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発達障害の豊かな世界(杉山 登志郎)2018年05月04日 22時03分42秒

発達障害の豊かな世界(杉山 登志郎)
発達障害の世界を描いたメディカル・エッセイです。
大変面白い作品でした。文学性も高いと思います。学術性もあります。
さて、本書の白眉は何と言っても「てる君」の物語です。
彼は知的障害(IQ 30)を伴う自閉症です。その彼が16歳のときからものすごい勢いで絵を描き始めます。
絵そのものは特段うまいものではありません。
しかしながら内容がすごい。彼が幼稚園児だった頃のある1日、つまり24時間を連続した絵で描いているのです。
それも、書き手の視点が上下左右に次々と変化していきます。
こうして彼は、10年間で2000枚近い絵を描きます。その2000枚が、1日を表現している訳です。

これはもう不思議としか言いようがありません。
自閉症は、脳の機能のある部分が損なわれるので、それを代償するように他の部分が発達するという説があります。
1943年にカナーが初めて自閉症の存在を報告したときから、機械的な記憶力に優れているという指摘があります。
この「てる君」にもそういう記憶力と、空間を把握する認知力があったのでしょう。

読み物としても面白いし、勉強にもなります。
杉山先生は多くの本を書いていますが、その中でも代表的な1冊ではないでしょうか。