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日本小児血液・がん学会へ行く2016年12月16日 16時40分25秒

日本小児血液・がん学会へ行く
久しぶりに小児がん学会に参加しました。
一番大事な仕事は、Meet the Expert という朝食付きセミナーで講師をつとめることです。
大学の教授やこども病院の病院長などをリタイヤした先人から、若手がレクチャーを受けるというものです。
ぼくのような若い人間、そして開業医が講師をつとめるのは異例というか、前例がないのではないでしょうか?
昨年から学会に依頼されていましたが、今年は学会場が品川なので行くことにしました。

さて、その前夜に会長招宴。
学会の重鎮がずらりと招かれています。
だがその顔ぶれは、実はほとんどが知った顔。ぼくの友人たちはみんな、教授とかこども病院の部長とか、学会の理事長になっています。
つまり歳をとったということ。
小児がん学会に参加するのは、何年ぶりか正確に覚えていないくらいなのですが、僕を見つけるとみんなが寄ってきてきれます。
体調のことを心配してくれて、仕事の様子を聞かれ、執筆のことを聞かれます。
僕など過去の人間ですが、ちゃんと忘れないでいてくれるのですね。
うれしい。うう。泣く。
会長招宴に引き続いて、仲間たちと飲みに出かけました。
楽しい時間はたちまち過ぎて、あっと言う間に閉店です。

さて、翌日は早朝からMeet the Expert 。
小児がん学会でありながら、僕は「重い障害を生きる子を通じて医師と患者家族の関係を考える」というテーマを選びました。
誰も聴きにきてくれなかったらどうしようかと思いましたが、席はしっかり埋まりました。
おまけに学会の会長である慶應の黒田教授まで聴きにきてくれました。
いや、うれしいですね。
スライド50枚を使って、呼吸器で生きる子の人生をしっかりとプレゼンしました。
お世辞と思いますが、黒田教授はとてもよかった、感動したと言ってくれました。

さて、そのあと普通に学会に参加です。
フロアから演者の発表を聴く。
学会はやはり良い。身が引き締まります。
だけど、少しだけ寂しい思いもしました。
自分には発表する研究成果がない。かつて僕は、小児がん学会で次から次に自分の新しい研究結果を報告しました。
他の施設からの発表に対しても質問を次々に浴びせて、いつもスポットライトに当たっていたと思います。

しかし、今やただの聴衆の一人。若い腫瘍科医は誰も僕のことなど知らないでしょう。

大学を去って開業医になり、文章を書くことで僕には新しい世界が開けました。
それはそれで大変幸福なのですが、人間ってやはり何かに帰属していないと淋しい。
やっぱり僕は小児外科医、そして小児腫瘍科医。
大学に残って小児がんの研究をしていたら、仕事だけの狭い世界に生きていたかもしれませんが、本当の自分の居場所に安心感を得ることができたように思えます。
そんなことをちょっと考えてしまいました。

さて、2018年に、小児がん学会は京都で開催されます。国際小児がん学会(SIOP)との同時開催です。
会長の京都府立医大・細井教授は、ぼくを主賓として招いてくれるそうです(笑)。
今から楽しみです。先生、約束ですよ〜。