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軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い(松本 創)2018年05月20日 22時37分03秒

軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い
福知山線脱線事故から13年。
遺族は事故の原因究明をJR西に求め、JR西はそれにどう応えようとしたか、それを描いた超力作です。

この本を書くのは本当に難しかったと思います。
ノンフィクションはただの記録文学ではなく、やはり起承転結に相当するものがあります。
遺族の視点で本書を作っても中味の薄いものに終わったでしょう。
それゆえ、JR西という会社を描いています。
両方を描くことで本書は成功しているとも言えるし、物語る流れが揺れ動いたようにも見えます。

しかしながら、事故とはなんだろうかということを強く感じさせました。
特に、JR西の天皇と呼ばれた井手正敬さんのインタビューがよかった。彼は、事故の責任は運転手にあり、会社の企業風土・精神には関係がないという立場なんですね。
遺族の思いにはまったく応えようとしないわけです。そこに絶対的な自信を持っている。

しかし人のやることには必ずミスがあります。
ミスにはやはりいろいろな種類があって、当人の単なる注意不足ということもありますが、個人の注意の限界を超えたケースで、組織としてミスを防ぐ手段を講じていなかったこともあります。

ただどうもミスを犯した人間は2通りに分かれるようで、ある人は2度とミスをしないと誓って慎重細心になり、またある人はミスを犯すことに鈍感になるように思えます。

運輸交通という仕事と、医療という仕事は、ミスが起きると人が亡くなるという意味で共通です。
JR西が福知山線脱線事故の現場を保存しているように、医療の世界もいったんミスが発生したら、その経験をすべての医師が共有の知にできる仕組みがあってもいいかと思います。