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「李香蘭」を生きて (私の履歴書・日本経済新聞社) 山口 淑子2013年02月12日 19時45分05秒

「李香蘭」を生きて (私の履歴書)
いやこれは面白かった。
ぼくに学がないと言えばそれまでですが、「李香蘭」も「山口淑子」も「満州」も、ぼくの中ではバラバラでした。
そういうことだったのですね。

黒澤明監督の「醜聞」に出演していたあの美しい女優さんが、李香蘭なんですね。
そして重信房子と会談した芸能人が山口淑子で、後の参議院議員なんですね。

そしてイサム・ノグチさんの奥さんだったなど全然知りませんでした。
驚きの連続でした。

「柔の恩人 女子柔道の母 ラスティ・カノコギが夢見た世界」(小学館)小倉 孝保2013年02月13日 21時38分18秒

柔の恩人 「女子柔道の母」ラスティ・カノコギが夢見た世界
2011年・第18回小学館ノンフィクション賞を受賞した作品です。

評伝とはこうやって書くのかと感心するくらいとても綺麗にまとまっています。
資料の読み込みと、本人や周囲の人たちへのインタビューが基本ですよね。
ラスティさんを知っている日本人は皆無に近いはずですので、作者としては「説明」をしたくなります。
だけど読者が読みたいのは「説明」ではなく、いきいきとしたラスティさんの姿。
そういう筆がとても滑らかでした。
作者は毎日新聞の記者さん。
やはり新聞記者はうまいですよね。当たり前か。

現在、レスリングがオリンピックの種目から外れることがほぼ決まり大騒ぎになっています。
この本では、ラスティさんが、女子柔道を五輪種目に認めてもらおうと奮闘します。
その執念は実にすごいと思いましたが、そのあたりの記述はラスティさんの人生の物語と言うよりも、政治的な駆け引きみたいな感じになっていきます。
ぼくは個人的にはそういった闘争よりも、クライマックスの骨髄腫との闘いの方に、より興味がありました。

巻末ではロンドン五輪に出場した日本女子柔道選手にインタビューしていますが、彼女たちが協会のパワハラを告発しているのかと思うと、何とも皮肉というか、ラスティさんも天国で悲しんでいるのだろうと、思わざるを得ません。

セシル・テイラーを聴け!2013年02月14日 22時06分13秒

Conquistador
セシル・テイラーというのはフリー・ジャズの巨匠で、ピアノを弾く人なのですが、ま、ちょっと聴いただけでは何が何だか分かりません。
しかし聴けば聴くほど味わいが深くなり、いつの間にか魂が揺さぶられるような気になります。
「Conquistador 」はセシル・テイラーの代表作ですが、なぜか今まで購入していませんでした。
で、今回、iTunes Storeで買いました。
やはり良い。買って良かったと本当に思います。

さて、先日買ったピンク・フロイドの「Wish you were here」もそうですが、音楽をダウンロードする形で購入しました。
つまりCDは手元に残さないということです。
皆さんにとってはそれが常識かもしれませんが、「物」に拘る世代に生まれたぼくにとって、CDという形を残しておくことは譲れないスタイルでした。

だけど、CDを買っても結局Macに取り込んでそれを聴いている。
CDは保管場所を食う。
本と違って「背表紙」が小さいので探し出すことが困難。
Macに入れれば、iPadでもiPhoneでも共有できるので、どこでも聴ける。
そして何と言っても、ぼくが死んだらCDは捨てられる運命にあります。
娘二人がぼくのJazzコレクションを聴くとは思えないし、必要ならば自力でJazzに辿り着いて欲しい。

そう思うと、CDや本を所有することに意味を見いだすことはできません。
さて、今夜もセシル・テイラーを聴くぞ!

