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石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの(清武 英利)2017年08月14日 15時40分03秒

石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの
ヒット作を連発している清武さんの作品です。
外務省の公金詐欺を追い詰める刑事の物語ですが、取材の分厚さには感嘆させられます。

ノンフィクションには大きく言うと2つあって、前に向かって書くか、後ろに向かって書くかがあります。
前者は密着取材だったり旅行記とか闘病記などを指します。
後者は評伝とか事件モノですね。ノンフィクションの華は、評伝と事件モノと佐野真一さんは言いましたが、それがすべてではないと思います。
そして後ろに向かって書く時に、2つの方法で表現が可能です。
インタビューに対する答えを並べるか、物語を再構築するかです。
清武さんは物語を作り上げつつ、所々でインタビューを挟むというユニークな方法をとっています。
ノンフィクションとは何かを論じる際、この「後ろ向きに書いて、物語で表現する」というパターンがいつもグレーゾーンとして取り上げられます。
たとえば、主人公が「苦虫を噛みつぶしたような顔をした」という文章が出てきたとします。
これは取材で、具体的にそういう言葉を聞いたのか? それとも作家さんが「創作」しているのか?
もし、創作ならば、その時点でノンフィクションとしての価値は地に落ちると思います。
そういう作品は「実録小説」と言った方がいいと思います。

ちなみに佐野さんの「東電OL殺人事件」は、事件モノでありますが、佐野さんという「私」が事件を取材する経過を書くという「前に向かった」ノンフィクションになっています。
森健さんの「祈りと経営」も、ヤマト宅急便の会長の評伝でありながら、森さんという「私」が如何に核心となるキーパーソンに会うかという「前に向かった」部分がクライマックスになっています。そうしたことをおさえておく必要があります。

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