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野村進『救急精神病棟』2009年01月03日 18時49分52秒

野村進さんの『救急精神病棟』を読みました。

千葉の海浜幕張にある「千葉県精神科医療センター」を3年間にわたって取材したルポですね。

僕はこの病院に入ったことがありますよ。
患者ではなくて、医学生としてね。
今から20年以上前。
医学部の6年生の時ですね。
あの時は、学生の僕たちに対して、ここが24時間対応の救急精神科という説明は無かったような記憶が。
あったのかもしれませんが、僕は単に普通の精神病院として見学していました。

入院中の躁病の女性患者に大きな声で話しかけられたことを今でもよく憶えています。
まるで女優さんのように話していました。

さて、本書ですが、まずなんと言っても野村さんの筆力がすごい。
この人は本当に文章がうまいと思います。
才能なんでしょうね。
そういう意味では大変面白く読みました。

ただ、精神科医の言っていることが僕にはよく理解できない。
たぶん、普通の知的レベルの人にはよく分からないと思うのです。
ここが精神科の弱点かな?

僕は元々精神科医を目指して医学部に入学した部分があったのですが、やはり精神医学って難解なんですよね。
小児外科みたいに、生まれつきの奇形を手術で治してその後の80年の人生を作ってあげる・・・みたいな単純さが無いんですね。

ただ、本書によって精神医学の薬物療法や「無けいれん通電療法」が進歩したあたりはよく分かりました。
また統合失調症(昔で言う分裂病)が100人に1人の病気であると言うことも十分に強調されていて良かったと思いました。

僕たちだって心の中に闇みたいなものを持って生きていますよね。
もちろんノー天気に幸せって人もいるでしょうけど、悩みがあるから人間なんだと思いますし、ちょっとそれがショートしてしまえば、誰だって統合失調症や鬱病になるんだと僕は思っています。
僕だって、あなただって。

良書です。