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小児がんは「治癒」するか?2007年07月09日 19時58分08秒

昨日の菜の花会で、小児がんの卒業生に『治癒』という言葉を使うかが問題になりました。
これはあまり意味の無い議論です。なぜならば、それは『治癒』という言葉の定義によるからです。
なぜ、この議論になったかと言うと、小児がんの子どもが保険に入る時に、『治癒』と書類に医者が書くかどうかが問題になったからです。
あ、こんなものは、『治癒』って書けば良いじゃないですか?技術論の問題です。(書いたところで・・・・、なんですが)
でも、それと患者さんに『治癒しましたよ』というのとは、別問題です。
僕は治癒とは言いません。じゃあ、治癒しない?
いえいえ、だいたいからして、こんな会話はママ達との間ではしません。
ママ達のレベルはそんなに低くありません。ママ達の質問は、「うちの子と同じような他のお子さんで、何年経って再発した例があります?」という、もっと現実的な、具体的な質問です。今時、この子は治ったんですかなんて、誰も聞いて来ません。
ですから、『治癒』か『完全緩解』かは、医学の表現であって、臨床上はなんの意味もありません。
千葉県子ども病院の血液科の沖本先生は『治癒』と言って良いのでは?と言っていました。なるほど、患者の側に立った優しい言葉ですね。
しかし、この菜の花会が創設された時に、患者のパパが「治ったと言ってくれ!」と発言して、それに対して私たちが医師が、「そうではない、治癒と言う言葉を使わない理由を理解してくれ」と発言した歴史もあります。そのパパは多分、気分を害してその後、菜の花会には来ていないでしょう。
その後、白血病の治療成績は上がったのかもしれませんが、固形がんは何も変わっていません。
高橋教授は「この病気に治癒はない」と患者に言っていたそうです。
僕が「治癒では無い」と言っているのとまったく意味が違うのは、もちろん、これをお読みのみなさん、お分かりですよね。
まあ、時代がまったく違いますし、がんに対する医者の知識や理解も当時とは雲泥の差です。
しかし、あの時代にも、もうちょっと医師に優しさがあっても良かったかなと思います。
こういった議論自体が患者さんに誤解や迷いを生みます。治癒か否かは、あくまでも技術論と学問にとどめるべきです。