『「東京電力」研究 排除の系譜 』(講談社)斎藤 貴男2013年02月15日 19時54分41秒

「東京電力」研究 排除の系譜

以前に読んだ斎藤さんの「梶原一騎伝」がとても面白かったので、この作品も読んでみました。
するとテイストが全然違うんですね。
斎藤さんの経歴を見てみると、経済ジャーナリストなんだ。
ですので、分厚い取材と資料に基づいた分析は、経済オンチのぼくにはちょっとわかりにくい部分もいくつかありました。
ぼくにはレベルが高すぎたという感じでしょう。

一番面白かったのは「叙勲」の話。
人間って本当に俗な生き物ですよね。
勲章をもらうことがそんなに嬉しいんですね。
拒否する振りをしながらもらったり。
本当に下らないと思います。
貧しい家に生まれ、低学歴のままに、額に汗して懸命にコツコツ働いて一生を全うした人間には、絶対に勲章など与えられません。
こういうシステムをおかしいと思わない人間こそが、最も勲章を与えられるべきではありません。
新聞も報道をやめればいい。

経済の世界を広く知ると、ああ、医者って本当に狭い世界に生きていると思います。
医療のことしか知らない訳ですから。
経済人は大したものですよ。
私たちの生活は経済の上に成り立っているので、経済を大きな部分で支えている人たちの使命は本当に重いと思います。
何千人、何万人という組織を動かしていくリーダーとは、実に大変だと思います。
その決断力。実行力。

その点、医学部の教授なぞは零細企業の社長さんという感じでしょう。
いや、それが悪いというのではありません。
それに気付かず勘違いしている人がいるということです。
「裸の王様」ですね。

開業医にもね、「臨床教授」という肩書きがあるんです。
医学教育に協力をすればそういう肩書きを得ることも可能なんですね。
ぼくは、千葉大医学部のある実力者から、「臨床教授」の肩書きを差し上げられますよと言われたことがあります。
まったく興味も関心もありません。

本書を読んで、自分の基礎的な知識が足りないことがよく分かりました。
残された人生は長くないけど、「経済」のことも少し勉強したいですね。

近々眼鏡が欲しい2013年02月16日 22時55分44秒

今日のクリニックはかなり空いていました。
この三日間でインフルエンザの患者さんは一人のみ。
どうやら流行は終息に向かっています。
一気に減ったという感じですね。
今年度から、インフルエンザに感染した幼稚園児・保育園児の登園時期を1日うしろにずらすように文科省・厚労省が決めたおかげかもしれません。

さて、今日は午後からずっと原稿を書いていますがなかなか進みません。
理由はいくつかあるのですが、そのうちの一つが「視力」の問題です。
7年前に大学を辞めてから、急激に近視と老眼が進みました。
近視に関しては、特に左目。
車を運転する時は必ず眼鏡をしますが、免許証は裸眼でパスしています。

老眼は本当に困ったもので、読書のスピードに明らかに悪影響があります。
そしてPCやキーボードも見づらい。
開業する時に、「近々眼鏡」を作ったのですが、眼鏡を作ってから本格的に目が悪くなったので、この近々眼鏡はまるで役に立っていません。

原稿を書くスピードも明らかに落ちていますし、ここいらで改めて近々眼鏡を作ろうかなと思っています。

「飼い喰い」を読んでください2013年02月17日 23時15分05秒

「飼い喰い」(岩波書店)内澤旬子
ブログには書いていませんでしたが、2週間前に「飼い喰い」(岩波書店)の内澤旬子さんにインタビューしました。
書評も書いていませんね。
衝撃的な面白さでした。

今日は終日、インタビュー原稿を執筆していました。

「g2」スペシャル・インタビューを開始して約1年。
6人目の作家さんです。

難しいんですよ、インタビュー記事。
臨場感を出そうとすると、どうしても「話し言葉」になってしまう。
「話し言葉」は、会話をしている人間同士の身振り手振りや顔の表情が補完しているから成り立っているんですね。
だから記事は「書き言葉」で。
そうすると、説明調になって、スピード感が消えてしまう。

ま、そこがやりがい(書きがい)なんですけれどもね。
ぼくはプロの作家ではありませんから、プロのレベルを目指す必要はありません。
しかし講談社さんからこのお仕事を引き受けた以上は、「ぬるい」態度はとりたくないと強く思っています。

あ、「飼い喰い」。買って読んでくださいね。

web「g2」を読んでください! 森健さん・その12013年02月18日 20時36分46秒

web「g2」を読んでください!

