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『透析を止めた日』(堀川惠子)2024年12月04日 08時42分58秒

『透析を止めた日』(堀川惠子)
ちょっと事情があって『透析を止めた日』を2回読みました。
2回目は精読。

読み出したら止まらないという本は、年に数冊で会うが、本の終わりが近くなって「ああ、終わらないで!」と思う本は、数年に1冊。
これはそういう本。

ぼくもいつかは、こういう本を書いてみたいな。

『運命の子 トリソミー 完全版』、発売です!2024年12月06日 00時10分57秒

『運命の子 トリソミー 完全版』、発売です!
12月6日(金)、発売です。

本作は、2013年に第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞した『運命の子 トリソミー』の文庫版です。
単行本はベストセラーにはなりませんでしたが、ロングセラーになり、数年の間隔で重版をくり返しました。
発売から10年で文庫化の企画が立ち上がり、この12月に発売の運びになりました。

文庫化にあたって、

15章 それから一年を過ぎて(文庫本のための最終章)
文庫本のためのあとがき

を書き下ろしました。
それぞれ充実した内容ですので、ここだけでも読んでいただければうれしく思います。
また、本書を応援していただければ幸甚です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

Amazonはここから。
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末期がん「おひとりさま」でも大丈夫 (長田 昭二)2024年12月08日 17時11分05秒

末期がん「おひとりさま」でも大丈夫 (文春新書) 新書 – 2024/11/20 長田 昭二 (著)
おひとりさま、だといろいろ不安ですよね。
筆者は前立腺がんのステージ4。
とてもしんどいと思うのですが、それをあまり暗くならないで書いているところがすごいと思いました。
今の時代、おひとりさまが多く、自分が亡くなったあとに、すべての処置を引き受けてくれる業者もたくさんあるようです。
かなりの仕事量になりますからね。
元気なうちから準備をしておくことが大事です。

前立腺がんは進行の遅いがんとして知られています。
日々を楽しく、少しでも充実した毎日になるといいですね。
痛みがこないことを祈っています。

週刊読書人2024年12月13日 17時51分42秒

週刊読書人
2024年の収穫。今年も書きました。

橋本求『遺伝子が語る免疫学夜話 自己を攻撃する体はなぜ生まれたか?』(晶文社)。

青山ゆみこ『元気じゃないけど、悪くない』(ミシマ社)。

横田増生『潜入取材、全手法 調査、記録、ファクトチェック、執筆に訴訟対策まで』(角川新書)。

みなさんは、どんな本がよかったですか?

書影ができました! 『看護師の正体』2024年12月13日 19時37分09秒

書影ができました! 『看護師の正体』
『看護師の正体〜医師に怒り、患者に尽くし、同僚と張り合う』(中公新書ラクレ)。

書影が完成しました! 
発売は2025年1月8日。

近日中に大宣伝しますね。

堀川惠子さんと対談する2024年12月14日 17時19分05秒

堀川惠子さんと対談する
報告が遅くなりました。
12月11日の休診日に、東京で対談を行いました。
週刊読書人の企画です。
写真は、『透析を止めた日』(講談社)を執筆した堀川惠子さん。
堀川さんと言えば、ノンフィクション界の落合博満。
講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞・大宅壮一ノンフィクション賞の3冠を受賞した唯一の作家です。

今回出版した『透析を止めた日』は強烈な作品でした。
ご主人の林新(はやし・あらた)さんは、NHKの高名プロデューサー。先天性腎疾患により、血液透析になります。
そんな林さんと堀川さんは夫婦になります。

透析を始めることは、どの患者にも可能です。
つまり入り口は開いています。
では、透析が末期に陥り、透析不能になったらどうすればいいのでしょうか?
つまり出口がないのです。

