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「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ(横田 増生)2022年04月11日 19時40分44秒

「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ
ユニクロやAmazonへの潜入記を書いた横田さんの最新作です。
今度は、アメリカ。トランプ信者への取材です。
この本を読み始めてすぐに、ぼくは金成隆一さんのトランプ三部作を思い起こしてしまいました。
あの大傑作を超えられるだろうか、ちょっと不安に思ったのです。
金成さんは、なぜトランプが勝ったのか、膨大な取材で実にクリアに説明していました。
一方、横田さんは、トランプが闘いに敗れ、選挙結果をひっくり返そうとし、連邦議会へ暴徒が突入するというアメリカの民主主義の危機を描きました。
ちょっと本の出足でスピード感に欠ける部分があったのですが、いつの間にかぐいぐい引き込まれていました。
それはなぜでしょうか?
やはり、それは潜入という取材方が面白かったからです。

ジャーナリストとして取材を行った部分もあるし、トランプ陣営の選挙ボランティアとして個別訪問をする場面もあり、やはりそこが面白い。
潜入取材のマスターですね。
明らかに通訳も使っていないし、アメリカという広い大陸を縦横無尽に駆け巡り、長期にわたって取材とボランティアを継続するのはすごいエネルギーです。
読み終えてみれば、本作はこれまで以上の傑作なのではないかと思いました。

後書きを読むと、小学館や新潮社などの支援もあったように書かれていますが、これは金銭的な援助もあったのでしょうか。
そこはちょっと知りたい。
なぜって、今のノンフィクションは出版社がライターを経済的に支えなくなっているからです。

サブタイトルは、「私の目の前で民主主義が死んだ」となっていますが、これは危機一髪で回避されたのではないでしょうか?
いま世界ではロシアの独裁政治が大問題になっていますが、アメリカだって危なかったわけです。
政治というのは、イコール権力ですから、その使い方を誤ると本当に怖い。
地球上のわずか数人の政治家が、世界を破壊しかねないのですから、民主主義というシステムがいかに重要かということが分かります。

本書を読んで、今ひとつスカッとしない理由は、2024年にトランプが復権する可能性があるからです。
アメリカって本当に不思議な国で、自由と民主主義の総本山でありながら、トランプの反民主主義のフェイクにはまり、陰謀論を信じ込む人がなぜこれだけ多いのだろうかと唖然とします。

いずれにしても本書は大変な力作でした。2022年の何かのノンフィクション賞の候補にあがるんじゃないかな。
おススメです。