アクセスカウンター
アクセスカウンター

「我、拗ね者として生涯を閉ず」 (講談社文庫)本田靖春2009年11月23日 17時08分18秒

本田さんの「我、拗ね者として生涯を閉ず」、上下2巻を読みました。

この本が論じられる時、執筆時に本田さんには肝がん・大腸がん・脳梗塞・心筋梗塞・片目失明・両足切断があったことが取り上げられることが多いようですが、そういう論評は本田さんとしてはまったく嬉しくないでしょう。

「由緒正しき貧乏人」である本田さんが、「拗ねて」読売新聞を辞めた経緯を一番書きたかったのだから、そこを読者は読むべきです。

新聞にとって一番大切な仕事は「権力を監視して報道する」こと。

ところが読売は完全に権力になり代わってしまっている。
それも民意つまり選挙を経ない権力に。
当然社内には「言論の自由」などはありはしない。

そういった読売に対する痛烈な批判をしていますが、同時にかつての自分の職場、社会部をとても懐かしく回顧しています。

ま、愛するが故の批判なんでしょう。

金銭に執着しない、名誉に執着しない、自分が死んだら後に何も残さない、こういった本田さんの生き方はとても恰好良いなと思いますが、はっきり言ってとても真似できない。
尊敬する、というのとはちょっと別だけど、こういうジャーナリストがいたということは絶対に忘れないな、僕は。

この本は絶筆になっていて完結していません。
これを惜しいと言う人も多いようですが、僕はそう思わない。
死ぬ瞬間まで執筆していたなんて素晴らしいじゃないですか?

大傑作です。