人生最後のご馳走(青山 ゆみこ) ― 2022年02月06日 23時20分05秒
ぼくがまだ大学病院で働いていた頃。
毎年秋になると、ぼくたちは若い医学生を、小児外科に入るように一生懸命勧誘していました。
その日は、研究棟の屋上で、小児外科に興味を持つ10人弱の医学生を招いてバーベキューをしていました。
ぼくは小児外科の魅力を熱を込めて力説しました。
「大人のがんの医療は5年生存率が目安でしょ? でも小児外科は違う。生まれて0日の赤ちゃんを助けて、その子の人生を支えるから80年生存が目標なんだ」
するとそのとき、ぼくの後輩の医者がポツリと言うのです。
「でもね、先生、80年生きた人の最後の1年も大事なんですよ」
彼はふだんそういう気の利いたことを言う奴ではなかったので、ぼくは驚きました。
「せっかく学生を勧誘しているのに、そんな話をしたら台無しじゃないか」・・・そんなことを言ってみんなと笑いました。
あれから時間がたち、ぼくにも人生の終わりとは何かが次第に見えてきました。
ああ、あいつが言ったことは正解なんだなと思うようになったのです。
この本は、淀川キリスト教病院のホスピスが舞台です。患者さんには「リクエスト食」と呼ばれる、オーダーメイドの食事が出されます。
筆者の青山さんは、食をキーワードにして患者さんの人生を辿っていきます。
ああ、そうか。人って食を通して人生が語れるんだ。
ここに登場する患者さんは、もちろん誰もが無名の人、普通の市井の人たちです。だけれども、その人たちの語る話には、ものすごく奥行きがあって、読者の心に染み入るように深く広がっていきます。
人生とは何だろうとか、生きるとは何だろうとか、そういう普遍的な話へと通じていくのです。
読書には単に本を読んでよかったという時間のほかに、読み手の心を揺さぶるような時間を生み出すことがあります。
こういうふうな本にはちょっと出会えないな。
そんな時間を共にしました。
毎年秋になると、ぼくたちは若い医学生を、小児外科に入るように一生懸命勧誘していました。
その日は、研究棟の屋上で、小児外科に興味を持つ10人弱の医学生を招いてバーベキューをしていました。
ぼくは小児外科の魅力を熱を込めて力説しました。
「大人のがんの医療は5年生存率が目安でしょ? でも小児外科は違う。生まれて0日の赤ちゃんを助けて、その子の人生を支えるから80年生存が目標なんだ」
するとそのとき、ぼくの後輩の医者がポツリと言うのです。
「でもね、先生、80年生きた人の最後の1年も大事なんですよ」
彼はふだんそういう気の利いたことを言う奴ではなかったので、ぼくは驚きました。
「せっかく学生を勧誘しているのに、そんな話をしたら台無しじゃないか」・・・そんなことを言ってみんなと笑いました。
あれから時間がたち、ぼくにも人生の終わりとは何かが次第に見えてきました。
ああ、あいつが言ったことは正解なんだなと思うようになったのです。
この本は、淀川キリスト教病院のホスピスが舞台です。患者さんには「リクエスト食」と呼ばれる、オーダーメイドの食事が出されます。
筆者の青山さんは、食をキーワードにして患者さんの人生を辿っていきます。
ああ、そうか。人って食を通して人生が語れるんだ。
ここに登場する患者さんは、もちろん誰もが無名の人、普通の市井の人たちです。だけれども、その人たちの語る話には、ものすごく奥行きがあって、読者の心に染み入るように深く広がっていきます。
人生とは何だろうとか、生きるとは何だろうとか、そういう普遍的な話へと通じていくのです。
読書には単に本を読んでよかったという時間のほかに、読み手の心を揺さぶるような時間を生み出すことがあります。
こういうふうな本にはちょっと出会えないな。
そんな時間を共にしました。
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