統合失調症 (岩波新書・村井 俊哉)2019年11月10日 17時05分26秒

統合失調症 (岩波新書)
大変面白い本でした。
統合失調症の本なんて星の数ほどあると思うのですが、この本はずば抜けて面白かったです。
なぜだろうと考えてみると、筆者の精神科医に「物語る」力がものすごくあるからです。

ぼくの知らないことも多数書かれていましたが、そのことより、語りの面白さに熱中したのだと思います。
ただ、知らなかったことをここで2つ書いておきます。
まずは、「精神病」という言葉。これは統合失調症のうち、幻覚と妄想という精神の症状を表現した症候群の名前なんですね。
心の病、一般を指す言葉ではないそうです。
それから、異常セイリエンス仮説という概念。セイリエンスとは、顕著性などとも訳されるそうです。詳しくは本書を・・・ということになってしまいますが、この病気は日本では統合失調症と呼ばれ、海外ではシゾフレニー(精神分裂病)と呼ばれます。
最近は、セイリエンス症候群という病名の提案もあるそうです。

これだけ面白い本を書けるというのは、筆者の先生にそういう才能があるということでしょう。この世界では有名なんでしょうか?
そしてそもそも、岩波はなぜ、「統合失調症」の本を作ろうと思ったのか、大変興味を惹かれました。
先生の「物語る」力を知っていたのかな?

患者さんにはちょっと気になる言い方になるかもしれませんが、統合失調症という病気は古来から、医学と哲学・文学を結ぶような病気でした。
ぼくが医学に興味を持った疾患でもあります。
間違いなく面白い1冊ですので、オススメと言えます。

コメント

トラックバック