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ドクター・ショッピングのすすめ2006年05月19日 21時22分27秒

ドクター・ショッピングというと、複数の医者を渡り歩くモラルに問題のある患者さんの態度みたいなニュアンスがつきまといますが、果たしてそうでしょうか?本当に信頼できる「主治医」に出会えることができれば、ドクター・ショッピングする必要そのものがなくなります。
開業してまだ10日ほどしか経っていませんが、想像以上に他院で「こういった治療を受けている」「こんな薬を飲んでいる」といった患者さんが多いことに驚きます。僕がやることは、「あ、お母さん、それで合ってるよ。その薬を使う理由はね。。。」といった感じで話しが進みます。多分、僕の治療ってとてもオーソドックスと思います。治療の内容が同じでも、ママたちにすれば「自分の子の主治医」にふさわしい医者を見つけたいのでしょう。そういった意味では、どんどん患者さんは上手に医者を利用して、多いにドクター・ショッピングをすれば良いのです。
僕が大学時代、さんざんやってきたセカンド・オピニオン外来だって考えてみれば健全なドクター・ショッピングかもしれません。良い医者に出会おうと思うのはとても自然な考え方だと思います。
病院と診療所の連携だってもっと上手に積極的にやるべきです。僕が実践しているケースは、、患者さんの許可をとってないのであまり詳しく書けませんが、主治医が関西にいます。で、僕は毎月一回、採血と超音波検査をしてデータをファックスで主治医に送ります。主治医からは薬の量の指示が僕に来ます。
これってすごく当たり前の医療と思いませんか?患者さんが採血のため毎月、関西に行くなんて、あってはならない話しです。こういったケースでは、患者さんがドクターの間を渡り歩かないですむように、医者の側から患者さんにお膳立てをしてあげるべきです。
ただ駄目なドクター・ショッピングもあります。それは患者さん自身が主治医になってしまうケースです。これだけは厳に戒めた方がよろしいですよ。僕の医療が気に入ったママもいれば、そうでないママもいるでしょう。僕は97%は笑顔かもしれませんが、3%くらいは厳しい事を言うかも。だって、子どものためですから。どうぞ、医者を上手に利用して、自分に合ったかかりつけ医を見つけて下さい!

大学病院のための経営学入門2006年05月20日 21時59分50秒

開業した以上は当然、経営のことも考えなければいけません。今日は初めて職員の給与計算をしました。顧問の税理士さんに教わった方法です。この4月に改訂になった診療点数早見表も購入しました。営利がすべての目的ではありませんが、患者さんに質問されることもありますし、必要なことなんです。
さて、僕は月に1回大学病院に行って、小児腫瘍の専門外来を行っています。先日は4時間で12人診ました。この医療費はいくらでしょうか?再診料、6歳未満の加算、小児悪性腫瘍患者指導管理料、悪性腫瘍特異物質治療管理料、腹部超音波、血液検査、腫瘍マーカーNSE測定、、、、。ざっと、2000点くらいでしょうか。つまり、1人あたり20000円の「売り上げ」です。12人で24万円ということになります。ところでみなさん、この外来診療で僕の報酬はいくらかご存知ですか?あ、これは0なんです。僕が千葉大病院に診療しても良いですかとお伺いをたてて、許可をもらっているのです。まあ、ボランティアですからこれは当然ですね。でもね、、昔から不思議なんですが、千葉大病院では医療に要したコスト計算をなぜ医者がやらなければならないのでしょうか?普通の病院、クリニックでは、事務方が医者のカルテを見てコストを計算しますよね?ところが千葉大では会計箋に医者自身が、自分の行った医療行為をチェックして行くのです。まあ、それがルールと言われればそれまでですが、じゃあ、切り傷にイソジンを10g塗ると、どれだけコストを取れるか知ってますか?こんなことはほとんどの医者が知りません。だって、千葉大病院に就職してからそういった教育は一度も受けた事がありませんから。それでいて、病院が赤字と黒字の境目だとか、、何か根本のところで経営に関する基本的な視点が決定的に欠落しているのではないでしょうか?僕の売り上げた24万円はどこに行くのでしょうか?人ひとり雇えるのではないでしょうか?研修医の給料が30万円で、卒後10年の医員の給与が日々雇用の契約になっているうえ、研修医の給与を下回るって、一般の方にはとても信じてもらえない話しです。そうした彼ら医員が大学病院の屋台骨を実働部隊として支えているのです。つまり「搾取」ですね。
法人化された大学がどう変わるか注目してきましたし、経営の視点を取り入れるとの言葉も何度も聞きました。しかし、一生懸命に働いた者が報いられないという現実は一向に変わりません。医者とはいえ、人間にはインセンティブが必要です。患者さんからお金を搾り取って病院が肥えるための話しではありません。懸命に働く現場の医者のモラルアップのために経営の視点が必要なのです。これは最終的に患者さんにとって良質な医療をもたらすことは言うまでもありません。あ!僕が病院長になれば良かった!もう遅いか!

