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「柔の恩人 女子柔道の母 ラスティ・カノコギが夢見た世界」(小学館)小倉 孝保2013年02月13日 21時38分18秒

柔の恩人 「女子柔道の母」ラスティ・カノコギが夢見た世界
2011年・第18回小学館ノンフィクション賞を受賞した作品です。

評伝とはこうやって書くのかと感心するくらいとても綺麗にまとまっています。
資料の読み込みと、本人や周囲の人たちへのインタビューが基本ですよね。
ラスティさんを知っている日本人は皆無に近いはずですので、作者としては「説明」をしたくなります。
だけど読者が読みたいのは「説明」ではなく、いきいきとしたラスティさんの姿。
そういう筆がとても滑らかでした。
作者は毎日新聞の記者さん。
やはり新聞記者はうまいですよね。当たり前か。

現在、レスリングがオリンピックの種目から外れることがほぼ決まり大騒ぎになっています。
この本では、ラスティさんが、女子柔道を五輪種目に認めてもらおうと奮闘します。
その執念は実にすごいと思いましたが、そのあたりの記述はラスティさんの人生の物語と言うよりも、政治的な駆け引きみたいな感じになっていきます。
ぼくは個人的にはそういった闘争よりも、クライマックスの骨髄腫との闘いの方に、より興味がありました。

巻末ではロンドン五輪に出場した日本女子柔道選手にインタビューしていますが、彼女たちが協会のパワハラを告発しているのかと思うと、何とも皮肉というか、ラスティさんも天国で悲しんでいるのだろうと、思わざるを得ません。