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「ミステリーの書き方」(幻冬舎)を読む2011年02月01日 21時19分13秒

ミステリーの書き方
面白くて一気に読んでしまいました。
豪華な執筆陣による400ページを越える大著です。

いろいろな発見があって面白かったのですが、細かい技術論に加えて、単なる精神論も多数書かれていました。

ベストセラー作家の言うことには説得力がありますが、その分、自慢話を聞かされているようでもありました。

ミステリーとは広い分野で、「本格推理」というジャンルになると、これはほとんど「クイズ」と同じで、文学と言えないような気がします。
一方で、松本清張のような「社会派推理」があるのだけど、それならば、推理でなく単に文学を書いていれば良いような気も。

実は、僕も推理小説を書いた経験があるんです。
中学3年の夏休みの国語の宿題が、「個人の文集を作れ」というものでした。
そこで僕は「密室殺人」と「意外な犯人」の二つをテーマに、400字詰め原稿用紙に400枚の作品を書いたんです。

インクと付けペンを使って、3週間くらいで書き上げました。
終わった時には、ペンだこができました。
今でもたこが残っています。

「名もなく貧しく美しく」を観て泣く2011年02月02日 17時23分32秒

名もなく貧しく美しく
高峰峰子主演の名画です。
「名もなく貧しく美しく」という題名だけならば、聞いたことのない人はあまりいないでしょう。
しかしこれが、聾唖の夫婦の物語ということは、僕も知りませんでした。

聾唖に対し、世間は同情してくれるけど、理解はしてくれないという高峰秀子の台詞には深く肯いてしまいました。

この映画は、聾唖もテーマだし、親子の葛藤もテーマだし、労働とは何か、家族の絆とは何かと、様々なテーマが盛り込まれています。
ですが何と言っても、夫婦の愛が映画のすべてです。

小林桂樹と高峰秀子が、列車の連結部ごしに、窓を通して手話で会話するシーン。
高峰秀子の頬に涙が伝わり落ちるのと同時に、僕もはらりと落涙してしまいました。
こんなに泣いた映画はちょっとないかもしれません。

しかし映画自体の完成度ということで言うと、やや難点も無い訳でもありませんでした。
特に、クライマックスの決着の付け方は、松山善三監督の一つの思想の表れかもしれませんが、僕だったら絶対にそうはしないと強く思いました。

従って、この映画をもう一度観るということは、僕の人生の中ではきっと無いでしょう。

書斎にずっと保管しておいて、娘たちが大きくなって観てくれたら嬉しいですね。

これでは体がもたない2011年02月03日 22時23分19秒

今夜は診療を終えてから、JR千葉駅まで出かけました。
保険医講習会のためです。

もちろん、講習会は開催されて当たり前だし、保険医は講習を受けて、保険医療をきちんとやらなければいけません。

だが、2月のこの時期、巷にはインフルエンザが蔓延し、開業医は疲れ切っています。
街を歩けば、この寒さ。
講習は19時30分から始まり、2時間に及びました。
会場は決して広いとは言えず、足が伸ばせず、無理な姿勢に背中が痛くなります。

とてもじゃありませんが、体が辛い。
僕のように体が弱く、病気を抱えている人間には、まさに責め苦のような日程・内容です。

明日は大学病院でカンファレンスがありますが、体力的にとても無理。
泣く泣く欠席することにしましょう。
明日は休診にしたいくらいです。
本当に疲れた。

僕はね、疲れると、夜、眠れなくなるんです。
だからよけい疲れる。
これでは体がもちません。

「逮捕されるまで」(幻冬舎)市橋 達也2011年02月04日 21時05分11秒

「逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録 」 市橋 達也
Amazonのレビューを読むと、この本の評判が非常に悪いことを知りました。
殺人を犯した人間(裁判はこれから)が、本を書くことのモラルの問題のようです。
そして幻冬舎の、出版社としてのモラルも問われているようです。

ですが、僕は殺人者にも本を書く権利はあると思います。
この本は、被害者を再度冒涜するような内容にはなっていません。
市橋容疑者が、本の中で「裁判で自分が有利になることしか書いていない」のは当たり前です。

だって裁判ってそういうものでしょ?
弁護士をつけて、一生懸命、自分の罪が軽くなるように弁護する訳ですよね?