血便娘、帰国す!2006年05月21日 19時23分37秒

ANR (Advances in Neuroblastoma Research)が終わり、ロサンゼルスから武之内先生が、菱木先生とともに帰国しました。たった今、メールをもらいました。武之内先生の発表は(本人は謙遜していますが文面からすると)大成功だったようです。素晴らしいじゃないですか!国際学会で自分の研究成果を発表するなんて!やはり「若い」ということは「可能性」ということなのですね。本人が少々尻込みしても、上に立つスタッフの先生は若い医者を国際舞台へ後押しする義務と責任があるんだと思います。彼女の経験は一生の財産として光続けると思います。僕も思い出します。数々の国際学会。うんうん、分かります。その緊張感。武之内先生、さすがに血便は出なかったけど、お腹をこわしたとか。。。でも、お腹をこわしたのは彼女だけではなく、九州大学の先生もとメールには書かれていました。
あ。それってずばり、田尻先生ですね!わはは。

勤務医のための開業入門その32006年05月22日 22時03分17秒

一般の方にはどうでもいい話しでごめんなさい。今日のテーマはクリニックの「規模」です。クリニックを作るにあたり、どの程度の「規模」、、つまり建物の大きさや、装備の品揃え、スタッフの数をどう決めるのかはかなり悩むことだと思います。僕は以前、自分が患者として、とあるクリニックを受診した時、その狭さ、暗さ、院長先生が裸足にサンダル、、の姿を見て、これは患者の立場からちょっと勘弁!と思いました。
で、自分の開業にあたっては広く明るくスタッフも多くと、、まあ、当然思う訳ですが、そうなるとコストがめっちゃ、かかる訳です。営利にこだわるなら、もうちょっと狭くしてもうちょっと装備を少なくしてもうちょっとスタッフも減らして経営すればいい訳です。しかし、それでは当たり前の話しですが、患者さんのアメニティーが低下します。そのバランスですね、大事なのは。
最初に考えたのは、成人の診療を基本的には行わない事です。僕は、大人の内視鏡検査を10000件近くしたことがありますので、「胃腸科」とか「外科」も標榜することも可能です。外科学会の認定医だし。なんてもったいない!と言われたこともあります。しかし、そこで、成人用医療器具のコストを削り、成人用の待ち合いスペースは子ども向けのプレーコーナーにした訳です。もちろん、僕が「小児外科医」というアイデンティティーに強くこだわっている事も言うまでもありませんが。スタッフだって、そうです。ほら、よく銀行で何が何だか分からない時にお姉さんが寄って来て教えてくれますよね?うちのクリニックでは、まだ完全に機能していないかもしれませんが、「子どもと遊ぶ」を採用条件とし、その銀行のお姉さんの仕事をやってもらっています。当然、人件費がかさみます。でも、良いじゃないですか。そういうクリニックって。少しずつイメージを形にして行きたいと思っていますが、「行くだけで元気の出るクリニック」と言われるようになれば目的を達したと言えるでしょう。
開業3週目に入った今日は、患者さんは44人でした。この数字は、僕のクリニックの事業計画書でクリニックが潰れないですむ目標の数字として開業後6ヶ月後での達成を目指していたものです。今は、小児科が一年で一番ひまな時期ですから、みつわ台周辺のみなさんには、少なくとも評判は悪くないのでしょう!

やっぱり奥の深い小児科外来2006年05月23日 21時15分36秒

甘い気持ち始めた訳ではないですけど、やっぱり難しいです。小児科外来。今日は昨日よりやや患者さんが少なかったんですが、時間を大きくオーバーし、悩みながら考え込みながら一生懸命説明しながら診療をしました。
これは決して批判や皮肉ではありませんが、1日に100人以上を診察するクリニックというのは、一体どうやって患者さんに説明をしているのか、、、。ある程度は、はしょらないと、患者さんの待ち時間はどんどん伸びて行ってしまいますよね。かといって、完全予約制で患者数を制限すると、それもまた患者さんの不満になります。これは本当に難しいテーマですよね。一番良いのは、小児科クリニックがあっちこっちにある事なのですが。僕の感覚では、1日60人くらいが限度のような気がします。それ以上は集中力を維持するのが至難の業では、、と思ってしまいます。実際にそういった状況になれば、医者たるもの、集中力が湧いて来るんでしょうか?まあ、手術をやってる時は、連続8時間でも12時間でも集中力は切れませんけど。
悩んでるのは、患者さんも同じなんだなあと思います。今日も、何人もの患者さんが「セカンドオピニオン」的に僕のクリニックを訪れました。けっこう遠くからの方もいました。で、前医の治療はと言うと、別に「特殊」ではなくほとんどがオーソドックスなんです。結局、ママたちを納得させる説明がちょっと欠けているんでしょうか?僕の方も、前医を経由してから来てると分かると、つい説明が長くなりますので、一見、僕の方が良い医者に見えるかもしれません。しかし、逆のことが僕の知らないところで起こっている可能性だって多いにあります。どこかで、「うんうん、松永先生の処方は間違っていないよ。でも、ちょっと説明が足りないねえ」、なーんて言われているかも。
この業界で昔から良く言われるのが、「後医は名医」。だから大病院の医者が名医に見える訳です。
僕が大学在職中、ある小児外科の患者のママが、子どもの咳が続いていて開業医の治療でいつまでも治らない、で、大学の小児科を受診したらマイコプラズマ肺炎で抗生剤ですぐに治った、その前医の開業医の診察は正しかったのか?と聞いてきたことがあります。
はっきり言ってムッとしました。
クリニックと大学病院では役割が違うのです。医者の中身は同じなんです。こういったことを一般の人にもぜひ、理解して欲しいのですが、、、まあ、それは無茶な注文でしょうかね。

