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「日本語の思考法」 (中公文庫) 木下 是雄2011年11月21日 19時50分00秒

日本語の思考法 (中公文庫)  木下 是雄
「理科系の作文技術」で有名な木下さんによる評論です。

面白いことがたくさん書いてありましたが、最もインパクトがあったのは、日本とヨーロッパの地図です。

日本がすっぽりと入る地図の面積をそのまま欧州に当てはめると、その面積には10を越す国が含まれるそうです。
そしてそこでは10を越える種類の言語が使われているのです。

日本人というのは、白人を見ると英語を喋っていると勝手に思い込んでしまいますが、英語というのはあくまでも「イギリス語」に過ぎません。
欧州には様々な言語があるのです。

200年前の日本では、東北人と九州人が同じ言葉を使っていたかは大変疑問ですが、シンタックスは基本的に同じだったのでしょう。
なぜ、同じだったのか、つまり日本語とは一体いつ頃に完成、もしくは統一されたのか、ぼくには非常に興味があるのですが、ここではその話はやめましょう。

いずれにしても、日本という国は大和民族とアイヌ民族、そして東アジアから移住してきた人たちくらいしかいませんから、使われる言語は「日本語」と「アイヌ語」だけと言ってもいいでしょう。
(後者は絶滅の危機にありますが)
(東アジアの人は多くの場合、日本語を習得する)

いっぽう、欧州では、肌が白くて瞳が青でも、話す言語は多種多様。
話してみるまでは、相手がどんな言語を使うか分かったものではありません。

ですから、欧州人(移住したアメリカ人も)は、自分の意見を正面から堂々と主張します。
日本人同士の「阿吽の呼吸」というヤツは無い訳です。
こういった地理とか民族が、言語の文化を背景から決めていくわけです。

ですから、日本人にとってもっとも合理的な言語は日本語であって、それ以外の何物でもありません。
世の中には勘違いした俗人がいて、まるで「英語」が高級な言語だと思っている人がいますが、とんでもない話です。
「三単現」になぜ「s」が付くか、日本の文化や論理からはまるで理解不能です。
それはそうでしょう。
いかなる民族も、母語こそが最も合理的で論理的なのです。

日本小児外科学会の国際セッションで、日本人同士が「イギリス語」で議論をしている光景は、ぼくにはマンガに見えます。
お医者さんは、もっと「日本語を発信する力」を身につけた方がいいと思います。
医者は「理系」頭脳の頂上にあるためか、日本語の「書き」「話し」が下手な人が本当に多い。
そういう姿は非常にみっともないとぼくは常々思っているので、良い文章をたくさん読んで、良い文章が書けるようにと心がけています。