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鼠径ヘルニアの幻2007年02月16日 21時44分38秒

大学病院で小児外科医として働いていると、鼠径ヘルニアの患者さんを圧倒的に多く診ます。
小児外科の業界では、鼠径ヘルニアの発生頻度は約30人に1人と言われています。
しかし、これは本当でしょうか?クリニックで外来をやっていると、鼠径ヘルニアはほとんど見ません。
それって単に、うちのクリニックに小児外科疾患が少ないだけのこと?
いえいえ、そうではありません。
臍ヘルニアや陰嚢水腫はいくらでも見ます。それ以外にも鼠径ヘルニアより明らかに多く見られるのは、舌小帯短縮症や、何と漏斗胸です。
舌小帯短縮症は日本小児科学会が『あつものに懲りてなますを吹く』ようなコメントを学会HPに載せたためか、めっきり手術になるケースが減りました。この子たちが、将来、発語の面で悩んだり傷ついたりしたら、学会は責任をとってくれるんでしょう、きっと。舌小帯短縮症はあまりに多く見かけるので、いちいちママにそれを指摘して説明する余裕が無くなっています。健診でどの医者も指摘しないのでしょうね。
さて、鼠径ヘルニアが『日常疾患』というのは、幻なんでしょうか?まあ、がんと違って正確な発生頻度の把握は必要ないかもしれませんね。しかし、この疾患がそれほど頻度が高く無いなら、小児外科医って本当にマイナーな外科医ということになりますね。もちろん、マイナーというのは、悪い意味ではありません。誤解無く。