アクセスカウンター
アクセスカウンター

映画「黒部の太陽」2013年10月15日 21時54分44秒

映画「黒部の太陽」
DVDを観た。脚本がちょっと弱い。これだけの素材なのに惜しい。

月はどっちに出ている2013年08月26日 21時13分58秒

月はどっちに出ている
ちょっと空いた時間をうまく使ってDVDを観ました。
「月はどっちに出ている」。
傑作だと思います。

梁石日さんの本が「原作」という扱いになっていますが、原作とは似ても似つかないオリジナルの話です。
この映画の一番良いところは、「脚本」。話が大変よくできています。
で、なおかつ、梁石日さんが描く世界の匂いもちゃんと含んでいる。そこがまたいい。
酒場の場面で、主人公の後で酒を飲んでいた客は、梁石日さんご自身だったのでは?

日本映画って時々、強烈な傑作が生まれるんですよね。
東陽一さんの「サード」とか、大森一樹さんの「ヒポクラテスたち」とか。
「サード」などはもう一度観たいと思いつつ、見直してがっかりしたらイヤだとか思って、そのままにしてあるんですよね。
あの頃のATG映画には秀作が多かった。

「月はどっちに出ている」も忘れられない一本になりそうです。
こういうDVDは買える時に買っておかないと「絶版」になるので、未見の映画ファンはぜひどうぞ。

映画「風立ちぬ」を観る2013年07月21日 19時13分03秒

細かい事情は書きませんが、映画「風立ちぬ」を観ました。

宮崎駿さんの映画を、最初から最後まできちんと観たのはこれが初めてです。
従って本作が、宮崎映画の中でどういう位置を占めるのかぼくにはわかりません。

で、映画の感想ですが、アニメーションによる表現力の素晴らしさは見事だと思いました。
「光と影」とか「色彩」とか「動き」とか。
中には実写のフィルムと見分けがつかないくらい綺麗な「絵」がありました。

ですが大変失礼な言い方をすれば、脚本が弱いと思います。
もっと直接的に言えば、話の起伏が弱く、人間を掘り下げる深みも弱かったような。
正直なところ、監督さんの意図がちょっと分かりませんでしたね。

黒澤明監督の晩年の作品はいずれも脚本が弱い。
そんなことを連想しましたが、ぼくは若い頃の宮崎さんの映画を観ていないので、はっきりしたことは言えません。

ま、ほとんどアニメ映画を観た経験の無い僕に語る資格はないのかもしれませんが、黒澤明の映画を語るようなレベルでちょっと感想を書いてみました。
映画館は朝一番の上映でしたが結構、お客さんが入っていました。
ファンの方はぜひ自分の目で鑑賞してください。

映画「エンド・オブ・ホワイトハウス」2013年06月16日 20時08分19秒

細かい事情は書きませんが、「エンド・オブ・ホワイトハウス」という映画を観ました。

http://end-of-whitehouse.com

「エアフォース・ワン」と「ダイ・ハード」を合わせたような映画でした。
CGと分かっていても画像の表現力は迫力十分。
120分をあっと言う間に観てしまいました。

だけど後から考えてみると、ちょっと納得できない点がいくつかあり、面白いことは面白かったのですが、面白いだけで終わった映画という感じでした。

ちなみにこの映画の上映前の予告編で「ホワイトハウス・ダウン」という作品が流れていました。

http://www.whitehousedown.jp

同じモチーフですね。
これらの作品を含めて、世界規模のパニックとか人類滅亡とか、そんな感じの映画がやたら多い。
これはもしかして、CG先にありき・・・・なのでは?

