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〈反延命〉主義の時代: 安楽死・透析中止・トリアージ(小松美彦, 市野川容孝, 堀江宗正)2021年07月18日 21時56分49秒

〈反延命〉主義の時代: 安楽死・透析中止・トリアージ
ここ数年、延命を「よくない」ことと捉える社会の風潮があります。
何がきっかけだったのかはわかりませんが、2017年に『安楽死を遂げるまで』(宮下洋一)が出版されたことが一つの契機になっているようにも見えます。
(宮下さんが安楽死に賛成しているわけではないので、誤解なく)
この本を起点に、日本人で神経難病の患者さんがスイスに渡り、医師の助けによる自殺をしたり、橋田寿賀子さんが『安楽死で死なせて下さい』という本を書いたりしました。
1年前には京都でALSの女性に対してSNSで知り合った医師たちが安楽死(嘱託殺人)に手を染めたりもしました。
さらには新型コロナウイルスの広がりに伴って「トリアージ」という言葉が、本来の医療現場とは違う使われ方で脚光を浴び、助かる見込みのない人から、見込みのある人へ人工呼吸器の付け替えが議論されたりしました。

こうした一連の事件や社会現象の底にあるのは延命は「よくない」という考え方です。
延命という言葉が汚れてしまった印象を受けます。

しかしそれはあまりにも医療の現実を知らない人の意見です。
外科手術の役割とは何か、みなさんはご存知でしょうか?
もっとわかりやすく、あなたが胃がんであった場合、外科手術はあなたに対して何ができるでしょうか?
答えは次の3つです。
1 根治・・・完璧に治すことができれば最高の結果です。
2 QOL向上・・・手術不可能な時は、胃と小腸をバイパスして食事を摂れるようにします。
3 延命・・・リンパ節転移が広がっている場合、根治は期待できません。でも、胃を切除しリンパ節郭清をすれば延命が期待できます。退院して家族と有意義な時間を過ごすことができれば、延命は非常に大事な手術になります。

つまり、延命というのは本来、医療の中において大事な治療法の一つなのです。
命を大切にすること、それを見失ったときに医療は瓦解します。
安楽死や医師の助けによる自殺が世界で広まっていますが、患者を死に至らしめる行為を医師にやらせるのは、あまりにも残酷です。
医者は10年、20年と修行を積んで、人間の命を「助ける」ことができるように生涯をかけて研鑽していくのです。
医者の本能は人を助けることにあります。
世論調査をすると70%以上の人が、安楽死・尊厳死に賛成だそうですが、致死的行為を医者にやらせるという発想は、あまりにも他人任せで無責任ではないでしょうか。

その一方で、人の命はどうやっても助けることができない状況があります。たとえば、癌が再発し全身の臓器に転移した場合ですね。
そうしたケースでは、医療者は患者(家族)に心を寄せて、いかに人生の終わりを「生き切るか」をともに考える必要があります。
これは「反延命」主義とはまったく異なるものです。
患者が人生をまとめることに力を貸すことも医者にとって大事な仕事になります。
一般の人には、この両者を混同しないでほしいと思います。

開業医をやりながら作家もやってみた⑦2021年07月25日 11時32分12秒

https://www.m3.com/news/iryoishin/942321?id=mrank
『開業医をやりながら作家もやってみた』

m3.com 連載第7回が掲載されました。

開業医のところにも、命に関わる重症患者が来ます。死にそうになった子どもたちのことを書きました。よかったら読んでください。

52ヘルツのクジラたち(町田 そのこ)2021年07月27日 23時50分42秒

52ヘルツのクジラたち
時々モーレツに小説(フィクション)を読みたくなります。で、今、話題の本作を読みました。
アマゾンの書評を見ると、どうしてこんな人間性が歪んだようなレビューが付いているの? と思います。
この作品は細かいことを言えば、欠点はあるかもしれませんが、全体としてみればとても優れた作品だと感じました。
まず、文章がいい。
小説家は、ノンフィクションライターと違って、文章が研がれていますよね。
心地よく文章を味わうことができました。
それからプロットが大変よく練られていました。どうやってこういうストーリーを考えつくんでしょう?
ぼくにはとても無理。才能なんでしょうね。うらやましいとしか言いようがありません。
読んで本当によかったです。
皆さんもぜひどうぞ。