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夜明けを待つ(佐々 涼子)2024年01月03日 20時00分46秒

夜明けを待つ
エッセイと短編ルポルタージュからなる作品集です。
筆者はノンフィクションライターだけあって、やはり後半の短編ルポルタージュが大変よかったです。

作家になる前は、日本語教師をしていましたから、外国人が日本語を学ぶということに関しても大変くわしくご存じでした。
その中で出てきた言葉が、ダブルリミテッド。
知っていますか、この言葉。
バイリンガルの逆ですね。

海外から日本にやってきた子が、母語も不十分で日本語もうまく話せないことを言うそうです。
ぼくはこの言葉を知りませんでしたが、そういう子がいることは、日々の診療の中で知っていました。
日本は今後ますます、外国人に来ていただく国になる必要がありますから、日本語教育はさらに重要性を増すでしょう。

佐々さんは「死」を描く作家と言われますが、それはすなわち、それまでの生を描く作家です。つまり人間を描くことが非常にうまいと言えます。
「駆け込み寺の玄さん」のお弟子さんを描いたルポは引き込まれるように読みました。
最終的に、そのお弟子さんに詳しい話が聞けず、言ってみれば未完に終わっているのですが、作品として完成しているところがすごいと思いました。

筆者は脳腫瘍(グリオーマ)で闘病中。毎日新聞で知ったときは非常にショックでした。
大変予後の悪い病気ですが、ぼくはこの病気が治ると信じて祈りたいと思います。