ちなみに映画料金は1800円なんですが、僕が50歳を越えているために、夫婦で合わせて2000円でいいんだそうです。
座席も立派なシートで、腰もお尻も痛くならず、大変快適でした。
映画館もずいぶん変わりましたね。

「戦艦ポチョムキン」を観る2013年06月04日 21時53分00秒

先日、フランシス・ベーコンに関するブログで、「戦艦ポチョムキン」について少し触れました。
DVDを買うかどうかかなり迷っているうちに、もしや、You Tubeで観ることができるのではないかと思いつきました。
で、ありました。
全編視聴可能です。

http://www.youtube.com/watch?v=NIKYGwQz--I

今はもう無くなってしまった国、「ソ連」が作ったプロパガンダ映画ですから、120%政治色丸出しの作品です。
ところがね、これがめっちゃ面白い。
ラストまで一気に観てしまう。

オデッサの階段のシーンはやはりすごいですよ。
あんなシークエンスをよく発明したなと感嘆します。
デ・パルマの階段のシーンは、「赤ちゃんの危険」と「犯人逮捕」を天秤にかける実にうまい構成に昇華されており、彼の才能も本当にすごいと思います。

ま、典型的な宣伝映画なのですが、映画そのものに興味がある人は絶対に観なければいけない一本だと思います。
ただね、いくらソ連のプロパガンダと言っても、アメリカだって自国を美化する映画ばかりをいまだに作り続けている訳ですよね。
そういう意味では同じような物です。
1925年(大正14年)の映画とは言え、労働者が虫けらのように扱われ、上官は美味い飯をたらふく喰っているという真実は、今日的に見ても変わりありません。
アベノミクスで金持ちが益々金持ちに成り、庶民は物価高に苦しむというのが資本主義の真髄です。
だけど、内閣支持率は70%。世相が荒むと、国民はファシストを待望するという構図があからさまに出ています。

そんなことも含めて、「戦艦ポチョムキン、ご覧になってはどうでしょうか?

小津安二郎の目 「晩春」2013年04月07日 23時13分22秒

原節子
久しぶりに映画(DVD)を観ました。
観るべきDVDが溜まってしまい、なんとかせねばと思い、夜遅い時間にPCで鑑賞しました。

1949年の小津安二郎監督の作品です。

この映画を観ると、60年経つと「文化」というものは変遷するのだということがよく分かります。
現代の監督が、今の日本を映像に残して60年先の日本人に観てもらうとすればどういう映像を作るでしょうか?
小津監督は、まるで今から60年過去にタイムスリップして、60年前の日本らしさを切り取って映像に残したかのようです。

一つ例をあげると「お辞儀」。
人と人が普通に挨拶する場面で、60年前の日本人は深く頭を下げていたということがよく理解できます。
こういう文化はなくなってしまったし、今の時代では「謝罪」にしか使われないようなものに変質してしまいました。

「東京物語」もそうなんですが、小津さんの映画ってある意味ストーリーがないんですね。
この作品も、なかなか嫁に行かない原節子がやっと嫁に行くという話です。
黒澤明の「用心棒」のストーリーを説明しようと思ったら、話が延々と続いてしまいますが、「晩春」はそれだけのこと。
そういうある意味日常を味わい深く丁寧に描けるというのが、小津さんの監督力なんでしょう。

文学で言えば、私小説にもノンフィクションにも通じるものがあると感じます。
うちの娘たちは、いずれ80年前の日本を鑑賞するのでしょうか?

写真はPC上の原節子です。
Sony RX100で撮影しました。
原さんは美しいけど、ちょっと怖いヒトですね。美しすぎるのかもしれません。

存在の耐えられない軽さ2012年06月10日 20時30分47秒

この映画は、露骨な性描写で有名で、また、売る側もそれを宣伝惹句に使っています。
だけどそういう映画ではまったくありませんでした。
メロドロマとも言えるし、純愛映画とも言えます。
性描写は比較的多く出てきますが、全然リアルではありません。
だってリアルに表現したらアダルトビデオになっちゃうでしょ?
だからそういった場面はほとんどお遊戯レベルでした。

