アクセスカウンター
アクセスカウンター

力道山未亡人(細田 昌志)2024年06月03日 21時10分31秒

力道山未亡人(細田 昌志)
第30回小学館ノンフィクション大賞受賞作です。
あまりの面白さに一気読みしました。
何がそんなに面白かったのでしょうか? ちょっと本書を振り返ってみましょう。

まずタイトルがいい。『力道山未亡人』ですよ。
サブタイトルなしでも、これがどういう本なのかが一発で分かります。
最近の本はサブタイトルが異常に長かったりして、本の魅力をサブタイトルで一生懸命、説明しようとしたりします。
あまり長いと白けたりするんですが、本書はその真逆を行っています。

とは言え、力道山です。下手したら今の若い人たちは知らないかも。
ぼくだって物心ついたときには、すでに力道山は他界していました。
でも、街頭テレビとか、空手チョップとか、、、伝説として力道山の名前は今も生きているのかな。
それとも、若い人は、この本で力道山の人としてのスケールに驚いたり、アントニオ猪木との類似性に驚いたりするかもしれません。

さて、筆者の細田さんが分厚い取材によって力道山夫人の人生を描いていきます。
前作の『沢村忠に真空を飛ばせた男: 昭和のプロモーター・野口修 評伝』でも、深い取材によって大著を仕上げていました。
この作品もめちゃめちゃ面白く、未読の方にはぜひおススメしたいです。

インタビューする力、資料を掘り起こす力、そして情報を編集する力。それらをベースにして、未亡人の人生を活写する筆の力は見事としか言いようがありません。
新婚半年で夫に先立たれ、22歳で5つの会社の社長に就任し、30億円の負債を背負い、4人の子どもの母親になったのですから、こんな人生はまず無いでしょう。
そのドラマを精緻に、そして迫力満点に描いています。

この本は、プロレス好きにはたまらないかもしれませんが、プロレスに関心のない人にこそ読んでほしいです。
なぜなら、本書は、ある一人の女性の数奇な運命を描いた大河ドラマになっていて、彼女が力道山の妻であってもなくても、ノンフィクションの面白さがすべて詰まった1冊になっているからです。

こういう本を読むと、だからノンフィクションはやめられないよね・・・と思います。

さて、細田さんは『沢村忠に真空を飛ばせた男』で講談社NF賞を受賞しています。
ところが、本書は連載の機会がなかったといいます(なので、小学館NF大賞に応募した)。
ノンフィクション、冬の時代と言いますが、いくら何でもそれはどうなんでしょうか?
実はぼくも『運命の子 トリソミー』で今から10年前に小学館NF大賞を受賞し、次回作の『呼吸器の子』がなかなか出版が決まらなかったんですよね。
出版社さん、もっとがんばってくださいね。

なお、本書はカバーデザインもいいですね。
みなさんにおススメします。文句なしの傑作です。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック