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下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書) 藤田孝典2016年04月27日 19時45分10秒

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃
最近話題の言葉です。
年収が400万円(日本の平均です)あっても、老後は下流・貧困に転落してしまうという衝撃的なドキュメントです。
こうした新書・教養本は通常データを並べて「知識」を解説することに主眼が置かれるのですが、この本の場合、筆者が自分の「意見」をしっかりと述べていてまたその意見に説得力もあります。
で、さらに文章もうまいと思います。

下流老人を生み出している要因は二つあります。
一つは、若者の貧困です。
もう一つは「生活保護」に対する憎悪の感情とも言うべき差別・偏見でしょう。
本書では主に後者に関して述べられています。

ユートピアみたいな社会主義国家(そんなものは存在しない)でなければ、国というのは必ず貧富の差が生じます。
一握りの富裕者や富裕企業が労働者を搾取するので、必ず貧しい人間が現れます。
貧困者のいない資本主義国家はあり得ない訳です。貧困者の存在は必然なんです。

そういう人間に対して、最低限の生活を保障するか(憲法第25条)か、のたれ死にを見過ごすかは、国家の存在理由に関わると僕は思う訳です。
生活保護を受ける人間に対して偏見を抱く人が多いことは、本当に残念だと思わざるを得ません。
こういう話をすると必ず「不正受給」や金をもらってパチンコをしている人の話が出てきますが、貧困問題を浅く感情レベルで理解せずに、深く勉強してことの本質を知って欲しいと思います。

2025年になると団塊の世代が後期高齢者になります。
悠々自適で老後を生きられる人はどれだけいるでしょうか?
彼ら彼女らが下流化すれば、日本には社会不安が広がると思います。
富を再分配するということは、社会のシステムを安定化させる最も確実な方法です。
そのために国家が存在すると言ってもいいでしょう。
生活保護というシステムを否定する人は、アナーキストみたいなものです。