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ぺらぺらの雑誌2006年05月09日 20時35分04秒

ぺらぺらの日本小児外科学会雑誌、総会プログラムを開いてみると、一般演題の採用率が41%であることが分かりました。つまり、59%の演題は不採用として、学会で発表の機会が与えられなかったのです。
日本小児外科学会総会は、これまで100%に近い採用が行われてきました。実際、発表に値しないような演題は、ほとんど見たことがありません。
日本の小児外科医は過酷な条件で、朝早くから夜遅くまで休日も無く忙しく働いています。そして、仕事が終わった後で、疲れた体にむち打って過去のカルテを引っ張りだしてデータをまとめ、総会に演題を応募するのです。
その結果が、採択率41%。
こんなドラスティックなことは誰がするのでしょうか?
理事会の決定でしょうか?
会長の一存でしょうか?
秋田大学病院小児外科の先生たちの総意なのでしょうか?
特別講演は、大江健三郎氏だそうです。大江さんが60分、喋る間に一般演題が10題、発表できるのではないですか?

僕自身は高校時代、大江さんのデビュー作から「個人的な体験」まで、彼の「閉ざされた空間の中の自己」をテーマにした作品を読み続けてきましたし、もっとも青年時代に影響を受けた作家であることに間違いありません。
ぼくはお金を払ってでも、大江さんの講演会を個人的に聞きにいくかもしれませんが、小児外科学会で、会員全員が話を聞くというのは違うと思います。
会員のほぼすべての人が大江さんの文学を読んでいないと思います。

クレイマー、クレイマー2006年05月11日 12時52分58秒

今日のお昼、製薬会社のMRさんがお見えになって、ブログ毎日見てますが、よく毎日書けますねー、と感心していました。よく言われます。
いくらでも書く「ねた」はあるので、自然に言葉が沸いてきます。内覧会にやってきた毎日新聞の旧友・藤原からは、本を書けと言われました。(ちなみに彼の正体を種明かしすると、彼は第3回開高健ノンフィクション大賞を受賞した国際派新聞記者です。)
さて、昔、ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープの「クレイマー、クレイマー」という映画がありました。これは子ども親権を争う話しで原題は「クレイマー対クレイマー」なのです。。。あのー、僕ってクレーマー??ちょっと、最近、ブログの内容が怒ってると、、うちのK嬢に言われてしまいました。
あ、そんなことまったくありませんよ。僕の生き方は「人は宝」、「人と人のつながりは財産!」です。どんな人とでも、仲良くやっていきたいです。ただ、プロ同士のつきあいでは、お互いにプロとして仕事をやっていこうよ、という思いは強くあります。
僕は「プロ」に対しては、きっちりリスペクト、払いますよ〜。

年に一度の大掃除2006年05月12日 21時32分46秒

僕の同僚だった大学病院の看護師さんたちは、僕のクリニックでは掃除から一日が始まると聞いたら驚くでしょうか?
そうなんです。個人のクリニックでは、掃除のためのスタッフを雇うなんて例外的で、普通は事務スタッフと看護師スタッフ全員で掃除をするのです。もちろん、おトイレもです。
僕がスタッフを雇用する時に一番、心配したのは実はこの掃除です。掃除が嫌で就職を断られたらどうしようかと、けっこう、心配しました。
「えええ、やだ〜、うそ〜〜、ちょー、ださださ〜。」とか言われたらどうしようかと心配したのです。で、現実はというと、もちろん面接で掃除が嫌だと言った人はいませんでした。そして今、僕のクリニックは毎朝、ピカピカに磨かれています。まるで年に一度の大掃除を毎日やっているようなものです。昨日、ある患者さんが「きれいなクリニックですね。子どもがまた来たいって言ってますよ」とおっしゃっていましたが、きれいなのは、オープンしたばかりだからではないのです。こんな若い子たちが、熱心に掃除をしている姿をみると、日本ってまだまだいけてるじゃん!と思ってしまいます。
教育基本法も改正しないでいいかも!

