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本のプレゼントのお知らせ2021年09月03日 21時17分25秒

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20210902-OYTET50004/

本のプレゼントのお知らせです。ヨミドクター編集長の梅崎さんが書いた『自閉症の息子をめぐる大変だけどフツーの日々』です。ぜひ、応募してみてください。

開業医をやりながら作家もやってみた⑩2021年09月05日 14時54分16秒

m3.com 連載、『開業医をやりながら作家もやってみた』。
第10回が掲載されました。

今回は、小児外科医であるぼくが、何という名称のクリニックにするか悩んだ話です。看板に「小児外科」を掲げたことで、外傷や怪我の子がけっこう来てしまいました。予想はしていましたが、これがなかなか大変です。
よかったら読んでみてください。

https://www.m3.com/news/iryoishin/959292

千葉大学医学部探訪記2021年09月10日 17時01分41秒

千葉大医学部
解離性脳動脈瘤を発症して19年です。
今日は午前で診療を終了にして大学病院へ行ってきました。
症状は安定していますので、今日は主治医の脳外科の先生に種々の薬を処方していただき、少し雑談をして診察は終わりました。
さて、時間があるな・・・どうしよう?
大学病院の隣には立派な医学部棟が立っています。完成したばかりですね。
せっかくだから、小児外科に行ってみよう!
たしか、9階だったはず。エレベーターで上がっていくものの、案内図がなくてどこが小児外科か分からない。
ウロウロ歩いていると、これじゃ不審者と間違えられそう。
退散しようと思って下に降りると、見取り図を発見。
小児外科は8階でした。
もう一度、上に上がって廊下を進むと、ありました!小児外科。
しかし医局も教授室も電気が消えています。
研究室で誰かが実験中でしたが、ぼくのことは知らない若い人でしょう。
また今度来ましょう。
そうそう、分子ウイルスは10階。行ってみよう!
教授室とそれに並んでいる秘書さんの部屋を覗くと、いました。
白澤教授と数年ぶりに会いました。
ぼくの青春のすべてを注ぎ込んだ分子ウイルス学教室。
明るく、超近代的なビルの一画に引っ越しましたが、うーん、ぼくは昔の医学部の方がよかったな。
天井が異様に高くて、演習室は異常に広くて。
あの部屋でみんなでワイワイガヤガヤとサイエンスの話をするのは本当に楽しかった。
今度の研究棟もカッコいいんですけど、ある意味で「フツー」かなと思いました。
白澤先生は今年で定年退官なんだそうです。ああ、やっぱりそうですか。年齢がぼくより5つ上ですから、そろそろと思っていました。
考えてみれば二人で一緒に写真を撮ったことはなかった。では記念にパチリ。
今日は医学部を探検して本当によかった。
帰りは玄関の場所が分からなくて迷子になったけど。

更年期障害だと思ってたら重病だった話(村井 理子)2021年09月11日 21時43分50秒

更年期障害だと思ってたら重病だった話
村井さんの新作です。夕方から読み始めて、夜に読み終えました。
大変深刻な内容なんですが、そこはエッセイの名人である村井さんが軽やかに書きます。
もちろん、苦しいこと、つらいことの記述もたくさんありますが、読者が読んでいてしんどくならない書き方をしているのはさすがと思いました。
闘病記で大事なことは、病状をどれだけ正確に描けるか、そして自分の心をどこまで深掘りできるかという二点にあります。
(このことはいつも書評で書いている)
初回の保存療法が終わって自宅に戻ったときのつらさが、心不全患者の姿をリアルに表現しているなと思いました。
それから、術後の心嚢ドレーンの痛みと違和感ですね。あそこもリアルでした。

ぼくがこの本で一番よかったと思ったのは、実は後書き(のような総括)の部分です。
病を経て、村井さんはライフスタイルを変えます。コンパクトライフ、シンプルライフに変えていきます。お酒も減らしました。
まさに生き返った、生きなおしたという感じでとてもよかったです。
内澤旬子さんの『身体のいいなり』をなぜか思い出してしまいました。
これからもニューライフを、無理せずに堪能してくださいね。

蛇足を少々。初めの方に、「闘争か逃走」に関するアドレナリンの例えが出てきますが、あれはちょっと医学的に正しくありません。重版のときに筆を入れた方がいいのではないと思いました。
実は、ぼくも闘病記を書きたいと中央公論の編集者に相談したことがあります。しかし、闘病記は売れないと言われて却下されたことがあります。1年くらい前かな。
村井さんが書けたのは、内容はもちろん、作家としての力量が中公に高く評価されているのでしょう。
ま、ぼくもいずれ書きます。中央公論以外で。

いずれにしても、村井さんらしい、いい文章で心に残る一作になっていました。
おススメします。

海をあげる(上間 陽子)2021年09月12日 22時27分45秒

海をあげる
大変評判がよく、帯にもたくさんの作家さんたちが賛辞の言葉を贈っているので、ぼくがこれ以上褒めなくてもいいでしょう。
すでに賞もいくつも取っているし。
この本はエッセイ集です。
ですから一つひとつの話には関連性がないのは当たり前です。
だけど、エッセイ集って全体のパッケージングというかメインテーマがあってしかるべきではないでしょうか?
途中に、『裸足で逃げる』で書いたような若者たちが風俗業で働いている状況の記載がありますが、これはエッセイと言えるのでしょうか?
これはさすがにルポルタージュではないでしょうか?
エッセイ集の巻末に科研費の一覧を示す作品など初めて見ました。
最初と最後の章は書き下ろしだそうですが、そこだけ全体から浮き上がっています。
要は、一つひとつの章はいい内容なんですが、全体としての出来上がり、つまり本の完成度としてはどうなのかと疑問が残りました。
書き下ろしの文章を読めば、非常にクオリティーの高いエッセイを書く人だと思いますので、こうしたweb記事のまとめてではなく、「沖縄の基地問題」に特化して1冊エッセイを書けば、ものすごくいい作品ができるんじゃないでしょうか?
そこに娘さんの成長を挟み込んでいけば、深みも出ると思います。
もっとも筆者は大学の教授先生なので、そんな暇はないかもしれませんが。

開業医をやりながら作家もやってみた112021年09月19日 10時35分55秒

m3.com 連載『開業医をしながら作家もやってみた』。第11回が掲載されました。小児科医と耳鼻科医の微妙な関係についてです。よかったらご覧になってください。
https://www.m3.com/news/iryoishin/963539

エーゲ 永遠回帰の海(立花 隆, 須田慎太郎)2021年09月21日 22時42分08秒

エーゲ 永遠回帰の海
立花さんが43歳のときに、エーゲ海をまたにかけて、40日、8000キロをレンタカーと船で巡った旅の記録です。
この本を世に出すまで20年以上かかったそうです。
立花さんは100冊以上の本を書いたと言われていますが、この本が一番のお気に入りだそうです。
旅をしながら思索を深め、宗教と歴史と哲学に思いを馳せます。
写真も一級品だし、さすがの完成度だと思います。
本人も後書きで書いていますが、この本をまとめるのはかなり大変だったらしく、緑慎也さんの編集の力が大きく貢献したようです。
緑さんにとっても貴重な1冊ではないでしょうか?

立花さんと言えば、『田中角栄研究』における「調査報道」と言われがちですが、本当はこういう本が作りたかったのでしょう。
また、「知の巨人」と言われるようになったのは、1990年頃に『脳死』『精神と物質』『臨死体験』を書いたからではないかな。
ぼくにとって立花さんは「サイエンスの人」です。

