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敗れても 敗れても ――東大野球部「百年」の奮戦(門田 隆将)2018年07月01日 23時16分51秒

敗れても 敗れても ――東大野球部「百年」の奮戦
サブタイトルが示すように東大野球部の物語です。
著者はノンフィクションの大御所ですので、文章の力は申し分ありません。とても面白く読ませて頂きました。

ただ、ノンフィクションをどう書くかという(ぼくのいつもの)疑問点は、本書でも感じることが多々ありました。
明治時代や大正時代の出来事を、「 」付きの台詞で再現するのは本当に正しいのでしょうか?
これはさすがに、資料に基づいて作者が物語を作っているのだと思います。
しかしそれも、事実に基づいているという観点からすればノンフィクションの範疇なのでしょうね。
ただ、ノンフィクションにもハードなもの(ルポルタージュやインタビュー)とソフトなもの(ニュージャーナリズム系)があって、本当に強い説得力を持つのは前者かなとぼくは思っています。
けれども後者には娯楽性がありますので、多くの人に読まれるのは、ノンフィクション系の物語なんだと思います。

現在、ベストセラー中のようですね。興味のある方は、ぜひどうぞ。

定年準備 - 人生後半戦の助走と実践 (中公新書) 楠木 新2018年07月02日 23時39分11秒

定年準備 - 人生後半戦の助走と実践
楽しく読みました。
定年退職。なんという甘美な言葉でしょうか?
ぼくは大学病院で働いていた頃、定年で大学を辞めることが夢でした。
その理由は、大学での仕事があまりにも過酷だったので、1日でも早く解放されたかったのです。
かと言って大学が嫌いだった訳ではありません。むしろ好きだった。
大学の外科医というのは、一生をかけて手術をうまくなっていく。一歩一歩、道を切り拓いて行くんですね。
だから定年になる時には、あらゆる手術が出来るようになっているわけです。
人生のすべてをかけて手術の道を極め、そして引退していく。なんてカッコ良いのでしょう。

しかしながらその夢は潰えてしまい、ぼくは開業医になりました。開業医は大学の医者のように階段を昇っていくという感覚がほとんどありません。
だから定年に対する欲はそれ程ありません。
実際、開業医は高齢になっても仕事を続ける人が多く、65才以上の開業医なんてザラにいます。

さてぼくは64才になると大家さんとの契約が切れます。
あと8年ですね。
定年後の人生は一体何をしたらいいのでしょうか?
いろいろと考えてしまいますが、実現しそうなものはすぐには思い浮かびません。
ま、じっくり考えていきましょう。

ネットテレビに生出演2018年07月04日 17時05分06秒

本日、テレビ朝日と電話で打ち合わせをしました。

6日(金)、22時から40分間、Abema TV に出演します。テーマは、18トリソミーについて。出生前診断にまで話が広がるかもしれません。

誰でも無料でネットで視られます。「Abema TV 」とググってください。
ぼくも老人になってしまい、滑らかに話ができなくなりましたが、命の尊さについて語ろうと思います。

仕事が終わってから、六本木のテレビ朝日にまで行くのは正直しんどいのですが、生命倫理とは「行動」であると思っていますので、老骨にむち打って出かけてきます。

話が下手くそでもご容赦ください。

「運命の子 トリソミー」増刷!2018年07月05日 23時21分34秒

2013年12月に出版された「運命の子 トリソミー」が、いま、このタイミングで3刷りになりました。
何かきっかけがあった訳ではなく、どういう理由で増刷になったのか不明です。
ただ、この本は、今でも反響が少なからずあり、今年の1月にはNHKラジオ深夜便に出演するきっかになりましたし、明日もある出版社からインタビューを受ける予定です。
決してベストセラーではありませんが、長く、細々と、そしてささやかな反響を呼んでいくという売れ方は、著者にとっては本当に幸せです。

ノンフィクション冬の時代と言いますが、本当にそう思います。実はこの本も、講談社から出したかったのですが、当時、講談社はノンフィクションから撤退することを決めてしまった時期でした。
講談社の編集者が、損得抜きで、この本に対してたくさんのアドバイスをしてくれて、ノンフィクションの賞に応募することまで提案してくれました。

