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「こぐこぐ自転車 」(平凡社ライブラリー) 伊藤礼2011年08月27日 21時03分06秒

こぐこぐ自転車
傑作だと思います。
いや、名著と言うべきでしょうか。

65歳で定年になった老人が自転車に乗り始め、瞬く間に、長距離サイクリングや峠越えをしていく様子が書かれています。

この老人はかつてアスリートだったような人ではありません。
むしろ正反対。
健康に不安を抱えるただの老人と言えるしょう。
その人が、自転車を「こぐ」。また「こぐ」。

伊藤さんは足でこいでいるのではありませんね。
頭でこいでいる。
その哲学的な走り方が実に素晴らしい。

こういう本をエッセイと言います。
また、随筆とも言い、両者は同じ言葉であるとの意見が大勢です。
しかしそうでしょうか?
ぼくは、エッセイなど、ブログの延長みたいなもので誰にでも書けると思います。
だけど、随筆というのは、「枕草子」みたいなもので高い文学性が必要なのだと勝手に思っています。

そういう意味で、この本はとても文学の薫り高き随筆です。
傑作という言葉を取り消して、名著と言ったのはそういう意味です。

普段あまり本を読まないで、自転車が好きなだけの人が読んでも、まったくこの本の良さは分からないでしょう。