コンビニ人間(村田沙耶香)2026年02月05日 20時10分27秒

コンビニ人間(村田沙耶香)
読んでなかったことに気づき、読んでみました。
芥川賞を取って、ベストセラーになり、そして驚異のロングセラーになっているのですから、こんな本はちょっとないかもしれません。
たいへんおもしろく読みました。やっぱり小説を書く人は、頭の構造が(いい意味で)違うなと思いました。

高齢者とがん-健康管理、診断・治療から心と暮らしのケアまで(山口 建)2026年02月03日 20時11分23秒

高齢者とがん-健康管理、診断・治療から心と暮らしのケアまで(山口 建)
タイトルに惹かれて、ものすごく期待して読んだんですが、つまらなかったです。
こういう本は書き方が難しくて、どの程度の知識の読者層を想定するかが問題になります。
本書では、がんについてあまり知らない人が対象になっていたと思います。
ぼくには知らない話がほとんどありませんでした。
ただ、終盤の看取りの話はよかったかな。

なぜ高齢になるとがんに罹るのか?
非常にかんたんに説明がありましたが、ぼくだったらそこを精密に書くと思いました。

どうすればよかったか? (藤野知明)2026年01月31日 23時20分51秒

どうすればよかったか? (藤野知明)
統合失調症(むかしの精神分裂病)への興味は、ぼくの医学部受験の動機になったものです。
高校生のころから、心の病に関心があり、その領域の本を読んでいました。
また、東京・江古田で開催された『精神分裂病患者の絵画による精神報告』という絵画展に出かけたこともありました。

ドキュメンタリー映画、『どうすればよかったか?』は大変話題になりました。
家族が「姉」の病気を認めず、ずっと家に置いておくのですね。
「弟」の映画監督が数十年にわたって映像記録を残したのです。
残念ながら、ぼくは映画を観る機会がありませんでしたが、監督が本を書いたというので早速読んでみました。

本は、監督が映像記録を始めるはるか前のことから書かれており、おそらく映画とは全然別の内容だと思います。
非常に内省的で、自身の心情を丁寧に表現していました。
口述筆記だと思うのですが、その文体もまた心地よかったです。

「姉」が明らかに発症したのは1983年ですから、ぼくが一般教養から医学部に上がった年です。
確かに当時は(現在と比べれば)いい薬はなかったし、現在よりもはるかに強い社会的な偏見があったでしょう。
それでも、どうすればよかったか? に対する答えは、精神科を受診すればよかったに尽きるのですが、そうかんたんに言えない難しさもあります。

この本の中に「存在しない問題は解決しない」という言葉があります。
本当にその通りだと思います。
ノンフィクションを書く人間、ドキュメンタリーを作る人間は、「問題」を可視化しているのです。
そうしない限り、解決できないから。
当たり前のことですが、これは大事な点だと思います。
いい作品でした。みなさんも読んでみてください。

松本清張の昭和(酒井信)2026年01月30日 23時23分23秒

松本清張の昭和(酒井信)
ぼくの父は昭和11年(1936年)生まれで、戦争の影響もあり貧しい環境で育っています。
おそらく最終学歴は中卒で、10歳の頃から働いていたはず。
学問を積んでいなかったのですが、読書は好きなようでした。
そんな父が読んでいた本の一つが、松本清張です。
書棚に『ゼロの焦点』や『点と線』があったことをよく覚えています。

ぼくも高校生の頃に清張の本を何冊か読みましたが、細かい内容はもう、さすがに忘れています。
松本清張の全盛期は1960年代かなと思うのですが、高校生だったぼくの印象としては、ちょっと文体がモダナイズされていないなという感じでした。ま、当たり前でしょう。

本作は、その松本清張の本格評伝ということなので、早速読んでみました。
まず、彼の生い立ち。
貧乏のどん底で悲惨を極めます。
30歳を超えても戦争に2回も取られ、高等小学校が最終学歴ですから、職場でもすごく差別されるわけです。
自分の親を含めて8人の家族の食い扶持を得なければならず、若い頃は大変苦労しています。

作家になったのは40歳から。そこからは破竹の勢いで書きまくります(実際は口述筆記)。
亡くなる寸前まで書いていますから、40年間書き続けたということです。
60〜70年代は、日本を代表する国民作家でした。

松本清張の人生を見ていると、人間の価値は学歴と関係ないということが分かりますし、若い頃の下積みは考え方一つでプラスの方向に持っていけると分かります。
40年間修行して、40年間、それを開花させ続けた人生だったかもしれません。

ぼくの父親がどこまで松本清張の生き様を知っていたのかは知りませんが、学歴のない生き方に何か共鳴するものがあったのかもしれません。
非常にクオリティーの高い傑作評伝でした。
特に、若い読者におススメします。

償い 綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件 6人の加害少年を追って(山﨑裕侍)2026年01月21日 22時05分56秒

償い 綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件 6人の加害少年を追って(山﨑裕侍)
ぼくは東京都足立区竹ノ塚の出身。
1961年生まれですから、戦争が終わって16年しか経っていません。
舗装道路がまだない時代でした。
電車で少し行ったところに綾瀬という街があります。
ぼくが中学生の頃は、「ガラが悪い」と悪評が立っていました(今は全然違うらしい)。
その綾瀬で、1989年に女子高生コンクリート詰め殺害事件が起きました。
女子高生をさらって監禁し、6人の未成年者が性的暴行を加え、40日後に殺してしまいます。
遺体をドラム缶に入れてコンクリート詰めにして遺棄したのです。大変衝撃的でした。