1時間も数分も、中身は同じ!2006年05月13日 20時01分52秒

今日で開院して一週間です。僕のクリニックに来ていただいた患者さんは、僕たちのクリニックに満足しているでしょうか?人それぞれであると思いますが、僕としてはママたちのお話しはじっくり伺ったつもりです。
思いのほか、小児外科疾患が多いです。外傷や熱傷など、何人もお見えになります。小児外来は本来、「感染症とアレルギーと外科」という僕の持論は正解だったような一週間でした。1日に100人以上の患者さんを診る小児クリニックもあるとうかがっていますが、僕にはとても無理。外傷の縫合には15分以上かかりますし、腹部超音波も時間がかかります。でも、僕の役割は「小児科医」の医療にプラスして、「小児外科医」としての外傷治療や腹部超音波なので、このままで良いのです。あ、もちろん、大多数の患者さんは、感染症とアレルギーです。
僕は千葉大ウイルス学教室で医学博士号を取得してます。そうです。Vero細胞を樹立した教室です。まさか、Vero細胞を知らない小児科医はいませんよね?名門千葉大ウイルス学教室OBとして、感染症や予防接種には強い関心があります。親しい先生にも千葉大小児科感染班グループの先生が多いですし。先日は、青葉病院の石川先生に電話で医療相談をお願いしてしまいました。
今日は朝から雨でしたが、半日の診療時間に40人近い患者さんが訪れてくれました。もちろん、医院と無縁なのが一番ですが、風邪を引いた以上はクリニックに行かざるをえません。その際、僕のクリニックを選んでくれたと思うと、やはり正直言って嬉しいです。22台ある駐車場も満杯でした。患者さん、一人あたりの診察時間がたとえ短くなっても、適格にポイントをママと話し合える、それが小児外来クリニックの目標だと思います。
僕は、開業医一年生。これまでの大学でのムンテラ(ママへの病状の説明)、1回1時間を、うまく昇華させた形で数分の中に高い質の医療を目指したいです。ちょっと、大風呂敷、広げすぎたかな〜〜?

トーマス!2006年05月14日 21時44分26秒

トーマスにメールを書きました。彼とは1999年にスイスのベルンで小児肝がんの国際会議に出席した際、友達になりました。この会議は、僕の医(学)者としてのキャリアのうえで、のちのち分岐点になった大事な会議なのですが、実はその時点で僕は海外へなんと行った事がなかったのです。そこで、ヘルプを頼んだのが菱木先生です。彼はバイリンガルですので、めっちゃ、頼りになるのです。
会議が中盤となったある夜に飲み会が開催されました。大型のテーブルに座った10人くらいのメンバーは、、、よくよく見るとポーランド人やイタリア人にドイツ人。英語を母国語としている人は誰もいないのに、みんなで英語でおしゃべりをしていました。そして僕の隣りの、あまり愛想の良くないスウェーデン人がトーマスだったのです。まあ、彼は僕の英語がたいしたことがないことはすぐに分かりますから、LとRの発音の使い分けにまつわる「大人向け」の笑い話しをして、一同爆笑。菱木先生も大笑いしていましたが、僕はからかわれたのかどうかよく分かりませんでした。トーマスはシニカルに笑っていました。で、日本に帰って来たら、すぐに彼からメールが来て、小児肝がんの共同研究をやろうと。その時のメールの書き出しが、「Dear Tadashi」になっていたのには笑ってしまいました。いきなり、「タダシ!」呼ばわりかい!その後、何度もメールで研究の打ち合わせをして、小児肝がんから抽出した遺伝子をアルコールに沈殿させた状態でスウェーデンに送りました。荷札には「おもちゃ」と書きました。その後、おもちゃは立派な科学論文になりました。さらに、彼からの依頼で一流の国際ジャーナルの査読もなんどか引き受けました。トーマス、カロリンスカで元気にやっているでしょうか?