「貧困なる精神T集」2006年05月24日 20時09分14秒

元朝日新聞のスター記者、本多勝一さんの名前を知ってる大学生ってどのくらいいるでしょうか?
僕が大学生だった20数年前は、大学生協の本屋さんに本多さんの著作が山積みになっていました。本多さんの著作を読み始めて20数年。もう100冊くらいは読んだでしょうか?僕の青年期のものの考え方に決定的な影響を与えたジャーナリストです。本多さんの名前をGoogleで検索してみてください。たくさん、出てきます。しかし、彼を誉める内容より「売国奴」呼ばわりするようなコンテンツが多い事に気がつくはずです。そうです。「朝日」=「左翼」みたいにとらえられた時期が長く続きましたが、それは本多さんの記事に負うところが多かったのです。現在の本多さんはとっくに朝日を定年退職し、「週間金曜日」の編集委員を務めています。「週間金曜日」を応援したい気持ちはやまやまなので、僕のリンク集にリンクしてあるくらいです。しかし、この硬派週刊誌の最大の欠点は、、、言って良いのかな?、、あまり面白くない事です。このあたりは、本多さんも、ご自身が編集長だった時にすこし考えたことだったのではないでしょうか。で、今回、本多さんの記事やコラムを集めた「貧困なる精神」シリーズが「T集」として、株式会社・金曜日から出版されました。これまで、すずさわ書店、毎日新聞社、朝日新聞社などから出版されて来た本多さんの「文集」の
最新版です。サブタイトルは、『「日本百名山」と日本人』です。うーん、しかし、残念ながら往年の文章のパワーはないかなあと、思ってしまいました。でも、本多さんも75歳なんですね。それを考えれば超人的な筆力と思います。
いつまでも健筆をふるって頂きたいですね。あ、ちなみに本多さんは大学を2回卒業してますが、最初は我が千葉大学の薬学部だったんですよ。

福岡の子どもは幸せ2006年05月24日 21時14分49秒

今夜はもう一つ書きます。ロサンゼルスで下痢をしたのは田尻先生ではないとか。。失礼しました。僕は日本中に学会友達がいますが、一緒にお酒を飲む仲というと、さすがにそう多くはありません。その中の一人が九州大学小児外科の田尻先生です。僕の多くの学会友達は、最初の出会いや話し始めたきっかけなどをたいていクリアに憶えているのですが、なぜか田尻先生に関しては全く記憶がありません。ある日、気がついたら僕の隣りで旧知の仲のようにお酒を飲んでいたという感じです。福岡には本当によく行きました。先代の教授の水田先生が何度も学会を開催なされたためです。食事が美味しくていつも楽しい学会旅行でした。
田尻先生がいる福岡の子どもたちは幸せですよ〜。