テレビのディレクターである筆者は、罪を犯した人間の「償い」とは何だろうかと事件から11年経った2000年から取材を開始します。
犯罪を犯した元少年たちは、本当に反省し、被害者と遺族に対して償いの気持ちを持っているのか。
これは大変難しいテーマです。
人間の心の中というのは、当人さえ分からない可能性があります。
また、思っている気持ちをどれだけ言語化できるかという当人の能力の問題もあります。

しかし筆者は、加害者、ならびにその家族に取材を続けていきます。
そこで明らかになったことは、償いの気持ちが「ある」とか「ない」とか単純なものではありません。
結局は、なぜはじめに犯罪を犯したのかという点に収斂していくのだと感じました。
そういう意味ではクリアな結論があるわけではありません。
でも人間ってそういうものだと思います。

中盤から終盤にかけて、実行犯Bの人生のすべてが明らかになっていきます。
罰とはいったいなんでしょうか? 犯罪者を刑務所に隔離して社会の治安を守ればいいのでしょうか?
罪と罰の問題が深く描かれます。

そしてこの本は、綾瀬事件のその後を描くだけでなく、報道とは何かを実に丁寧に描写しています。
報道において、立場のない立場はないわけです。
報ずる者はどういう立場に立つのか、報道される側はどういう立場に立たされるのか、そういうことが深みを持って表現されていました。

25年に及ぶ取材の記録を綴った一級品のノンフィクションでした。
大宅賞の候補に上がるんじゃないでしょうか。

超実践! 60歳から小説家になる(畠山健二, 山口恵以子)2026年01月18日 21時57分10秒

超実践! 60歳から小説家になる(畠山健二, 山口恵以子)
小説家になりたいと思って読んでみました。
印象に残ったのは、プロットよりもキャラクターが大事ということ。
キャラが立っていれば、登場人物が自然と動き出すそうです。
いや、ちょっとぼくには想像がつかない。
それから「つかみ」が大事ということ。なるほど、これは分かる気がします。
やっぱり、小説って難しいですよね。ノンフィクションの方が、書きやすいのではないでしょうか?

患者と目を合わせない医者たち(里見清一)2026年01月18日 08時28分52秒

患者と目を合わせない医者たち(里見清一)
週刊新潮に長く連載をしていて、その記事からまとめた本です。これで何冊目かな。
毎週、長文のエッセイを書けることは驚異的です。
本書の内容ですが、ぼくとは知的パワーが違いすぎて感想を書きようがありません。
ただ、ぼくが自分の医療エッセイで目指そうとしていることとは、広い意味で異なっていると思いました。
才能のある人って、この世にいるんですよねえ。圧巻でした。

町の本屋はいかにしてつぶれてきたか: 知られざる戦後書店抗争史(飯田一史)2026年01月12日 15時55分14秒

町の本屋はいかにしてつぶれてきたか: 知られざる戦後書店抗争史(飯田一史)
町の本屋さんの苦境を綴ったエッセイかなと思って読み始めました。
まったくそういう本ではなく、データを駆使して分析、論述する学術書のような作品でした。
現況を描くだけでなく、歴史も描いており、資料的な価値も十二分にある本に仕上がっていました。
町の本屋さんが戦ってきたのは、大型チェーン店やネット書店だけでなく、キヨ(オ)スクとかコンビニとか図書館とか、広い視点で戦後書店抗争史を見ており、新書でありながらヘビー級の内容でした。
誰もがおもしろい本とは思わないと感じますが、この業界に関心のある人は必読でしょう。

運転者( 喜多川泰)2026年01月11日 08時48分38秒

運転者( 喜多川泰)
小説はあまり読まないし、詳しくありません。
ですので、この作家さんも知りませんでした。
Amazonをぐるぐる見ていて、17,575個もレビューが付いていて、興味を持ちました。
ジャンルとしては何になるのかな? ヒューマンドラマの軽いファンタジーでしょうか?
おもしろくて、すぐに読んでしまいました。
一番驚いたのは言葉(表現)の豊富なことです。いや、次から次へとよく言葉が出てきます。
とても真似できません。
やっぱりぼくには小説は書けないな。そう思いました。
いい話を読みたいひとに、お勧めです。

作家で食っていく方法(今村翔吾)2026年01月09日 23時05分26秒

作家で食っていく方法(今村翔吾)
日本テレビの「バンキシャ」にときどき出演していて、話が滅法おもしろいので、この本を読んでみました。それに元々、こういう「作家になる!稼ぐ!」という本が好きというのもあるし。

今村さんが直木賞を受賞していたのは知っていましたが、こんな超売れっ子作家さんだとは知りませんでした。
毎年、億を稼ぐそうです。
事務所(会社)を構えていて、20人ものスタッフがいるそうです。
とても真似できません。
才能ありすぎです!
今、ネットで調べたら、ぼくより23歳も若いじゃないですか。
これはもう天才と言っていいでしょう。
プロットを作らないって、どういうこと??
そういう意味で、参考になりませんでした(笑)。

そんな天才はこの業界に一握りです。決して真似はしてはいけません。
専業作家になってはいけませんよ(笑)。
ぼくならこういう本を書くな。
『副業としてのアマチュア作家入門』。
いいでしょ? (笑)