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『こんな夜更けにバナナかよ 』2008年08月23日 18時27分27秒

渡辺一史さんの『こんな夜更けにバナナかよ 』を一気に読みました。
450ページを超える大著、そして、2003年の、第25回講談社ノンフィクション賞受賞作です。

気管切開をして人工呼吸器を装着している筋ジストロフィーの鹿野さんという方が、多数のボランティアに介助されながら在宅で生きていく様を綴ったノンフィクションです。

障害者を聖人君子として描くのではなく、鹿野さんの強烈なエゴを徹底的にリアルに描写しています。

「こんな夜更けにバナナかよ」というのは、鹿野さんが真夜中に急にバナナを食べたいと言って、ボランティアを辟易させる場面を言っています。
これをタイトルに持ってきたのは、読む前はどうかなと思ったのですが、読了してみると良いタイトルだと感じます。

さて、感想ですが、とにかくこの筆者の渡辺一史さんの筆力に圧倒されます。
ものすごく饒舌に鹿野さん周辺を活写しています。
これは賞を取ったのも当たり前。
もっと他にも著作があるのでしょうと思ったのですが、調べてみると、それがありません。
ちょっと不思議です。

これを読んで人生観が変わるとか障害について考え直すとか、そういうことはありませんでしたが、それは僕の仕事が小児外科医だからでしょう。
しかし文章を書くということに大いに刺激を受け、ノンフィクションの表現方法を根本から考え直しました。
鹿野さんに興味を持つという以上に、渡辺さんの実力に興味を持ちました。

読みごたえのある一冊です。
超・おすすめです。