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(株)貧困大国アメリカ (岩波新書) 堤 未果2013年08月18日 20時30分04秒

(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)堤 未果
まず最初の読後感として、「いったいどういう取材をしたらこういう本が書けるのだろうか?」という驚きがあります。
前著も前々著もそうでした。

アメリカという土地も人口も大きな国を描くとき、この国の本質が「貧困」「格差」「企業」にあると感じたとしても、それをどう表現するのかは大変難しいと思います。
それを一人の市民の生活を描くことを「いとぐち」にして、それが「特殊」でないこと、「普遍的・一般的」であることへ話を持っていくんですね。

もちろん膨大な資料の読み込み、データの整理、数字の解析もあると思いますが、本の全体の骨格を作っていくのはかなりの苦労だと思います。
堤さんの表現する力は相当なものだと思います。

さて、内容は・・・。
これはもう読んでくださいとしか言いようがありません。
「新自由主義」「グローバル化」の成れの果てとして、私たちの社会はいったいどうなってしまったんでしょうか?

「年功序列」や「終身雇用」が終わり、「派遣切り」や「リストラ(解雇)」や「ホームレス化」が珍しくない国になりました。
小泉さんも安倍さんも「小さな政府」を目指していますが、政府が小さくなれば、大きくなるのは「企業」です。
今は「資本家」という言葉は使わないかもしれませんが、「企業」そのものが(いわゆる)「資本家」の役割を果たしています。

労働者は搾取され、食い尽くされ、路上に捨てられるという訳ですね。
まるで19世紀のイギリスのようです。

だけどそうやって搾取されている貧困者が、なぜ、小泉さんや安倍さんを支持し、左方向に走らないのでしょうか?
「アラブの春」ではネット(SNS)が反政府活動の大きな原動力になりましたが、どうも日本では、そういった装置が不満分子の「ガス抜き」になっている感じがある。
日本には、中国・韓国という領土問題をめぐる「仮想敵国」がありますから、ネットの中の貧困層(搾取されている人)は、右に走り、体制を守る側についているように思えます。

だから自民党政権は、領土問題や戦争責任や靖国神社問題で、中韓とは絶対に妥協せず、ヘイトスピーチなどは取り締まらず、ネット右翼を自分たちのガーディアンとして温存しておくのではないでしょうか?

「洪水は我なきあとに来たれ」と言いたいところですが、せめて、ぼくの孫のあとくらいに来て欲しいですね。
いやいや、歴史は必ず進歩しますよ。
堤さんが描いたアメリカは、つまり世界は、必ず行き詰まり、いつか良い時代が来ると信じます。