透析末期になると、透析は大変な苦痛を伴うことになります。しかし止めれば、1週間くらいで命が果てます。
進むのも、止めるのも地獄のようなものです。
では緩和ケアは?
実は、「がん」以外の患者は緩和ケア病棟に入院できないのです。
林さんは最後の6日間に、まさに地獄にような苦しみを味わいます。

なぜ、こんな不条理があるのでしょうか?
日本の医療システムはどうなっているのでしょうか?
ここから、堀川さんの取材の旅が始まります。

ノンフィクションとして最高到達点にまで行っている作品です。
数年に一度の傑作だと言っていいでしょう。
ぜひ、読んでみてください。
すべての人にお薦めします。

(対談は勢いよく進み、あっというまに1時間半を超えました。来年、週刊読書人に掲載されます)

「プロレススーパースター列伝」秘録(原田 久仁信)2024年12月19日 21時17分13秒

「プロレススーパースター列伝」秘録(原田 久仁信)
え、今から何年前?
読みましたね、「プロレススーパースター列伝」。
その舞台裏を原田さんが綴った作品です。
やっぱり梶原一騎さんとのエピソードが最高に楽しい。
また、漫画家人生のいい部分、大変な部分も垣間見れてよかったです。

よりみち部落問題 (ちくまプリマー新書) 角岡伸彦2024年12月25日 21時29分51秒

よりみち部落問題 (ちくまプリマー新書) 角岡伸彦
角岡伸彦さんの作品。
被差別部落出身者として、「これまで」と「これから」を語っていきます。
ちくまプリマー新書から出版されたのは大事ですね。
ぜひ、高校生や大学生に読んでほしいです。
さて、この本は部落問題を語っていくとともに、角岡さんがどう生きてきたかも綴っています。
半生記にもなっているわけですね。これまで角岡さんはライターとして、多くの部落出身者・関係者に取材して書いてきましたが、自分のことは、断片的にしか書いていなかったと思います。
知らない話が次々に出てきて(特に学芸員の時代)、大変興味深く読みました。

文章は例によって大変洗練されていて、ぼくが真似しようと思っても真似できないうまさです。
そして、分かりやすい文章なんですが、内容は案外高度というか、部落問題の難しい領域にまで入っていっており、平易な本ではありません。
とくに第4章の部落問題の未来を語る部分は大変にクオリティーが高く、同時に読者に考えることを求めていますので、読む方はじっくりと時間をかけることになります。

部落問題とは結局何なのか? ぼくが説明しても意味ありませんが、それはルーツに対する差別です。
ルーツは消えないので、部落問題はなくならないし、なくなるのが難しいと言えます。
だから、角岡さんはどう残るべきかを論じています。
部落問題だけでなく、すべての差別問題で最もいけないことは、「差別がない」と考えることです。

差別の本質は最終的に経済に行き着くとぼくは見ていますが、もっと簡単に言えば、差別されることのしんどさは「痛い」ということにあります。
人の足を踏んでおいて、自分は「踏んでいない」と言うのは許されないでしょう。それと同じです。
出自を問題にして差別することは、人として最も恥ずかしいことです。
ここの部分にわれわれは向き合わないといけないと思います。

この本のタイトルは「よりみち」ですが、実は部落問題に真正面から取り組んだけっこうヘビー級の作品です。
若い人がどう読むのか、大変興味があります。
みなさんもぜひ、人ごとにしないで、正面からこの問題について考えてみてください。
おススメします。

障害のある人の親がものを言うということーー医療と福祉・コロナ禍・親亡き後(児玉真美)2024年12月29日 21時48分47秒

障害のある人の親がものを言うということーー医療と福祉・コロナ禍・親亡き後
障害児(者)の親は、医療・専門職に対して、ものを言えない、あるいは、ものを言うことが困難であることを説明した本です。
なぜでしょうか?
理由は複合的でかんたんにはなかなか説明できません。

