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名著!「2円で刑務所、5億で執行猶予 」(光文社新書) 浜井浩一2011年02月12日 16時27分20秒

「2円で刑務所、5億で執行猶予 」
「2円で刑務所、5億で執行猶予 」という本を読みました。

犯罪に関するウソ・デマ・ウワサを科学的に検証し、誤解を解いていく本です。

たとえば、日本は近年凶悪犯罪が増加しており、特に若者の犯罪が増えていると多くの人が思っています。
しかしこれは大ウソで、凶悪犯罪は減っているし、犯罪者はどんどん高齢化しています。
日本の治安の良さは世界一です。

筆者はこういう誤解を解いていきながら、なぜ、そういった間違いが世間にはびこっているのかという背景を分析しています。
僕には、この学者さんが左翼なのかどうか知りませんが、問題の根っこには、資本主義社会の歪みとそれを利用する政治家、カネを儲けようとするマスコミの汚さが透けて見えます。

そういった分析は大変鋭く、実に説得力があり、分かりやすかったと言えます。

また犯罪者をどうやって立ち直らせるかという問題も、実に教えられる点が多かった。
「罰すれば解決する」という考え方が、ある場合にはいかに逆の結果になるのかもよく分かりました。
その理由もちゃんと書かれています。

最近の日本の、刑の厳罰化を求める世論は何なんでしょうか?
凶悪犯罪は減っているのに、若者の犯罪は減っているのに、その一方で、若者の心はどんどん荒廃してしまい、犯罪者を血祭りにあげないと気が済まないような風潮がはびこっているような気がします。

先日、「逮捕されるまで」という本の書評をここのブログに書きました。
僕はまれに、ここでのブログをAmazonの書評にそのまま転載することがあります。
「逮捕されるまで」も何かの参考にと思ってAmazonに載せました。
すると、僕のレビューをキチガイ呼ばわりする人がいました。
恐ろしい国ですね、我が祖国。
つまり、ま、今の日本ってそういう社会なんです。

自分と他者を別ける。
相手には情け容赦なく、断罪する。
思いやらない。責める。詰る。
不寛容な社会。
自己責任が強調され、自業自得が強調される社会。

こういう風潮は国家主義によってうまく利用され、政治に取り込まれます。
今、一時的に民主党が政権を取っていますが、今の日本の精神構造は、自民党にとってとても好ましい状態にあると言えます。

さて、日本では毎年200万人が警察に検挙されるそうです。
ですが、その圧倒的大多数が、起訴猶予や略式起訴になり、裁判で有罪になり牢屋に入る人間はわずかに2%くらいだそうです。

尖閣諸島沖で、中国漁船が海上保安庁の船にぶつかった事件で、中国人が起訴猶予になったのは、当たり前の話です。
その程度の犯罪だったということです。

要するには、日本人は中国人に対して見下した差別感情があるので、ああいった事件に対して心底怒る訳です。
もし、日本とアメリカの間に同様の領土権の互いの主張と衝突事故があっても、日本人は怒ったりしません。
日本人はアメリカ人に劣等感を抱いていますから。

いろいろなことを考えさせられました。
本当に名著だと思います。
お勧めの一冊ですが、一つだけ苦言を。
この本のタイトルはどうにかならなかったのか?
光文社は、少しでも本をたくさん売りたいのは分かりますが、このタイトルでは筆者の主張が180°反対に解釈されてしまう危険があります。
筆者もわざわざ、本文中で、太字を用いてその点の注意を喚起しています。
だけど、そこまでするなら、もっと良いタイトルを考えるべきでした。

光文社の編集者には猛省をうながしたいと思います。