ホームグランドでちょっと一杯2006年05月25日 23時15分28秒

診療時間が終わりに近づいたころ、大学病院から電話がありました。菱木先生がこれからみんなで飲みに行くので、僕にもお誘いがかかったのです。久しぶりにみんなと一杯やりたかったし、何よりもロサンゼルスで活躍した武之内先生が来るというので、二つ返事で参加しました。
K嬢の運転でN嬢も一緒に千葉市のパルコ方面へ出発です。夜のネオンを見るなんて本当に久しぶりです。菱木先生に武之内先生、そして僕のジャズの師匠の照井先生、仲の良い仲間たちばかりです。そして、現在、小児外科に研修に来ている若い外科医や学生たちも来ていました。彼らの顔は憶えています。授業や実習で教えたはずです。
武之内先生の発表はやはり、本当に素晴らしかったようです。発表後、いろいろな人に祝福されたようですね。英語自体も良かったし、研究内容もとても高く評価されたようです。何か、自分の娘が誉められたようで、本当に誇らしい気持ちになりました。後輩の彼女に感謝しないといけないですね。
なんだか、ホームグランドで、自分の居場所で一杯やったような気がしました。このままずっと、その場に居ても良いような気になりました。仲間と一緒の時間は心地良く心穏やかになるひとときです。深酒しないで帰宅しましたが、K嬢もN嬢も楽しい時間を過ごしたようでした。
結局、人の幸せって、過去の楽しい思い出の蓄積と未来に楽しい思いを馳せること、これを糧に生きて行くことなんだなあと思います。夢を食べて生きていく生き物なんですね。今夜は良い夢を見て眠ることにします。明日からまたみつわ台周辺の子どもたちのために頑張ります!

「死」は存在しない2006年05月26日 21時13分42秒

今日はお昼にお客様がありました。僕のホームページの「小児がんに挑む」に出て来るりかちゃんのママです。りかちゃんママとは、りかちゃんの闘病中に延々といろいろな話しをしましたが、闘病が終わった今も、不思議な事に話すことが山ほどあります。で、今日はちょっと硬い話しを。
小児医療を志す先生たちの動機は様々ですが、そのうちのひとつに「人間の死を見たくない」というのがあります。たしかに、子どもの医療の世界で「死」に面する事は非常にまれです。成人の医療をやっていれば、大人の医療は常に「寿命」と切り離せないし、一般外科医の対象疾患はほとんどが癌ですから、「死」は日常と言っても過言ではありません。でも、子どもは違うんですね。基本的に子どもは命を失うことはありません。しかし、例外があります。小児がんの世界です。僕の仲間の小児外科医でも、小児がんだけは専門にしたくないという先生が何人もいます。そうです、たしかにそれくらい、子どもの「死」とは強烈なものなのです。
そういった場面に直面すると、これまでの人生観が根底からひっくり返されるくらいの衝撃を受けます。僕は小児がんを専門として、これまでさんざん、「その場」に立ち会ってきました。
小児がんのお子さんの治療が行き詰まりになり、最期の時が近づくと、僕は必ず、ママやパパに「死」というものは存在しないということを説明します。もちろん、「死」という単語は絶対に使いませんが。ここで、僕の言わんとする事を表現するのはかなり困難です。ママやパパを前にして何十時間も話して分かってもらう内容ですから。肉体が滅んでも魂は生延びる、、、なんて単純な話しではもちろん、ありません。
大胆に言えば、子どもが居なくなって、その子と会話ができず、体に触れる事もできなくなり、、、でも、その子は家族とともにいるんです。子どもを失った瞬間から、その子を含めた家族全員が、やはり今までと同じように生きて行くんです。「死」という何かの「終わり」なんて存在しないんです。つまり、その瞬間から未来永劫、その子は生き続けるんです。
小児がんという1万人に1人のまれな病気を専門とする医者なんて、社会的にはあまり「価値」がないかもしれません。でも、誰かがやらなければいけないんですね。もっとも僕は義務感でやって来た訳ではありません。最初から、そこにそういう道があったんです。
今日はちょっと、話しがオカルト的だったでしょうか。でも、こういうブログを読んで、小児がんと闘っているご家族が、1万人に1人、いるということを多くの人に知ってもらいたいです。だって、小児がんの最大の敵は「無知」ですから。

3週間が過ぎました!2006年05月27日 22時59分36秒

開院して3週間が過ぎました。
「一日あたり」の患者さんは、1週目が約20人、2週目が約30人、3週目が約40人というところでしょうか。繰り返しお見えになってくれる患者さんがいるということは、僕たちのクリニックを気に入ってくれてるのかな、、と思い正直嬉しくなります。昨日の僕のブログは、、みなさん、「どん引き」でしたでしょうか?いつもああいったことを考えてる訳ではありませんが、ああした経験をたくさんしてしまった僕という人間は「普通の人生」は送れないと思っています。自分の経験した事を世の中に伝えて行かなければいけないのだと勝手に思っています。しかし、普段は、鼻水と咳と格闘をしています!「鼻水と咳」、本当に奥が深いですねえ。耳鼻咽喉科の知識がとても重要です。でも僕には強力な助っ人が。ゆざ耳鼻咽喉科医院の遊座先生です。稲毛周辺では大変、人気のある「行列のできる医院」です。彼とは大学でともにラグビーを戦った戦友ですから何でも遠慮なく聞けるのです。また彼も、秘伝の中の秘伝を惜しげも無く僕に教えてくれます。「耳鼻科」+「小児科」の診療がみつわ台でできると良いですね!これが当面の目標です。おっと、もちろん、「小児外科」も。今日も外科処置をしました。
持つべきものは友達です!。