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「日本の路地を旅する」 (文春文庫) 上原 善広2012年07月10日 20時47分00秒

日本の路地を旅する
文庫本になったので早速買いました。
大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した作品です。
期待が大きすぎたせいか、あんがい、あっさりと読了してしまいました。
上原さんは、たぶん、ぼくよりも全然年齢が若く、そういう若さが文章に表れているなと思いました。

巻末の解説は西村賢太さんで、案の定、性犯罪を犯した上原さんの兄を描いた最終章に話が及びます。
だけど、ぼくには、この章は、本全体の中からは浮き出ているような感じを受けました。
もちろん悪い意味です。

「路地」という言葉は中上健次さんの造語です。
「被差別部落」のことを言っている訳です。
しかし現代の被差別部落はかつてのように細かい路地が入り組んだ小さい家が密集した状況ではなくなっていますから、この言葉は時代から取り残されていると思います。
路地という単語を使わなくてもよかったように思えます。

旅の一つひとつを丁寧に描いて、紀行文としてとても味があったと思います。
これだけの筆力があれば、路地でなくても旅行記が書けるだろうなと感じました。