幻冬舎が金儲け目当てだと批判する声も多いようですが、僕はモラルを逸脱しているとは思いません。
朝日新聞だって、産経新聞だって、お金を儲けるために出版をしている訳です。
幻冬舎だって、他の出版社だって、日本という資本主義社会の中ではブルジョア出版社です。

読者は、リンチに走ってはいけません。
殺人という大罪を犯した一人の人間がどうやって、2年以上逃亡を続けたのか、ある一定以上のノンフィクションになっていると僕は思います。

こういう本が、リンゼイさんに失礼だと考える人は、買わなければいいだけの話しです。

「リクルート事件・江副浩正の真実 」(中公新書ラクレ) 江副 浩正2011年02月05日 17時44分41秒

リクルート事件・江副浩正の真実
ここに書かれていることは、刑事被告人の側から見た「真実」です。
ですから、「検察」の視点、そして「神」の視点から見れば、また違った世界があるでしょう。
だけど、この本の内容は、相当真実に近いような気がします。

本題に入る前に、この本の文章について一言。
この本が、もしゴーストライターでなく江副さんが自分で書いたのならば、江副さんは相当に文章がうまいと思います。
おそらく自分で書いたのではないでしょうか?
きちんとした文体があります。

リクルート事件と言えば、ロッキード事件と並ぶ戦後を代表する贈収賄事件というイメージがあります。
ですが、真実はそんなところには無かったのでは?
江副さんは、「政界のタニマチ」になりたかっただけのように思えます。
事件の悪質性は、ロッキードとは比べものにならないと思う。
患者に対して不要の手術をしてカネを稼ぐ医者の方が、はるかに罪が重いと思います。

ではなぜ、これだけの大事件になったのか?
それは「マスコミ」の報道姿勢にかなり行き過ぎがあったと思います。
そして「マスコミ」が「世論」を作り、「世論」が「検察」を動かす。
「検察」は拷問のような取り調べで江副さんから調書を取ります。

当時の野党である社会党にも、この事件を利用して徹底的に自民党を揺さぶろうとした政局的思惑があった。

ですが、この事件を裸にしてみると、一体何が残るか、理知的な分析が必要だと思います。

現在の小沢一郎さんは、政治家として自身の信用性を世間に証明できず、その時点で、政治家として終わっていると僕は思います。
しかし、「マスコミ」が世論調査をして、「議員を辞めるべき」という大衆の声を集めるのは、大変危険なことだと思います。
こういうリンチは、法治国家では行われるべきではありません。

厚い本ですが、面白い。
一読をお勧めします。

「ろくでなし 伝説のミスター麻雀、酒と女とカネの無頼75年」小島武夫2011年02月06日 11時11分25秒

ろくでなし
小島武夫という名前を知っている人は、このブログを読んでいる人の中にはほとんどいないでしょう。
麻雀を、いろいろな意味で生活の手段にしていた、いわば我が国の「麻雀プロ第一号」といったところです。

その小島さんの自伝が本作。
大変面白く読みました。

ですが本として、どこまで深く書くかというのは本当に難しいものです。
いっそ、漫画にしてしまえばもっと売れるだろうし、「マルコムX自伝」みたいに深く書いたら誰も買わないだろうし。

内容的には、いわゆる「タレント本」をやや上回った感じはありますが、もっと深く深く自分を書いて欲しかったと思います。
それくらい、小島武夫という人間には興味を持つことが可能です。

僕が学生の頃は、娯楽と言えば、麻雀と酒を飲むことくらい。
玉突きもやったな。
ですが今は、ゲーム、ケータイ(スマートフォン)、ネットの時代ですから、麻雀なんてできる大学生はほぼ絶滅でしょう。
それを考えると、貴重な本なんだけど、あまり売れないかもしれませんね。

『本多勝一の戦争論―「侵略」をとらえる目』2011年02月07日 20時40分47秒


本多さんのエッセイ・評論・雑文集です。
テーマは「戦争」ではなくて「侵略」。
「戦争」が悪いのではなく、「侵略」が悪いという昔からの本多さんの主張です。

数え歳で80歳。
いつまでも健筆をふるって欲しいですね。

映画「二十四の瞳」に泣く2011年02月08日 19時23分19秒

二十四の瞳
1954年のキネマ旬報第一位になった木下恵介監督の代表作です。
この時の第三位が黒澤明の「七人の侍」ですから、この映画がいかに高く評価されたか分かるでしょう。

僕は視聴する前に、この映画は教師と生徒の結びつきを描いた映画だと勝手に思い込んでいました。
確かにそういう描写は山盛りに表現されていますが、観ればすぐ分かるようにこれは反戦映画です。

原作者の壷井栄をWikipediaで調べてみると、ご主人はプロレタリア文学者だと分かりました。
つまりそういう映画ということです。

映画は、美しい小豆島の自然と、日本古来の童謡(七つの子など)が丹念にそしてくり返し表現され、日本人の琴線に触れる構成になっています。
僕も150分をほとんど泣きっぱなしで観ていました。

