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「複眼の映像―私と黒澤明」 (文春文庫) 橋本 忍2010年10月15日 19時33分03秒

複眼の映像
これはちょっとすごい本です。
タイトルからはどういう内容か分らないでしょう。

これは脚本家・橋本忍の自伝でもあり、黒澤明論でもあります。
だが、こんな深い黒澤論というのは読んだことがない。

ある意味、橋本さんが高い位置から黒澤さんを見下ろしているようにも見える。
だが、本当にそうだろうか?

良い映画は、良いシナリオからしかできない。
でも「用心棒」って本当にそうだろうか?
あれは三船敏郎が良いし、音楽が良い。
他の監督であそこまでの成功をおさめたか?

橋本さんに言わせれば、結局黒澤明の傑作は「羅生門」「生きる」「七人の侍」の3本ということになってしまう。
なぜならば、それはシナリオが良いから。

ま、それは認めましょう。
でもね、本当に良い映画ってくり返し見たくなるんです。
たとえば「ゴッドファーザー」。

橋本さんが脚本で野村芳太郎さん監督の映画、たとえば「砂の器」ってくり返し見たくなりますか?

やっぱり黒澤さんには技量があって、それはシナリオだけではない何か、それがあるから、黒澤映画はくり返し見たくなるんです。

とにかくこの本は大変な名著です。
僕は割りと本を大事に扱う人間ですが、どうしても気になる表現のページは角を折ってしまうんです。
この本くらい、ページを折った本は珍しいかもしれません。