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科学の普遍的価値とは?2006年12月24日 19時49分46秒

小児がんを研究テーマにしている人なら、WT1というがん抑制遺伝子の名前を知らない人はいないでしょう。
成人のがんを専門にしている人でも、最近は、WT1ワクチン療法の治験によって、WT1という名前を知らない人はいないでしょう。
では、この遺伝子がどうやってクローニングされたか知っている人は、日本に一体どれだけいるでしょうか?
おそらくほとんど誰も知らないでしょう。遺伝子クローニングの方法に関する日本語の総説を僕は目にしたことがありません。この遺伝子がクローニングされたのは1990年。僕が大学院に行っていた頃です。研究をしていたウイルス学教室の抄読会でこの論文をみんなに僕が紹介したことを今でもよく憶えています。1990年当時って、分子生物学が理解できる小児外科医は日本で数えることができるほどでしたから、この論文だってほとんど理解されなかったでしょう。
ただ、あの頃よりも、今の方がこの論文に書かれている内容を僕は深く理解することができます。細胞融合による雑種細胞や染色体ジャンピングを理解できないと、この遺伝子クローニングの道筋が分かりません。これに関連する論文は『サイエンス』などに目白押しです。
でも、ポストゲノムの時代となった今、こうした論文は歴史の渦の中に消えて行ってしまい、もう引用されることもないのでしょうか?
もちろん、こうした先人たちの努力があったから今のサイエンスの現況があるのですが、こういった歴史的論文が顧みられなくなるのは、何んとも残念です。そこにはやはり普遍的な価値がまだまだあると思うのですが。

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