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「声をなくして」 (文春文庫) 永沢 光雄2009年07月19日 21時56分48秒

永沢 光雄さんの「声をなくして」を読みました。

「インタビュアー・文筆家」の永沢さんは下咽頭がんで声帯を失います。
仕事も無くなり、毎日、酒とベッドの日々を繰り返しますが、そういった日常を日記風に綴っていきます。

とにかく永沢さんという人間は「破格」の人で、この本自体は文学としてとても面白いのですが、彼の感性に同調することはできません。
真似できないと言ったほうがいいのかもしれません。

諦念でしょうか?
永沢さんは「生きろ」とメッセージを送っていますが、それとは裏腹に「死」に向かって抵抗することなく進んでいったような気がします。
結局彼は47歳でその生涯を閉じますが、死因はがんの再発ではありません。
アルコールの摂取過剰による肝障害でした。

奥さんは献身的に永沢さんに尽くし、二人の愛情の深さにはとても感動します。
その奥さんは働いていなかったようですから、永沢家の経済状況は一体どうなっていたのでしょう。
読者の誰もがそれを気にすると思いますが、当人の永沢さんが、怖くてそれを妻に聞けないって、、、なんという浮世離れした感覚でしょうか?

文章にとてもチャーミングな個性があり、それはおそらく永沢さんがチャーミングな人だったからでしょう。
奥さんはそこに惚れたんでしょうね。
そういうことが伝わってくる本でした。