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書く力 私たちはこうして文章を磨いた (朝日新書) 池上彰, 竹内政明2017年03月10日 21時58分49秒

書く力 私たちはこうして文章を磨いた
めちゃくちゃ面白い本でした。
池上彰さんの名前は誰でも知っているでしょう。
竹内政明さんは、読売新聞の一面コラム、編集手帳を書いている人です。
竹内さんの文章はとてもうまく、「名文どろぼう」「名セリフどろぼう」(共に文春新書)も大変面白く、文章テクニックの妙技にうなったものです。
本書の対談では、主に池上さんが竹内さんから文章テクニックを聞き出すという構成になっています。
池上さんの文章・語りは「わかりやすい」とすれば、竹内さんは本当に「うまい」。
そのうまさの秘訣を池上さんが掘り下げていくのですが、池上さんは決してただのインタビュアーになっておらず、竹内さんの振り下ろす真剣を、やはり真剣で受け止めるという勝負になっています。

竹内さんの文章は上手すぎて、これはもう一般の人には絶対にマネができません。
ま、一般の人は素人で、竹内さんはプロなのだから、それは当たり前の話かもしれません。
うまい文章にはたくさんの技が仕込まれています。
僕も文章を作る時に、技を入れ込むときがありますが、基本的には技に溺れないように自戒しています。

なお、本書でお二人は大江健三郎さんの文章を評価していませんでしたが、その部分に関しては僕は同意できません。
「死者の奢り」の文章がどうして分かりにくいのでしょうか?
大江さんが文体を変えたのは、「万延元年のフットボール」以降であり、初期の作品群は、クセはあっても分かりにくいという指摘は当たらないと思います。

竹内さんは「自慢はしてはいけない」と戒めていますが、「対談を終えて」の文章を読むと、文章全体が「してやったり」になっていて何だか笑えます。本当に名文家ですね。