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忘却の引揚げ史《泉靖一と二日市保養所》 下川 正晴2018年01月02日 23時15分26秒

忘却の引揚げ史《泉靖一と二日市保養所》
二日市保養所というのは、かなり前に優生保護法との兼ね合いで何かで読んだ記憶があります。
しかしきちんとした書物で読むのは初めてです。

本書の大きなテーマは、満州・朝鮮からの引き揚げと、その過程で起きたソ連兵などによる女性への性暴力です。
佐世保に引き揚げてきた女性の中には、性病に感染したり、妊娠してしまったりしていた人が多数いたのです。

当時の国家(敗戦と同時に瓦解していますが)は、人工妊娠中絶を法的に認めていませんでした。
そこで、超法規的措置として、二日市保養所で中絶手術を国が許可したのです。
やがて優生保護法が成立しますので、二日市保養所は役目を終えることになります。

戦争の悪、それは勝者が敗者を殺し、強姦することです。
この本でも触れられていますが、なにも日本は一方的な被害者だった訳ではありません。
日本が中国戦線で「勝者」であった時期には、現地で、殺し、奪い、暴力を振るっていたのです。
それが敗戦と同時に立場が入れ替わったということです。

歴史に学ばない人間は愚かです。
学んだ上で、修正を加える人間は罪が深いと言えます。
70年以上前の日本は、多数の人間を殺し、そして殺されていた。
そして戦後70年、誰も殺していないというのは立派なことだと思います。
これからも誰も殺さない国家であって欲しいと心底願います。