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1800のうちの2つの手術2006年05月18日 21時32分20秒

一昨日、大学病院へ特殊外来へ伺った際、病棟の子どもにも会ってきました。現在も闘病しているK君です。彼の手術は今から5年ほど前でしょうか?僕が執刀させて頂きました。
僕が大学を退職する際の送別会で、忘れられない2つの手術を述べました。1800分の2です。そのうちのひとつがK君の手術です。彼の手術は術中照射と呼ばれる放射線治療を併用する大手術で、これは高橋名誉教授と大沼現教授の名コンビが生み出した小児外科分野ではおそらく世界で最初の手術方法です。研修医時代に、この二人の先生の手術をお手伝いしながら、なんてすごい手術だろう、いつの日か、自分にもこんな手術が出来るようになる日が来るのだろうかと何度も思ったものです。ですから、自分が執刀医になり、数十人のスタッフ(ほんとにこれだけの人たちが必要なんですよ!)を陣頭指揮した時の感激は一生、忘れられないでしょう。そして手術の出来も申し分、無かったと思っています。
もうひとつの手術は何だと思いますか?初手術?いえ、違います。初めての手術はなぜかほとんど憶えていません。正解は、高橋前教授の最終手術です。高橋先生が定年退職を控え、最終手術としてヒルシュスプルング病根治術を行うことになりました。前立ち(第一助手)を誰が務めるかという話しになった時、僕は当然、大沼(当時)助教授がその役だと思っていたのですが、大沼先生は、若い外科医がやれとおっしゃいました。そこで僕がハーイと手を挙げた訳です。
これは本当に名誉な事でした。高橋教授と言えば、泣く子も黙る、黙った子もまた泣き出す「外科医」でした。僕たちからすると絶対的な存在でした。その高橋先生の最終手術に前立ちを務める。これって、旧世代から新世代へバトンを渡してもらうような感覚でした。手術がおわり、お腹を閉じ、皮膚を縫って、高橋先生の縫った糸を僕がクーパー(はさみ)で切ります。最後の一針を切るとき、僕の手が止まりました。「あんた、何してんだあ?」「・・・・」「切れよ!」「先生、切ったら終わっちゃいますよ。」そこで高橋先生は、にかっと笑いました。僕は最後の一針を切りました。
この会話が忘れられません。

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