この本、おススメです。

人新世の「資本論」(斎藤 幸平)2021年09月22日 00時23分48秒

人新世の「資本論」
今更ながら・・・という感じですが読んでみました。
人新世(ひとしんせい)とは、人類が地球を破壊し尽くす時代のことです。
経済成長と環境保護は両立できず、これからは脱成長に向かっていかないと地球は滅亡するという主張です。
つまり資本主義ではダメということ。そこでマルクスなのです。
筆者の主張は大変よく分かり、勉強になりましたが、本としてはあまり面白くありませんでした。
これが30万部以上売れているというのは、驚きです。
こういうハードな本でもベストセラーになるというのは素晴らしいと思います。
なおかつ、退屈な本でも売れるというのは素晴らしいなと思いました。
筆者は1987年生まれ。ぼくが医者になった年だ。
うーん。これは唸るしかありませんね。
資本主義社会の将来に不安がある人にオススメです。

知的文章術入門(黒木 登志夫)2021年09月22日 23時45分51秒

知的文章術入門
黒木先生には、日本癌学会の発表のときに座長をやって頂いたことがあります。
それはそうとして、先生の書く本はすべて面白く、今回も期待を胸に読みました。
先生は以前に中公新書から『知的文章とプレゼンテーション』という本を出しています。
その本と重複もあり、前著のバージョンアップ版という印象でした。
ただ、英語に関する解説は前著をはるかに凌いでいると感じました。

本書の出だしは「知的文章」の書き方です。先生は本多勝一の本を引用していますが、改めて本多さんの偉大さがわかります。
分かりやすい日本語・・・それは本多さんによって『日本語の作文技術』で完全に語り尽くされたと言えます。
この本を凌ぐ本は出てこないのではないでしょうか。

プレゼンテーションに関しては、「パワーポイントは自分で作れ!」というセリフがよかったですね。医学部の教授に聞かせてやりたいです(笑)。

日本人(研究者・企業人)が英語とどう付き合っていくのかは本当に難しい問題です。
ぼくも拙著『どんじり医』で書きましたが、英語には本当に苦労しました。
現在、m3.comに連載中のエッセイにも近いうちに、留学(に行けなかった)の話を書く予定です。
ぼくの恩師の東大の元小児外科教授先生は、ぼくより10歳以上年上ですが、現在でも英語で雑誌や本を読んでいます。
ぼくも英語を読む習慣を続ければよかったと今になって思いますが、開業医になったときは忙しくてその余裕はありませんでした。
その代わりと言ってはなんですが、本を書くことで日本語を磨いています。

黒木先生はぼくより25歳も年上。今年で85歳でしょう。その年齢でこういう本を作ることができるのは驚異的なことです。
ぼくには無理だな。
若い頃に勉強する習慣がしっかりと身についていたのでしょうね。
見事な1冊です。

死はこわくない(立花 隆)2021年09月23日 23時44分03秒

死はこわくない
以前に単行本で読みましたが、文庫本になっていることを知って買い求めました。
75歳のときに書いた本ですから、やはりそれはすごいなと思います。
ただ、内容としては、書き下ろしというよりも、以前に発表された原稿をまとめたものです。
前半は立花さんの死生観や臨死体験について。
後半は、「意識」とはどこまで科学で解明されているかを語ったものです。

立花さんが臨死体験の取材に取り組んだ理由はなんでしょうか?おそらく死が怖かったからではないでしょうか?
結果として「あの世」というものはないと結論づけて、臨死体験とは脳が生み出す幻覚という考えに行き着きます。
その取材と考察を通じて、死は怖くないという境地に到達したのでしょう。

ぼくは医師としてたくさんの死を見てきましたので、詳しくは書きませんが、死が何かの終わりとは思っていません。
また、痛いものとも思っていませんし、恐怖ではありません。
ただね・・・家族にもう会えないと思うとつらいです。
子どもたちが立派に社会人として、生き方の基盤を築いてくれるまでは、死ぬことはできないなと思います。
いや、基盤を築いても、やはり会えなくなるのは淋しいかな。

ぼくも、頭がシャープで、医者として責任を持った仕事ができるのは、あと何年なのか・・・分かりませんが、それまで一生懸命生きようと思います。