勤務医のための開業入門その22006年05月15日 20時51分58秒

僕のクリニックの電子カルテは富士通エヌコムです。画面の見やすさ、カスタマイズの良さ、スタッフのフォローの良さ、それにプラスして僕のクリニックのLANを構築してくれるなど、文句なしです。そんな電子カルテですが、今日はちょっと考えさせられることがありました。
多分これは、富士通さんだけの問題ではないことを断ったうえで、考えてみたいと思います。
僕が事務スタッフの求人広告を出した時、「要、簡単なPC操作」としました。しかし、本音は「要、複雑なPC操作」でした。最近になってこの思いは益々強くなっています。でも、PCに詳しければ電子カルテ、レセプト・コンピューター(レセコン)は使いこなせるのでしょうか?
多分、答えはNoです。Windows OSとOfficeに熟練していてもレセコンが完璧に動かせる訳ではありません。正しい操作をしている時は問題がないのですが、一度、迷路に迷い込むと復旧が至難の業なのです。今日、僕たちが迷い込んだ迷路は、患者さんたちには一切、ご迷惑をおかけすることはありませんでした。うちの事務スタッフたちが臨機応変に対応したからです。しかし、診療終了後、これを修正しようとすると、自分たちの知識ではまったく歯が立ちませんでした。Windows OSやMac OSなら直感的に操作できるのですが、電子カルテではそれが出来ないのです。
その理由は、どこのメーカーであれ、電子カルテはPC、つまりパーソナル・コンピューターのレベルを越えてしまっていること、そして、それと裏腹に、ユーザー・インターフェースにあまり力を注いでいないからではないでしょうか?
うちの若くて明るくて美人ぞろい、あ、これは関係ない、、、のスタッフたちはめきめきと力を付けていますが、これは富士通の電子カルテの力を付けているのであって、他のメーカーの機械となれば、また話しは別なんだろうと思います。
PCを触る人間には2通りあって、ひとつは、何か余分な操作をすると壊れてしまうのではないかと手が出ないタイプ。もうひとつは、すべてのメニューをいじってみないと気が済まないタイプです。もちろん、PCは何を触っても壊れる事はありませんし、後者のタイプの人はどんどん上達して行きます。しかし、今日のような迷路から出られない事を経験してしまうと、前者の感覚になりはしないかと心配します。
では答えはどこにあるのでしょうか?それは多分、電子カルテ・メーカーさんの宿題なんでしょう。まだまだ歴史の浅い業種ですからね。ただ、歴史が浅いという事はチャンスでもあります。何事にも揺籃期には、ジャイアント・ステップがあったりします。各メーカーさんは、「手持ちの道具」で電子カルテとレセコンを構築するのではなくて、新しい道具を開発する事を考えるべきだと思います。群雄割拠の電子カルテ業界ですが、システムの安定性だけではなくて、ここらあたりの克服をなし得たメーカーが勝ち残るのではないでしょうか?老舗かベンチャーか、それは誰にも分かりません。
あ、ちなみに僕は富士通さんで良かったと思っています。越部先生、おすすめですよ〜!

明日は大学2006年05月16日 21時59分23秒

明日は月に一度の大学病院。特殊外来の日です。前回からもう一ヶ月、経ったんですね。あっという間です。明日もまた、子どもたちからエネルギーをもらいましょう。この結末は、また報告しますね。
ところで世の中には恐ろしい誤解をする人がいるので、はっきり書いておきますが、昨日のブログはもちろん、富士通を批判したものではありません。僕がもう一度、電子カルテ選びをするなら、やはり富士通を選択します。
電子カルテが抱える未解決の部分はどのメーカーにもあるはずです。かつて、スティーブ・ジョブスが作ったパーソナル・コンピューターには、従来に無かった新しい「発明」がたくさん盛り込まれていました。少しオーバーに言えば、PCはこれ以上進歩していません。WindowsはMacの単なる真似です。コンピューターの世界でも第二の「革新」がそろそろあっても良いのではないでしょうか?僕の主旨はそんなところです。

ロサンゼルスでANR2006年05月17日 06時56分56秒

おっと、今日からロサンゼルスでANR (Advances in Neuroblastoma Research) ではないですか!?神経芽腫の研究を行っている基礎と臨床の医者・学者が集まって最先端の研究成果を披露し合う2年に1回のビッグ・イベントです。このミーティングで口頭発表を出来るのは、一部のごく限られた研究のみなのです。そして千葉大からは、、僕の仕事を引き継いでくれた武之内史子先生が見事、口頭発表の機会を得ました。
あ、彼女からメールが来ています。何々、、、「緊張のあまり血便、出るかも」。。。あのー、嫁入り前の可愛い女医さんがこんなこと言わないほうが良いと思いますが。
まあ、いずれにしてもその気持ちは分かります。国際学会の緊張感は並大抵ではありません。アメリカ人だって発表の直前にベータ・ブロッカーを飲んで動悸を鎮めると言いますからね。でもね、、、また、この緊張感が良いんですよ。史子先生、この緊張感をたっぷり堪能して下さい。そして、友達をたくさん、作って来て下さいね!