幸い、本書は小学館ノンフィクション大賞を受賞。
原稿を応募した段階で作品としてはほぼ100%完成していましたので、小学館の編集者は、一切何も足さず、何も引きませんでした。つまり、講談社の編集者が無償でこの本の編集をしてくれた訳です。ちょっと稀な本の誕生のしかただったのです。

ノンフィクションは大して売れませんが、読者の心を動かすことが可能です。
その人の人生を変えてしまうことだって可能です。そこが、フィクションとの違いではないでしょうか?
13 / 18トリソミーに対して偏見を持っている医者はまだまだたくさんいます。この本はそういう状況に対して一石を投じるものです。
しかしそんなものは、太平洋に向かって小石を投げるようなもので、大勢に何の影響もないかもしれません。
しかしながら、雨垂れ岩をも穿つと言います。
世界を変えることをできると信じる人間のみが、世界を本当に変えると言います。
ぼくのやっていることなど蟷螂の斧に過ぎませんが、自分のできることを一生懸命やり続けたいと思います。
明日の Abema TV も、たった一人で良いですから、視聴者の心に波紋を投げかけることができれば本望です。

「運命の子 トリソミー」。ぼくは良い本だと思っています。生命について関心のある人は、ぜひ、読んでみてください。

麻原彰晃ら死刑執行2018年07月06日 09時49分13秒

朝になって重要なニュースが飛び込んできました。
死刑制度がいいのか、悪いのかはここでは触れませんが、麻原教祖を含む幹部数名に死刑が執行されたようです。
法務大臣はよく判をついたと思います。
国は、法務大臣の一家の身の安全を、一生にわたって守って欲しいと思います。

で、今夜の Abema TV では特番が組まれます。
したがってぼくが出演予定だった「18トリソミーご家族の肖像」は延期になりました。
またいつの日か、放送されることがあるかもしれません。
その時は、またお知らせしますね。

一発屋芸人列伝(山田ルイ53世)2018年07月07日 22時59分24秒

一発屋芸人列伝(山田ルイ53世)
とても面白く読みました。
語彙が豊富で表現力に奥行きがあり、とても文章がうまいと思います。
ぼくはあまりテレビを観ないので、ここで取り上げられている芸人さんたちが「一発屋」なのかどうか分かりませんが、なるほど、そういう視点で本書は成り立っているのですね。
一人ひとりの芸人さんの物語に面白さがありましたが、やはり最も興味を引きつけられたのは、相方である「ひぐち君」の描写です。
また自身の生い立ちも簡単に書いてあってこちらも面白かった。
どうやら筆者にはすでに自叙伝があることのことで、そちらも読みたくなってしまいました。

現在ベストセラー中のようですが、それも当然という感じでした。芸人という特別な世界で生き抜く難しさとか、滑稽さとか、いろいろな要素が詰まっていました。
いい本です。

となりの少年少女A: 理不尽な殺意の真相(草薙厚子)2018年07月08日 16時58分01秒

となりの少年少女A: 理不尽な殺意の真相(
動機が理解しがたい少年犯罪についての考察です。
いくつかの犯罪が紹介されていますが、その一つ一つが世間を騒がせたので、誰もが知っている事件ばかりです。
なぜこうした事件が起きたのでしょうか?
タイトルには明記されていませんが、犯行を起こした少年少女には発達障害があったというのが著者の分析です。

たしかにそういう一面もあるでしょう。
ただ、そうだとすると、どうやって事件を未然に防ぐことができたのか、とても難しいなと感じさせます。
発達障害の中に、自閉症スペクトラム障害という疾患があり、自閉症スペクトラム障害のうち知的な遅れがない症例をアスペルガー症候群と呼びます。
アスペルガー症候群とはコミュニケーションの障害と過度のこだわりをを特徴とします。
もっと分かりやすく言うと、相手の心が分からない、自分のこだわりから離れられないということです。

