アクセスカウンター
アクセスカウンター

「ガキ」と呼ばれた医者2010年12月08日 10時52分55秒

僕が研修医のとき、厳しかったのは先輩の医者だけではありませんでした。
看護師も厳しかったし、レントゲン技師も厳しかった。
研修医はイヌかネコみたいな扱いでした。

僕はそんな研修医時代に、患者さんの面前で看護師から「ガキ」呼ばわりされたことがあります。

この患者は、千葉大の小児外科が総力を結集して治した小児がんのお子さんで、私たちにとって骨髄移植の第一号でした。

移植のとき、医療スタッフが10人くらいで移植ルームへ向かい、先輩の命令で、僕が無菌室の中に入って移植(骨髄液の注射)をすることになりました。
無菌室の中に入るためには、オペ室で自分の手を消毒するように、消毒液で手洗いをして無菌のガウンを着る必要があります。

僕は無菌室のすぐ手前の手洗い場所で、みんなが見ている中、いつものように手洗いを始めました。
ブラシを使ってイソジンでがんがん手を洗っていきますから、床や壁に水しぶきが飛びます。

するとそれを見ていた看護師の副婦長が、
「先生、ガキンチョの手洗いんじゃないんだから、もうちょっときれいにやって!」
と大きな金切り声を上げました。

僕は屈辱で顔が熱くなりましたが、黙って作業を続け、無菌室に入って、移植を始めました。
最初は、「移植ってどんな感じでやるの?」と興味津々だった先輩たちも、「なーんだ、ただの注射じゃん」と分かり、途中で全員いなくなり、部屋には、僕と子どもとそのママだけになりました。

「ガキ」と呼ばれたことにママはとても同情してくれて、「うん、そういうこともあるけど・・・若いうちは・・・・先生がんばってるし・・・」
などといろいろと励ましの言葉を頂きました。

その後、この親子とは大学病院で19年間付き合いましたが、なぜか、親子共に僕を信頼してくれて、いろいろと話すことが多かった。

「ガキ」も、もう今はすっかり「ジジイ」です。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック