしょう。

とても真似できませんが、ぼくもまだ62歳。努力は続けたいと思います。
なお、前半部分は、一般の人には十分おもしろくためになると思います。
多くの人におススメです。

里親と特別養子縁組-制度と暮らし、家族のかたち(林 浩康)2024年11月02日 21時13分00秒

里親と特別養子縁組-制度と暮らし、家族のかたち(林 浩康)
里親・特別養子縁組に関心があり、読んでみました。
本書は入門書という位置付けだと思います。しかしながら、学者さんが書いた本なので、学術的記載も多く、勉強になると同時に、課題に対する解決策が少し抽象的かなと思える部分もありました。
またその一方で、ルポとしての記載も多く、里親・里子の関係性などを現場から丁寧に描いていました。

日本では、家庭養護(里親・特別養子縁組)が、欧米と比べて一向に進みません。
その理由について解説がありましたが、ぼくは日本の戸籍制度も大きいのではないかと思っています。
戸籍というシステムは、日本・韓国・台湾くらいですからね。
ですが、残念ながら戸籍に関する記述はありませんでした。

今の時代に求められる良書だと思いますが、この本を読んで「自分も里親になってみよう」と考える人はそれほど多くない気もします。
ある意味で、シビアな現状が描かれているので、自分には荷が重いと思ってしまうのではないでしょうか。
ただ、多くの人に勧めたいので、読んでみてください。

ルポ 超高級老人ホーム(甚野博則)2024年10月22日 21時29分24秒

ルポ 超高級老人ホーム(甚野博則)
現在、ベストセラー中の作品です。

高齢化が進んだ今、老後をどう過ごすか、多くの人が関心を持っているはずです。
老人ホームにもいろいろな形態・規模・設備などがありますが、この本では超高級な老人ホームにターゲットを絞っています。
なにしろ入居のための一時金が数億円ですから、いったいどんな人が利用できるのでしょうか?
ぼくはそんなにお金を持っていませんから、ムリ(笑)。

しかし知らない世界があると、それを知ってみたくなるのが人間の性。ぼくも興味を持って読みました。
よく取材しているし、良質なルポルタージュでした。
いい作品です。

本の内容とは関係ありませんが、この本の帯とか、Amazonの宣伝文とかは、あまりにも本の内容や言いたいことと無関係だと思います。
こうした惹句につられて本を買った人は、がっかりするのでは?
出版社にはもっと考えてほしいです。
また、帯の文などは、著者も目を通しているはずです。
どう思ったのかな?

ぼくは老後をどう過ごそうかな?
子どもには迷惑をかけたくなし、ちょっと迷いますね。

データ・ボール:アナリストは野球をどう変えたのか(広尾 晃)2024年10月09日 21時52分12秒

データ・ボール:アナリストは野球をどう変えたのか
大変興味深く読みました。
野球はデータと親和性が高いという冒頭の指摘はその通りだと思います。
メジャーリーグはデータ化がどんどん進み、日本は旧態依然です。
大谷翔平がメジャー1年目のオープン戦でまったく結果を出せなかったのに、二刀流としてメジャーで使ってもらえたのは、打率とか防御率といった古い指標に球団がとらわれなかったからです。
たとえば、打球速度。

日本の医学界も「科学的根拠に基づく医療」をやるまで、何十年もかかりました。
だから、日本のプロ野球界も時間がかかるでしょう。しかし、この本を読んでいると、非常に悲観的になります。
日本の若い選手はそういうことに気づいていて、どんどんメジャーに出て行こうと思っているのでしょう。

そういう意味では、暗い本というか、希望のない本でした。
つまらないという意味ではありませんよ。

第一部に関しては、図とか写真とか、もっと効率的に使ってほしかったかな。
ちょっと具体像が見えなくて、イメージできない部分が多々ありました。
単にぼくに知識がないだけかもしれませんけど。

人はどう悩むのか(久坂部 羊)2024年09月28日 19時39分00秒

人はどう悩むのか(久坂部 羊)
「人はどう」シリーズの第3弾です。
今回は人生の「悩み」について。
久坂部さんが高齢者の悩みについて書けるのは当然としても、子どもの悩みについても書けるのは驚きでした。
文章は当然巧みで、内容も濃く、非常に博識で、ぼくももっと勉強しなくちゃと思いました。
ナイスな1冊でした。

潜入取材、全手法 調査、記録、ファクトチェック、執筆に訴訟対策まで(横田 増生)2024年09月22日 15時50分47秒

潜入取材、全手法 調査、記録、ファクトチェック、執筆に訴訟対策まで
横田増生さんが「手の内を明かした」1冊です。
ぼくが潜入取材をするということは、まずあり得ないので、ぼくにとって直接的に役立つわけではありません。
しかしながら、どう取材して、どう書くかということは、ぼくにとっても大変参考になりました。
ぼくも本を数多く読んでいるつもりでしたが、やっぱりプロにはちょっと敵わない。
ぼくももっとがんばらないと。


そして参考になったというだけでなく、本書は本としてもめちゃおもしろい。
それは横田さんが優れた語り手だからでしょう。
あっという間に読んでしまいました。
ノンフィクション、厳冬の時代の今、この本を若い人が読んでくれて、新しい作家が誕生することを切に期待しています。
また、ライター稼業の舞台裏に興味のある人も、ぜひ、読んでください。おススメです。

一万年生きた子ども:統合失調症の母をもって(ナガノハル)2024年09月15日 23時12分15秒

一万年生きた子ども:統合失調症の母をもって(ナガノハル)
これは大変いい本でした。
筆者は現在、45歳。話は、筆者が8歳のころから始まります。
母親は、統合失調症。
8歳の筆者は、今でいうヤングケアラーとして母を助けます。
母がいる「くるった世界」と、世間の人たちがいる「ふつうの世界」の間に入って、その橋渡しをします。
それは8歳の子どもが大人になるようなもので、あるいは、母のケアのために1秒を1年として生きるような、「1万年生きた子ども」になってしまう体験でした。

この体験によって筆者は心が壊れます。
本書では、その心の内面を大変深く掘り下げて言葉にしていきます。
そして、その言葉の数々によって、統合失調症の母をケアする子どもが、どれだけ過酷な人生を歩むのかが理解できます。

深い本でした。おススメします。