これでも自主規制!2006年05月17日 20時33分59秒

一ヶ月ぶりの大学病院でした。4時間で12人のお子さんを診ました。1人あたり20分です。この子たちは非常に過酷な治療を受けた「卒業生」たちです。これから何がこの子たちを待ち受けているか、僕の外来でじっくりと時間をかけて診察したいと思っています。そういう意味では、大学を退職することによって、こうした特殊外来を持てた事は、むしろ良かったかもしれません。この子らにとってもそうですし、この子らから得られた知見は、「次の」子どもたちの治療の参考になるはずです。
さて、病棟に上がっていくと、看護師さんたちが嬉しそうに僕に声をかけてくれます。ブログ、毎日読んでますよと何人かから言われました。確かにこのHPのカウンターも毎日100ずつ増えています。毎日最低1回書いているブログのおかげでしょう。ネタはいくらでもあります。何でも自由に思った事をそのまま書いているように、みなさん思われるかも知れませんが、そんなことはありません。これでも自主規制してるんですよ。
先日はレントゲン・メーカーのことを書きましたが、あれは書けるだけまだましです。あのメーカーの器械そのものと営業の人に対しては全面的に信頼してます。開業にあたっては本当にたくさんの人に会いましたが、あまりのひどさにブログに書けない話しもあります。
千葉大学に19年もいれば、いろいろなことがあります。千葉大学の小児外科は日本一と今でも確信していますが、小児外科以外のことに関しては、ひとこと言いたい事があります。
まあ、それは武士の情け。書かないでおきましょう。

1800のうちの2つの手術2006年05月18日 21時32分20秒

一昨日、大学病院へ特殊外来へ伺った際、病棟の子どもにも会ってきました。現在も闘病しているK君です。彼の手術は今から5年ほど前でしょうか?僕が執刀させて頂きました。
僕が大学を退職する際の送別会で、忘れられない2つの手術を述べました。1800分の2です。そのうちのひとつがK君の手術です。彼の手術は術中照射と呼ばれる放射線治療を併用する大手術で、これは高橋名誉教授と大沼現教授の名コンビが生み出した小児外科分野ではおそらく世界で最初の手術方法です。研修医時代に、この二人の先生の手術をお手伝いしながら、なんてすごい手術だろう、いつの日か、自分にもこんな手術が出来るようになる日が来るのだろうかと何度も思ったものです。ですから、自分が執刀医になり、数十人のスタッフ(ほんとにこれだけの人たちが必要なんですよ!)を陣頭指揮した時の感激は一生、忘れられないでしょう。そして手術の出来も申し分、無かったと思っています。
もうひとつの手術は何だと思いますか?初手術?いえ、違います。初めての手術はなぜかほとんど憶えていません。正解は、高橋前教授の最終手術です。高橋先生が定年退職を控え、最終手術としてヒルシュスプルング病根治術を行うことになりました。前立ち(第一助手)を誰が務めるかという話しになった時、僕は当然、大沼(当時)助教授がその役だと思っていたのですが、大沼先生は、若い外科医がやれとおっしゃいました。そこで僕がハーイと手を挙げた訳です。
これは本当に名誉な事でした。高橋教授と言えば、泣く子も黙る、黙った子もまた泣き出す「外科医」でした。僕たちからすると絶対的な存在でした。その高橋先生の最終手術に前立ちを務める。これって、旧世代から新世代へバトンを渡してもらうような感覚でした。手術がおわり、お腹を閉じ、皮膚を縫って、高橋先生の縫った糸を僕がクーパー(はさみ)で切ります。最後の一針を切るとき、僕の手が止まりました。「あんた、何してんだあ?」「・・・・」「切れよ!」「先生、切ったら終わっちゃいますよ。」そこで高橋先生は、にかっと笑いました。僕は最後の一針を切りました。
この会話が忘れられません。