森健さんへのインタビュー記事が、web「g2」に連載開始になりました。
毎週月曜日に更新です。
おそらく3週にわたって掲載されると思います。
ぜひ、読んでください!

http://g2.kodansha.co.jp/279/280/20034/20035.html

原稿を書いていたら2013年02月19日 23時30分14秒

こんな時間になってしまいました。
書くべきネタはいくらでもあるのですが、明日の朝は早いので、今日は休筆にしておきます。
楽しみにしている人には、ごめんなさい。

時間が足りない2013年02月20日 23時09分05秒

診療をする
診療を受ける
写真を撮る
本を読む
音楽を聴く
MVを視聴する
自転車を漕ぐ
原稿を書く

やることが多すぎて時間が足りません。
今日もブログは休筆します。ごめんなさい。

資本主義の「終わりの始まり」: ギリシャ、イタリアで起きていること (新潮選書) 藤原 章生2013年02月21日 19時42分18秒

資本主義の「終わりの始まり」: ギリシャ、イタリアで起きていること
毎日新聞社の藤原章生の作品です。

ギリシャの映画監督・テオ=アンゲロプロスが言葉を残す。
「私たちは待合室で扉が開くのを待っている。その扉は地中海諸国で開く」と。
この言葉にいわば狂言回しの役割を持たせて、筆者はイタリア・ギリシャの市井の人、政治家、学者に話を聞きます。
筆者はメキシコ・南アフリカ特派員の経験がありますので、自分が見て聞いて感じてきたことも、そこに加えて長大な論考が進んでいきます。
一見ばらばらに見える中米・南アフリカ・南欧・福島がつながって見えるのは、いかに筆者が各地をつぶさに観察して文化の本質を抽出してきたかの証明でしょう。
自分の経験に意味を持たせて、それを有機的に成熟させていくのは、その人のセンスであり、また努力なのでしょう。
そういう考察の構築が実にみごとにできていました。

さて、本書の中で印象的だったことは多々ありますが、3つだけ挙げておきましょう。

まず、現代の若者は記憶力が劣化しているという点。
ネットの時代ですから何でも簡単に調べることができる。アクセスが容易ですから、記憶の必要がない。
その結果、「過去」を心に刻むことができない。
「過去」に盲目であれば当然未来を見通すことができません。
従って現代の若者には未来が見えていないという鋭い指摘です。

2点目は、資本主義とは経済に関する主義ではなく、宗教であるという指摘です。
私たちは共産主義を宗教と考えがちでちですが、なるほど、確かに資本主義だって立派な宗教です。
恐らくその教典は、資本主義社会では経済は成長しなくてはいけないという教えでしょう。
ぼく自身は数年前から、「脱経済成長」という考え方を持っています。
そうしなければ、日本に未来はないと思います。
だけど政治家がそんなことを言うとたちまち選挙で落選するんですね。
答えを知って言えても政治家は口にできない。政治は常に衆愚ということです。

3点目は、世界がアメリカ化しているということ。
まったくその通りです。
小泉なんとかいう男は、ブッシュのペットと揶揄されましたが、この総理大臣の世論支持率は最後まで衰えることはありませんでした。
彼のことを新自由主義とか、保守回帰とか言いますが、そうでしょうか?
「自己責任」とか「自助努力」とか言って、本来私たち日本人が持っている「助け合う」美しい心を失ってしまったのではないでしょうか?
要するに彼がやったことな「アメリカの猿まね」であり、アメリカにおべっかを使って、アメリカかぶれの、えせアメリカ文化を日本に持ち込んだだけでしょう。

本書の感想を離れてぼくの感想を付け加えると、今の日本は「分厚い中間層」が劣化していると思います。
本来、日本は中間層が強かった。自分のことを「中の上」と思っていたので、政治に対する不満が薄かった。
ところが経済成長がなくなり、中間層は「中の下」になった。
すると、下の層に手を貸そうとする優しい気持ちが消えてしまったんですね。

朝日新聞の世論調査を見ても、「生活保護費を減らしたほうがいい」、「福島の被災者へ寄り添う気持ちが風化した」という人が過半数を占めています。
これが本当に「美しい国」でしょうか?
安倍なんとかという男が舌先三寸で円安を誘導し、誰も何の汗もかかずに経済が好転する。
いや、実態はわかりませんがそういうムードです。
そして中間層の人たちは、そのムードの好況にあやかろうと、あさましく手を伸ばし、下層の人たちを足蹴にしようとしている。
まるで、「蜘蛛の糸」です。

南欧では資本主義が終わろうとしているのかもしれませんが、日本では福島原発事故の時点で資本主義の定向進化の果ての絶滅が露わになったとぼくは見ています。