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着せる女(内澤 旬子)2020年05月24日 21時29分01秒

着せる女
内澤さんは(特に男性の)スーツが大好きで、よれよれの服を着ている男性を見ると、いいスーツを着させたくなります。
そうして何人もの作家さんや編集者さんを高級紳士服店に連れて行き、フィッターと呼ばれるスーツのソムリエみたいな人と一緒にスーツを選ぶという顛末記です。

いいスーツを着る前後のあれやこれやを書いただけと言ってしまえばそうなのですが、そこは内澤さんの筆の力、めっちゃおもしろいです。
表現力がすごいんですよね。たぶんスーツを深く愛しているから、表現も深くなるんですよね。
考えてみればこんな「小さな世界」はないわけで、類書も皆無でしょ。類書がないということは営業的に有利か(本が売れる)というと、そういうことはなくて、多くの人が欲していない分野ということでもあります。
でもそういう世界をこれだけがっちり書けるというのは、本当に内澤さんは実力者だと思いますね。

この本は、内容だけじゃなくて「本という商品」がとてもよくできています。
まず何と言っても本の形です。
四六判ではなく、A5判変型。
そして装丁がめちゃくちゃいい。これは誰でしょうか? 川名潤さんの仕事ですね。素晴らしい。
口絵カラーページのビフォー&アフターの写真もいい。もちろん内澤さんのイラストもばっちり。
つまり本としての出来がいいんです。
書き上げた本人がこの本を可愛いと思っているんじゃないでしょうか?
ナイスな1冊でした!