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ある若き死刑囚の生涯 (ちくまプリマー新書) 加賀 乙彦2019年05月18日 23時39分38秒

ある若き死刑囚の生涯
これは大変重い本です。
加賀乙彦さんが著者ですから、中公新書の名著「死刑囚の記録」のような内容を期待しましたが、そうではありませんでした。
基本的には、ある若き死刑囚の手記を、そのまま書籍化したような作りでした。
罪を犯した人間はそれを償う必要があります。
この事件ではその手段が死刑だったのですね。
遺族からすればそれは当然の報いかもしれませんが、この若い青年を死刑にしてどういう意味があるのでしょう。
それはおそらく「見せしめ」として、犯罪の抑止力に役立てるという国家の考えでしょう。
死刑を当然と考える若き死刑囚は、キリスト教の洗礼を受け、短歌を次々と詠んでいきます。
彼にとって死は恐怖ではありません。
獄中でキリスト者になっているからです。
その彼が、つむぐ言葉の一つ一つが本当に重い。
加賀さんは89歳にして、書斎を整理していたときに、彼との往復書簡を見つけてこの本を作ったのです。

面白い本とか、いい本とか、簡単に言えませんが、人間の命の重みとは何かと心底考えさせられます。
興味のある人は手に取ってみてください。