しかし敢えてへそ曲がりの僕から言うと、反戦を描くならば、こういった表現はぬるいと思います。
高峰秀子の何人もの教え子やご主人は戦死してしまいます。
だけど彼ら日本軍は一体、中国大陸で何をやったのでしょうか?
「戦争」はよくないことだと訴えるのは良いことだと思いますが、それ以上に「殺される民衆」「侵略される民衆」を描かないと、本当の意味での「反戦」にならないと僕は思います。
人の生き死にを「情緒」に訴えるのは、僕の個人的な好みに合わないのです。

それはさておき、高峰秀子の演技の素晴らしさ。
彼女の素晴らしさは、その「声」にあると思います。
本作で彼女は20年にわたる人生を表現しています。
メーキャップはほとんど変化がありませんが、「声」が20年の分、老化しています。
この表現力は素晴らしいと思います。

そして「名もなく貧しく美しく」で演じた聾唖の役。
耳は聴こえないが、発語はできるという設定でしたが、あの喋り方も見事でした。
難聴の人の喋り方の特徴をよくとらえていました。

ま、ちょっとだけケチをつけてしまいましたが、日本映画史に残る傑作であることには変わりはありません。
いつの日か、娘たちに鑑賞して欲しいです。

ハスラー鈴木さん2011年02月09日 21時23分50秒

ハスラー
先日、ポール・ニューマンの「ハスラー」をDVDで観ました。
特典映像が付いて、それでも値段が安かったからです。

映画については細かく書きません。
ただこれは、ポール・ニューマンの物語というよりも、彼と同棲してしまった女性の物語だったような気がします。
定職に就かない男と結婚するって、女性にとってすごく難しい生き方ですからね。

さて、僕は医学部の学生時代、富士見町の「五味鳥」という店を根城にお酒を飲んでいました。
この店と通りを一本はさんで、向かい側に玉突き屋がありました。
ゲームは「四つ玉」で、僕らはよくそのお店で玉突きをやったものです。

その玉突き屋の一番入り口側には、一回り大きなテーブルがあり、その台でのみ「スリークッション」という玉突きが行われいました。
「スリークッション」は高度な技術が必要で、僕らみたいな素人では全然玉に当てることができません。
でね、そこにプロの玉突き師がたむろしていたんです。
エース格は鈴木さんという人でした。
もちろん現金が飛び交う玉突きでした。

鈴木さんは年齢でいうと、40歳前後。
髪の毛が天然パーマでもじゃもじゃっとして、目つきの鋭い人でした。
若い頃の井上陽水にちょっと似ていました。

鈴木さんは勝負が終わると、よく五味鳥に来ていました。
座る場所はいつも決まっていて、カウンターの一番手前の端。
飲むのは焼酎のロック。
水もちょっとだけ入れていた記憶があります。

鈴木さんも僕らの常連ですから、会えば必ず挨拶していました。
しかし相手はハスラーですから、親しく飲むということは、さすがに無かったかな。
でも何度か驕ってもらったと思います。

僕が大学5年生くらいの時に、ポール・ニューマンとトム・クルーズ主演で「ハスラー2」が公開されました。
映画では、玉突き台は「ナインボール」ですから、全国的にこれが大流行になりました。
その玉突き屋さんも、「四つ玉」から「ナインボール」用に台をすべて入れ替えました。

僕は「四つ玉」が好きだったので、急に玉突きに興味を失いました。
同時に入れ替わるように、若い子たちが男女できゃっきゃっと騒ぎながら、玉突き屋を訪れるようになりました。
ま、ゲームセンター化した訳ですね。

当然のごとく鈴木さんたちハスラーは姿を消しました。
その後、五味鳥でも一度も見かけていません。
さすらいのハスラー鈴木さんはどこへ行ったのでしょうか?

昨夜は眠れず2011年02月10日 23時17分17秒

休筆宣言をしてから、しばらく経って、背中の痛みは改善傾向でした。
従ってブログも再開していました。

ところが昨夜は、右の背中に猛烈な痛みが。
数秒ごとに襲ってくるキリで刺すような鋭い痛み。
思わずうめき声が出てしまいました。

鎮痛剤を大量に飲んで、睡眠薬も服用して眠りにつきましたが、ほんとに参った。
ところが今朝からはあまり痛くありません。

何なんでしょう。
今度、神経内科の主治医に相談してみましょう。
今日のブログはこの辺で。
あまり無理はしないようにしましょう。