アクセスカウンター
アクセスカウンター

「原発ジプシー 増補改訂版 被曝下請け労働者の記録」堀江 邦夫 (現代書館)2011年07月24日 17時26分05秒

原発ジプシー
ルポルタージュの最高レベルをいく歴史的傑作だと思います。

今回の福島原発の事故を受けて、増補改訂版が復刊されたようです。
この本が初めて出版されたのが、1979年。
ぼくは千葉大学医学部に入って一般教養で社会学の講座を選択しました。1981年です。
その講座で、読むべき本の一覧リストにこの「原発ジプシー」がありました。
当時ぼくは、この本を読まなかったのか、買ったけど読了しなかったのか、何とも記憶が曖昧です。
学生の松永青年は、(共産党系の)自治会の「原水爆禁止委員会」に入っていた(無理矢理割り振られて入れられていた)ので、変に反発して読まなかった可能性も。

そして今、この本を読んでノンフィクション文学のパワーにただ圧倒される思いです。
現在、福島原発では、職員の命懸けの作業によって曲がりなりにも放射能漏れの拡散は抑えられつつあるようです。
でも、この本を読むとよく分かります。

今、福島原発で被曝しているのは、東電の社員ではなく、下請け・孫請けの日雇い労働者なんですね。

地震の直後に東電が福島原発を放棄しようとして菅さんが東電に乗り込んで「怒鳴った」という話があります。
あれは、真実なんでしょうね。
恐ろしい会社です。

しかし東電は日本の財界・経済界の中心の奥深くに存在しますから、菅さん、こんな組織と喧嘩すれば当然メチャクチャ袋だたきでしょう。
もちろん、マスコミからも。
支持率も10%まで落ちてしまって、これは天皇制の非・支持率や死刑廃止の支持率と同じくらい低くなってしまいました。
こうなるとぼくは益々、菅さんを応援したくなります。

なお、皆さんご存じのように「ジプシー」という言葉はいわゆる「差別用語」です。
この言葉を増補改訂版でも残した理由を堀江さんは、跋文で書いています。
その説明も大変感動的でした。
値段は2000円とちょっと高いのですが、内容はその数倍の作品です。
強くお勧めします。