とうぜん、アスペルガー症候群の子どものすべてに犯罪指向がある訳ではありません。
しかし、こうした子どもが「人の死を見てみたい」と思ってしまうと、相手の気持ちを慮ることが出来ず、いったん思い込むと実行に移さないと気が済まないのです。
裁きを受けた後も、更生が難しいと言えます。被害者感情を理解出来ないからです。
アスペルガー症候群は診断が難しいばかりでなく、根本的な治療法がないため、この障害を抱える子どもは相当に困難な生き方を強いられることになります。

それをどうやって解決していくか。それは本書を読んでも見えてきませんでした。
では今後医学が進歩して改善していくのでしょうか。
それは何ともわかりません。
小児がんと比較すると問題点が明瞭になります。
小児がんは放置すると100%死に至りますので、小児科医たちが全力で治療法を研究します。
診断はクリアカットで誰にでも分かります。
現在でも抗がん剤という治療方法があるので、これを改善させていくという手順が見えています。

発達障害には一部薬物療法が有効ですが、こうした小児がんのような治療開発の道筋が見えません。
世間の関心はどんどん高まっていますが、皮肉なことに診断や治療はなかなか進まない可能性が高いと言えます。

キング・クリムゾン 増補新版 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)2018年07月08日 21時17分05秒

キング・クリムゾン 増補新版
ハードロックの王者と言えば、レッド・ツェッペリンでしょう。人気もナンバーワンでしたし、同じメンバーで安定してアルバムを発表し続けました。
ですがぼくは、ディープ・パープルの方が好きでした。グループは内紛・喧嘩が絶えず、すぐにメンバーチェンジしてしまうのですが、「スモーク・オン・ザ・ウオーター」などロック史上最高傑作の作品をいくつも残しています。

プログレッシヴ・ロックの王者と言えば、ピンク・フロイドでしょう。人気もナンバーワンでしたし、同じメンバーで安定してアルバムを発表し続けました。
ですがぼくは、キング・クリムゾンの方がやや好きでした。グループは内紛が絶えず、すぐにメンバーチェンジしてしまうのですが、ロックとしての瞬発力・破壊力は飛び抜けていたと思います。

キング・クリムゾンは現在でも活動を続けていますが、ぼくの心の中ではアルバム「レッド」をもって終わっています。
傑作アルバムは数多いのですが、ぼくは今でも「USA」をよく聴きます。
ぼくの青春は、ディープ・パープルとキング・クリムゾンという感じです。

漂流女子 ――にんしんSOS東京の相談現場から(中島かおり)2018年07月11日 17時26分32秒

漂流女子 ――にんしんSOS東京の相談現場から
望まない妊娠に対するSOSが本書の内容です。
読んでいて実に切なく、悲しい話ばかりです。
無責任な男、無理解な男。男ってどうしてこんなに馬鹿なのでしょうか?

望まない妊娠に対する一つの解答が、人工妊娠中絶です。
しかし中絶は女性の心に大きな傷を残します。
PASS(Post Abortion Stress Syndrome=中絶後ストレス症候群)がそれですね。

もう一つの解答は、里親・特別養子縁組です。つまり産むわけですね。しかしながら日本ではこうした動きは他国と比べて非常に遅れている状況にあります。

1970年代は女性の人権運動が大きなうねりを見せました。産むか産まないか、女が決める・・・と意識変革がもたらされました。
そのことは間違っていないと思いますが、中絶しても女性が幸福になれるとはぼくには思えません。
しかし、望まない妊娠であれば、それもやむを得ないのかもしれません。

では、望んだ妊娠はどうでしょうか?
赤ちゃんが欲しくて妊娠しながら、障害児なら要らないという理由で新型出生前診断を受ける人が日本には年間1万人以上もいます。
夫婦(カップル)で望んで妊娠しておきながら、堕胎を選ぶ・・・そんなことで私たちは幸せにになることができるのでしょうか?

いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(21)2018年07月12日 08時49分38秒

第21回目連載を書きました。
ぼくにとって忘れることができない少年の話です。
よかったら読んでみてください。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180615-OYTET50009/

次回も小児がんの話です。