まず、個人の問題。医者の中には人の痛みがまったく分からない人がいます。
そういう医者は世代的にぼくより、20〜30歳くらい上に多いと感じています。
親が何か言ってくると、「うるさい親だ」と非常に冷淡な態度をとります。
医者に向いていない人が医者になってしまったために、こういうことが起こるのでしょう。
今の若い医者には、こういう人はかなり少ない印象があります。

医療自体に構造的な問題もあるでしょう。
パターナリズムですね。
自分は医者=何でも知っている。
あなたは患者家族=何もわかっていない。
こういう構造があります。でも、これは100%間違っているわけではありません。
やはり、医者は専門家で、長い間経験を積んでいます。
がん患者などが、民間療法に走って大金を失い、命も失ったりするのも、患者(家族)が、わかっていないという部分があるからです。
しかし障害を生きるということは、当初は、障害児(者)は、医療の中にいますが、しだいに生活の中にいるようになり、医療はそのうちの一部に過ぎなくなります。
そうすると、今度は患者(家族)の方が、医者よりプロになるのです。

ぼくが『呼吸器の子』で書いたご家族は、福祉サービスについて医者よりはるかに詳しく知っています。
ですから、患者会というのがあって、新人の家族はここから情報を得るわけです。
こういうとき、医者は頼りになりません。
ですが、そういう事実に目を瞑る医者がいることも事実で、医療のシステムは基本的に、医者が患者に与えるものという形になっています。

あとは、やっぱり日本の文化でしょう。
封建的な、あるいは儒教的な。こうしたタテの関係が日本では美徳とされますから、弱い人が強い人に何かもの申すと、それは生意気だとか、礼儀知らずとか、反発を買うわけです。

ぼくは医者としてそれほど立派な人間ではないので、正直に言ってパターナリズムの部分があります。
大学病院にいた時もそうだし、現在クリニックで診療をしていてもそうです。
患者家族の言葉に耳を傾けるけど、それを否定することもあります。
こうした医師ー患者(家族)のコミュニケーションのあり方は本当に難しいと思います。

この本を読んで思い出したのは、千葉のがんの子どもの親の会です。
ぼくを含め何人かの医師がこの会の立ち上げに関わりました。
もっとはっきり言うと、医師主導で親の会を作りました。
そして、親の会は自分たちでどんどん勉強を重ねて、目指す次元が医師の先に行ってしまいました。
当初ぼくらは、その考え方についていけなかったのですが、あとになって親たちの考え方の方が正しいと気づきました。

ですから、医者なんて医療・医学の中でしかものを考えられないし、自分の知識や経験の外に飛び出していくことが非常に下手なんです。
そういうちっぽけな世界に自分は生きているということを医者はよく自覚した方がいいと思います。

今回も児玉さんの本で勉強させていただきました。
ぼくもまだまだ勉強中といった感じです。

2024年も終わります2024年12月31日 23時28分45秒

歴史年表
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2024年も無事にクリニックを運営できて、よかったです。
また、『開業医の正体』(中公新書ラクレ)が11刷になったのも、驚きのうれしさでした。
2025年も、すこしでも子どもやその家族の役に立ちたいと願っています。

さて、千葉大医学部同窓会が、医学部135周年を記念して歴史年表を作ったそうです。
すべての講座の歴史と業績を作って、医学部の壁に掲げているそうです。
同窓会のホームページから見てみると、当然、小児外科講座の歴史と業績もありました。
そこには、ぼくの業績、「神経芽腫における予後因子としてのN-src遺伝子の同定」も記載されていました。
ま、これは当たり前です。
厚労省の高度先進医療に認められた業績ですので。

でもぼくの本当の業績はこれではありません。
後からやってくる後輩たちがぞくぞくと通っていく扉を開いたことです。
ぼくはこのことに強い自負を持っています。
小児外科講座の歴史は50年になろうとしていますが、すべての業績の中で最高のものが、これです。まちがいなく。

2025年がみなさまにとって素晴らしい1年でありますように!