主人公の脳外科医は女にだらしないのですが、彼の三白眼の表情がとても性格をうまく象徴していました。
ヒロインの女性は本当に可愛らしい。いたいけでしたね。

この映画を見ていて僕はある映画を思い出しました。
日本映画の「浮雲」です。
あれも究極のメロドラマ。
なんだかとても似ていると思いました。

しかしまあ、このDVDのジャケットはどうにかならないのでしょうか。
下品極まりありません。
だいたい、食事と排泄と性は人に見せるものではありません。

英国王のスピーチ2012年06月06日 22時44分23秒

今日は映画を観ました。
面白かったです。
しかし何かがちょっと足りなかった気もします。

映画も本も一番大事なのは作者の言葉なんですね。
溢れるような言葉の洪水。
そういうものがどんどんと沸きだして作品というのは完成度が高まるのだと思います。

そういう部分で言うともっと豊饒に訴えるものがあっても良かったかなと少し思います。

「乱」 デジタル・リマスター版(黒澤明)2012年04月30日 14時13分29秒

乱 デジタル・リマスター版
悪名は無名にまさると言いますが、「影武者」という映画は惨憺たる評価で有名です。
ですが、「乱」は、ある意味無名の映画。ほっておかれている映画です。
今日、家内と娘が映画を観に行ってしまったので、ぼくは自宅で「乱」を観ました。

映画としての完成度は「影武者」をはるかにしのぐと思います。
75歳でこの映画を作ったのかと思うと、黒澤はやはり天才・超人・破格だと思います。

この映画の良い点は同時に欠点にもなっています。
原田美枝子さんの演技がすごいのですが、この方の役柄は、「蜘蛛の巣城」を思い起こさせます。
ある意味、このドラマは彼女の復讐劇なのですが、そうなると本来のドラマはどうしたのかな?と思ってしまいます。
また彼女が短刀を突きつける場面は、「赤ひげ」を思い出しますね。

メインの話で言うと、大殿・秀虎が狂ってしまうシークエンスはあまり感心しません。
なぜならば、そこに人間ドラマをあまり感じないからです。
正気のままにしておいて、秀虎の心を描いた方が、ドラマが強かった気がします。
つまり、「影武者」で、影武者がばれてしまった主人公が、なんらドラマで役目を果たさなくなってしまったことと似ています。

三の城落城の場面では、カメラアングルがちょっと平凡かなと思いました。
死んだ侍がごろごろ転がって、その手前を馬が疾走していく、こういったシーンの連続でちょっともったいなかったと思います。
もう少し多彩に撮れてもよかった気がするのですが、良いアイデアがなかったのかもしれませんね。

「風のかたち」を観る2012年02月18日 22時25分53秒

小児がんの卒業生たちが参加するキャンプを、10年にわたって記録したドキュメントです。
同時に聖路加国際病院の細谷先生のドキュメントにもなっています。

この映画には「時系列」がありません。
これには大変驚きました。
10年の記録を映画にまとめようと考えると、まず考えることは、時間軸の流れです。
1日の時間の流れとか、年単位の時間の流れとか。
それがない。
そういう意味では記録性が薄いのですが、同時に芸術性が高まっています。
ぼくにはこういう発想はありませんから、驚きと同時に感心してしまいました。

時系列がないと、編集がものすごく難しくなるんです。
どの場面とどの場面を、どういう順序でつなぐか、大変悩ましいのです。
それが絶妙に決まっていました。
監督さんは、編集がうまい人だと思いました。

そしてこの映画には「物語り」がありません。
もし、映像作家の森 達也さんだったら、絶対に「物語った」と思います。
映像に意味付けしたり、求める映像を探してインタビューしたり。
それがない。
それがないと、普通はつまらないのに、この作品は、つまらなくない。
なぜでしょう。
やはり編集のうまさと、「風」をテーマにした自然風景の多用が功を奏しているのでしょう。
ここでの「風」とは何でしょう?
野暮ったい話はしたくありませんが、やはり子どもの「命」を「風」に見立てているのでしょう。
ですから、この映画のタイトルは「それぞれの子どもの命の形」を意味しています。

大変良質な映画です。良い時間を過ごすことができました。